フリーランスの年金はどうなる?国民年金の基礎・将来の資金の増やし方
フリーランスになると、社会保険の制度が変わります。特に年金制度については、会社員時代は厚生年金に加入し、会社がいろいろな手続きを行っていたでしょう。フリーランスになれば、自分で国民年金への切り替えを行い、老後の備えについても検討しなければなりません。
この記事では国民年金について、フリーランスになった際に行う手続きや将来への備えについてご紹介します。
この記事の監修者
大塚労務事務所代表
大塚 圭一
大学在学中に社会保険労務士試験合格。
将来の開業を見据えて、大学卒業後、都内の環境系ベンチャー企業入社し、営業職として勤務。
その後大手社労士事務所入所、顧客開拓営業(3年で飛び込み営業約10,000社)に加えて、顧問先を約50社を担当。
25歳の時に東…
フリーランスは国民年金に切り替えることになる
勤めていた会社を辞めてフリーランスになる場合、年金制度を厚生年金から国民年金に切り替えることになるため、手続きが必要です。
会社で厚生年金に加入している場合には、厚生年金が国民年金の代わりとなり、勤務先の企業が加入者に代わって手続きを行っています。会社を退職する際に、厚生年金の脱退手続きも所属していた会社が行います。退職者は会社からの書類を用いて、自分で国民年金の加入手続きを行うことになります。
保険料の支払い時期は前の会社をいつ辞めたかなどによって異なります。(詳しくは後述します)
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国民年金とは
国民年金について改めてご説明します。国民年金とは、国民年金法に基づいて運営されている日本の公的な年金制度です。日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の全ての人は、国民年金に加入します。65歳になったときや病気・怪我で働けなくなったとき、主たる生計者が亡くなったときには、各種年金を受け取ることができます。
国民年金の月額保険料
国民年金の月額保険料は、名目賃金の変動に応じて毎年度改定されます。令和6年度の月額保険料は令和5年度から+460 円の16,980 円です。令和7年度の月額保険料は、令和6年度から+530 円の17,510 円となることが決まっています。
将来受け取れる年金の種類
将来受け取れる年金は下記の3種類です。
老齢年金
保険料の納付済みの期間、免除期間などを合算した受給資格期間が10年以上ある場合に、65歳から受け取れるお金です。老齢年金には「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」があり、国民年金の加入者は「老齢基礎年金」を受給できます。年金額は、国民年金や厚生年金の加入期間、減免制度の利用などに応じて計算されることになります。
障害年金
病気や怪我による障害が残り、働けなくなるなどした場合に受け取れるお金です。障害年金には「障害基礎年金」と「障害厚生年金」があり、国民年金の加入者は「障害基礎年金」を受給できます。障害厚生年金は現役世代の人でも受給が可能です。
遺族年金
国民年金または厚生年金の被保険者(被保険者であった人)が亡くなった場合、その人によって生計を維持されていた遺族が受け取れる年金です。「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」があり、亡くなった人が国民年金に加入していた場合には、遺族が「遺族基礎年金」を受給できます。対象となる遺族は、亡くなった人によって生計を維持していた子どもの配偶者または子どもです。
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国民年金と厚生年金との違い
国民年金と厚生年金との違いは、厚生年金が企業向けの年金であること、将来もらえる老齢基礎年金の額が大きく異なることです。まずは厚生年金についてご紹介します。
厚生年金とは
厚生年金は、企業向けの年金です。正社員、契約社員、パートタイマー、アルバイトなどの名称を問わず、適用事業所に雇用されるすべての人が被保険者となります。
被保険者となるためには要件があります。たとえば長期雇用の場合には下記が満たすべき要件です。
- 70歳未満の人
- 臨時、季節的業務に携わる人ではない(※)
※季節的業務に携わる人は4か月以上、臨時的業務に携わる人は6か月以上使用される場合は、被保険者となります。
- 就業規則や労働契約などに定められた一般社員の1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が4分の3以上(※)
※月の所定労働時間が4分の3未満でも、厚生年金保険の被保険者数が101人以上(令和6年10月以降は51人以上)の企業等で働く短時間労働者は、以下の要件を満たせば厚生年金に加入できます。 - 週の所定労働時間が20時間以上
- 賃金の月額が8.8万円以上
- 2カ月を超える雇用見込があること
- 学生ではない
いずれも労働時間の計算など詳細が細かく定められているため、自分の現状と照らし合わせて加入が可能かどうか、どれくらいの保険料になるのか検討するとよいでしょう。
厚生年金加入者の方が将来もらえる年金は高い
厚生年金加入者が将来受給できる年金の金額は、国民年金加入者よりも高くなります。厚生年金は、国民年金保険料と厚生年金保険料を合わせた額を、会社と被保険者である従業員が半分ずつ保険料を納めます。そのため厚生年金加入者は将来、国民年金の老齢基礎年金に加えて厚生年金の老齢厚生年金が給付されます。障害年金や遺族年金も同様に、もらえる年金額は高くなります。
フリーランスは厚生年金に加入できない
自営業やフリーランスは、会社に雇用されていないため、厚生年金に加入できません。将来もらえる年金額を増やしたい場合には、自営業・フリーランス向けが使える制度への加入を検討することになります。
※フリーランスを辞めて雇用されることになれば、厚生年金への加入は可能です
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国民年金の加入手続き
20歳になったときの国民年金の加入は自動的に行われますが、厚生年金からの国民年金への切り替えは自分で行う必要があります。それぞれの流れと手続きをご紹介します。
20歳到達時の年金加入(加入のお知らせ)
対象者が20歳になってからおおむね2週間以内に、日本年金機構から国民年金(第1号被保険者)に加入したことのお知らせが届きます。その内容は、「基礎年金番号通知書」や国民年金に加入したことのお知らせ、パンフレットなどが届きます。既に厚生年金に加入している人には、お知らせは届きません。
加入した時点で国民年金保険料の支払いが経済的に難しく、納付を猶予したい場合には、「学生納付特例制度」を利用できます。対象となる人は、前年度の所得が一定以下の学生です。
厚生年金から国民年金への切り替え
厚生年金から国民年金への切り替えは、会社を退職した日の翌日から14日以内に、市区役所または町村役場で行うことになります。また電子申請も可能です。その際には、所属していた会社から受け取った書類が必要となります。
退職日により異なる保険料の支払い方
国民年金保険料は月単位で計算されるため、辞める日によって保険料の支払い方が異なります。
- 例1:会社を月末に辞めた場合
翌月1日が厚生年金の資格喪失日かつ国民年金の第1号被保険者の資格取得日となり、国民年金保険料の支払いは翌月から始まります。 - 例2:会社を月の途中で辞め、次の会社に就職しない場合
辞めた日の翌日が厚生年金の資格喪失日かつ国民年金の第1号被保険者の資格取得日となります。会社で厚生年金保険料を支払うのは辞める月の前月分までとなり、辞めた月から国民年金保険料を支払います。
ほかにもいくつかのケースがあります。資格喪失日と保険料支払い開始の月は事前に把握しておく方が安心です。
扶養している配偶者がいる場合
厚生年金加入時に配偶者を扶養している場合、配偶者は「国民年金第3号被保険者」です。自身が退職して厚生年金から国民年金へ切り替える際には、配偶者も「国民年金第3号被保険者」の資格を失うため、国民年金第1号被保険者となる手続きが必要となります。
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将来もらえる年金と老後の生活費
将来もらえる年金が、老後の生活費に足りるのかどうか、政府の調査から年金額、生活費の例を紹介します。国民年金にのみ加入している場合には、老後の生活費が足りない可能性があります。
年金額は毎年改定が行われる
年金額は、毎年度改定を行う仕組みとなっており、物価変動率や名目手取り賃金変動率、つまり物価と賃金に応じて変動するものです。物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回る場合には、名目手取り賃金変動率を用いて改定されます。
たとえば令和6年度の場合は、物価変動率が3.2%、名目手取り賃金変動率が3.1%と、物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回りました。そのため令和6年度の年金額は改定となり、名目手取り賃金変動率3.1%に調整の0.4%を減算して、令和5年度から 2.7%の引上げとなりました。
もらえる老齢基礎年金額の例
令和5年度の新規裁定者(67歳以下の人)の年金額の例をご紹介します。ここでは夫婦2人で生活することを想定しています。
国民年金の老齢基礎年金(満額)は1人分66,250円です。夫婦2人とも国民年金に加入していたとすると、2人分で132,500円となります。対して厚生年金の場合、夫婦2人の老齢基礎年金を含んだ標準的な年金額は224,482円です。
国民年金と厚生年金では、10万円近い差が生まれているのがわかります。
老後の生活費例
統計局が公表している家計調査年報によると、2022年(令和4年)の65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の消費支出は、236,696円です。国民年金でも厚生年金でも、年金だけでは老後の生活費をまかなえない可能性があることがわかります。
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将来の年金受給額を増やすための方法
国民年金だけの加入では将来もらえる年金額は厚生年金よりも少なくなり、また生活費として足りなくなる可能性があります。将来の年金受給額を増やすためには、各種制度を活用する方法があります。
付加年金
定額の国民年金保険料に付加保険料をプラスして納付すると、老齢基礎年金に付加年金が上乗せされます。付加保険料は月額400円で、将来もらえる年金額は200円×付加保険料を納付した月数(定額)です。付加年金は申請した月から保険料の納付ができますが、以前にさかのぼって納付することはできません。付加保険料の納付を始めたあと、辞めることも可能です。
付加年金は、後述の国民年金基金と同時に利用できませんが、個人型確定拠出年金であれば同時に加入できます。
国民年金基金
自営業やフリーランス向けに、将来受け取る年金額を増やすための年金制度です。厚生年金と近い額まで、将来受け取れる年金額を上乗せできます。
国民年金基金は7種類あります。そのうち2種類が、被保険者が生きている間に受け取れる「終身年金」です。掛け金に加えて、年金を運用して収益を上乗せする「確定拠出年金」が5種類あります。国民年金基金の1口目は終身年金2種類から、2口目以降は確定拠出年金も含む7種類から組み合わせて選べます。
国民年金基金は、確定申告時は社会保険料控除を申告できるため、節税にもつながるのです。
ただし付加年金と同時に利用することはできません。個人型確定拠出年金との併用は可能ですが、拠出額の上限が決まっています。また、会社に雇用されることになった場合には加入資格を失うのでご注意ください。
小規模企業共済
小規模企業共済は、小規模な企業の経営者や役員、フリーランスなどのための退職金制度です。月々掛け金を積み立てるという方法で、積み立てた共済金は退職時や廃業時に受け取ることができます。定期預金などのような満期、満額という概念はありません。
小規模企業共済も、確定申告時には「小規模企業共済等掛金控除」として控除ができます。また共済金を受け取る際も退職所得や雑所得となり、確定申告時に控除が可能です。
また年金とは直接関係はありませんが、小規模企業共済独自で運用されている低金利の貸付制度も利用できます。
国や自治体は、中小企業や小規模事業者を支援する補助金・助成金・給付金の制度を用意しています。これらは返済の義務がないのが大きなメリットで、各制度の条件を満たせばフリーランスや個人事業主でも利用可能です。
この記事では、資金援助を希望するフリーランス・個人事業主のための補助金・助成金・給付金を紹介します。(一覧に給付金は含まれていないため、必要に応じて各自治体や関連機関のウェブサイトをご確認ください。)
補助金や助成金を活用する際のメリット・デメリットや申請時のポイントに加えて、税負担を軽減できる税制優遇措置や支払い猶予についても解説しているので、ぜひ確認してみてください。
iDeco(個人型確定拠出年金)
iDecoは個人型確定拠出年金で、自分が拠出した掛金を運用して資産を増やせる制度です。働き方に関わらず、基本的に20歳以上65歳未満の全ての人が加入できます。掛金は65歳まで拠出でき、定期保険や保険商品、投資信託を自分で選び、運用を行っていくことになります。資産の運用は自分の責任で行い、受け取る額は運用成績により変動します。保険商品によっては元本割れのものもあるため、商品の特徴をよく理解することが必要です。また資産の引き出しは、原則60歳になるまでできません。
iDecoも、確定申告時には「小規模企業共済等掛金控除」として控除ができます。
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国民年金保険料を支払えない場合の対処法
事業の状況によっては、国民年金保険料の支払いが難しくなることもあるでしょう。その場合には、国民年金保険料の免除制度や納付猶予制度を活用できます。
なお学生については「学生納付特例制度」がありますが、ここでは割愛します。
国民年金保険料の免除制度
失業などで保険料の支払いができなくなった場合に、申請して承認されれば納付が免除されます。
免除される保険料の金額は、全額、4分の3、半額、4分の1の4種類です。保険料を免除された期間は年金の受給資格期間に算入され、また障害基礎年金や遺族基礎年金も受け取れます。免除の割合に応じて将来の年金額が保障される仕組みとなっており、たとえば全額免除の期間は、保険料を支払ったときの2分の1が計算されます。
国民年金保険料の猶予制度
20歳から50歳未満の人で、失業などで保険料の支払いができなくなった場合、申請して承認されれば、保険料の支払いが猶予されます。保険料を免除された期間は年金の受給資格期間に算入されること、また障害基礎年金や遺族基礎年金も受け取れることは免除制度と同じです。ただし猶予制度が適用されている間、将来の老齢基礎年金の受給額は増えません。
免除制度や猶予制度を申請しない場合は保険料未納という扱いになり、将来各種年金を受け取れなくなる可能性があります。そのため日本年金機構では、国民年金保険料を支払えない場合に、免除制度や猶予制度を活用することを推奨しています。
国民年金保険料の追納制度
国民年金保険料の免除制度・猶予制度を活用した場合に、追納(後から納付)することによって、将来の老齢基礎年金を満額に近づけることができます。追納できるのは10年以内で、免除・猶予期間の3年度目以降は、保険料に加えて一定の金額が加算されます。
追納した金額は、確定申告時に「社会保険料控除」として控除することも可能です。
産前産後期間は国民年金保険料の支払いは不要
出産に関わる産前産後期間は、国民年金保険料の支払いは不要となります。期間は出産予定日または出産日の月の前月から4か月間です。早産や多胎出産(2人以上の出産)などの特別な理由がある場合には、免除期間は長くなります。
免除された期間も保険料が支払われたものと見なされ、将来の老齢基礎年金も保険料を支払ったときと同等に計算されます。
なお政府では育児期間についても検討しており、1歳になるまでの育児期間中、両親ともに国民年金の保険料を免除する方針を公表済みです。この政策は2026年度(令和8年度)中に実施される予定となっています。
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まとめ
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