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フリーランスエンジニア・個人事業主に屋号は必要?決め方を解説

更新日 2024/10/29

ITエンジニアとして一定年数経験を積んだら、フリーランスとして案件を受注してさらに収入を増やしたいと考える方は少なくありません。しかし、独立に際して屋号を決めてからでないと案件を受注できないのかなど、気になることが多いのではないでしょうか。

本記事ではフリーランスや個人事業主に屋号は必要なのか、屋号の決め方やメリットを解説し、フリーランスエンジニアの屋号のネーミング例も紹介します。

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屋号とは

屋号とはフリーランスや個人事業主がビジネスにおいて使用する事業名です。お店を営んでいる場合は店名などが屋号に該当します。ただし、店名と屋号は同じでなくても問題ありません。

屋号は主に次の場面で用いられます。

  • 名刺
  • 請求書・納品書
  • 領収書
  • 銀行口座
  • 店名
  • 広告・ホームページ

このように屋号は、自分の事業を対外的にアピールする看板の役割を果たします。

商号との違い

商号とは法人がつける社名で、会社法第6条第1項および商法第11条に規定されています。個人事業の名称としてつけられるのが屋号で、法人を識別するためにつけられるのが商号です。

法人は権利・義務を有するため、商号には他の会社と誤認されるおそれのある名称はつけられないという制限があります(※1)。

個人事業主は屋号をつけることを義務付けられていませんが、商号は会社設立の際に商号登記が必要だと会社法で定められています(※2)。また、会社設立時に作成する定款にも商号の記載が必要です(※3)。

※1:民法第34条・会社法第8条第1項
※2:会社法第911条第3項第2号
※3:会社法第27条第2号

雅号との違い

雅号とは画家や書家、芸能関係者などが本名とは別につける芸名やペンネームです。屋号はフリーランスが行う事業に対してつけられますが、雅号は個人につけられる点で異なります。

ただし、税務署への登録・変更手続きにおいては、開業届の「屋号」欄や確定申告書の「屋号・雅号」欄に記入することとなるため、両者の手続きに違いはありません。

屋号は必須ではない

フリーランスの開業時に屋号は必須ではありません。「屋号」欄を空白で提出して、開業後に屋号を決めても問題はありません。

屋号を決めてから税務署への手続きをすぐに行う必要もありません。次の確定申告時に確定申告書の「屋号・雅号」欄に屋号を記載すれば受理されます。屋号を変更する際も同様です。

また、複数の事業を行っている場合は、事業ごとに屋号をつけられます。

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屋号を決めるメリット

フリーランスや個人事業主の方が屋号を決めるとどのようなメリットがあるのか、主なメリットを3つ紹介します。

  • 名刺やHPで事業をアピールしやすい
  • 屋号付き口座が作れる
  • 法人化する場合に便利

それぞれ順番に見ていきましょう。

名刺やHPで事業をアピールしやすい

屋号を名刺やホームページに記載すると、個人名だけを記載するよりも事業内容のアピールができます。屋号は基本的に事業内容がわかるようにつけられるため、名刺やホームページなどで屋号を見た人に対して、どんな事業を行っているかを印象付けることが可能です。

また、屋号を持っていると、個人名だけで事業を行うよりもビジネスとして取り組んでいる姿勢や熱意が伝わるため、顧客や取引先からの社会的な信用度も高まりやすくなるでしょう。

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屋号付き口座が作れる

屋号を決めると屋号付きの銀行口座が作れるようになり、収支管理の手間が省略できます。事業用とプライベート用で口座を分けて管理すれば、キャッシュフローの把握や確定申告にかかる手間の削減が可能です。

個人名だけでも事業用口座は作成できますが、プライベート用口座と名義が同じでは管理が煩雑になります。クライアントから見ても、個人名のみの口座よりも屋号付き口座の方が取引先としての安心感を持ってもらいやすくなります。

法人化する場合に便利

フリーランスとして行っている事業を法人化する際には、以前から使っていた屋号をそのまま商号として使用可能です

屋号をつけずにフリーランスとして事業を行い、法人化する段階で商号を決めると取引先が困惑してしまう可能性があります。また、屋号を引き継いで法人化すれば、屋号を知っている見込み顧客へのアプローチも容易になります。

事業を成長させて将来的には法人を立ち上げたいと考えている方は、フリーランスの時から屋号を決めておくとよいでしょう。

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屋号のデメリット

次に屋号を決めることで生じるデメリットを2つ紹介します。屋号を決めることのメリットの方が大きいですが、本章で紹介するリスクがあることも認識して屋号をつけましょう。

  • 屋号によっては仕事のジャンルが狭まる
  • 屋号を変更する手続きに時間がかかる

それぞれ順番に見ていきましょう。

屋号によっては仕事のジャンルが狭まる

屋号はフリーランスとして行う事業内容を端的に表現しているため、屋号から連想されるイメージ以外の仕事が依頼されなくなる可能性があります。

たとえばフリーランスエンジニアが「〇〇システム」と屋号を決めた場合、システム開発などの案件は依頼されるでしょう。しかし、実態はシステム開発以外にWeb制作やWebデザインの仕事も行っていて、これらの案件も探している場合、案件を獲得するのは難しくなります。

屋号をつける際は受注したい仕事内容とマッチしたものに決める必要があります。

屋号を変更する手続きに時間がかかる

フリーランスの屋号は後から変更可能ですが、手続きの手間が生じます。

税務署への手続きは確定申告時に新しい屋号を確定申告書に記載するだけで済みますが、ホームページや請求書、名刺など屋号を記載する全てに変更が必要です。屋号付き口座を使用している場合は金融機関への手続きも行わなければなりません。

フリーランスとして活動する上で屋号はあった方がよいですが、焦って決めてしまうと後から変更の手間がかかってしまうため、よく考えてから決めましょう

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屋号を決めるときのコツ

屋号をつける際にどのように決めればよいのかコツを具体的に解説します。本章では次の4つのコツを取り上げます。

  • ドメインとして使用可能なものにする
  • 読みやすくて入力しやすいものにする
  • 事業内容がわかりやすいものにする
  • Web検索されやすいキーワードを含める

屋号をつける際の参考にしてみてください。

ドメインとして使用可能なものにする

事業用のホームページやSNSアカウントを開設しようと考えている場合、ドメインやアカウントIDとして使用可能な屋号にすると、全体に統一感を持たせられます

ドメインとはホームページのURL「http://www.〇〇.jp」の〇〇.jpにあたる部分です。屋号と合わせた独自のドメインを取得することで、認知度向上が期待できます。

ただし、すでに誰かが使用しているドメインは取得できません。そのため、屋号を決める前に取得できないドメインでないか先に確認しておくのも有効な方法です。SNSアカウントを開設する場合も同様に、事前に確認しておくとよいでしょう。

ドメインは一度決めたら変更できません。変更する場合は新たにドメインを取得する必要があります。新たにドメインを取得するとホームページに対する検索エンジンからの評価もリセットされてしまいます。よく考えてから屋号やドメインを決めるようにしましょう。

読みやすくて入力しやすいものにする

屋号は事業を外部に知ってもらう看板のような役割です。誰が見ても読みやすく覚えやすい屋号にしましょう。

英語など外国語を交えた、読みにくい屋号に決めてしまう方も少なくありません。そこに深い意味や想いが込められている場合もありますが、取引先や見込み顧客が屋号の意味を考えることはまれです。

書類やメールのやり取りにおいて入力しやすい短めの屋号の方が手間もかからず、多くの人の記憶に残りやすくなります。シンプルで読み間違えの少ない屋号をつけましょう。

事業内容がわかりやすいものにする

屋号から事業をすぐに理解してもらえるものをつけましょう。仕事の依頼や社会的信用につながります。

せっかく屋号を決めてもあなたが何をしている人かが伝わらなければ、事業のアピールにはなりません。仕事につながらなければ屋号から得られるメリットが小さくなってしまいます。

こだわりを持って屋号を決めるのはよいことですが、奇をてらわず多くの人に受け入れられやすい屋号を心がけましょう。

Web検索されやすいキーワードを含める

屋号は仕事を依頼したいと考えている顧客がWeb検索をした際、検索結果に表示されるようにキーワードを含めましょう。検索結果にあなたのHPやSNSが表示されれば顧客が流入し、依頼につながる可能性があります。

フリーランスエンジニアの場合、「エンジニア」や「システム」といったキーワードを含めておくと、システムエンジニアに仕事を依頼したい顧客の検索結果に表示されやすくなります。専門分野がある場合は「フロントエンド」や「Python」といったキーワードを含めることで、検索する顧客数は絞られますが深いマッチングが可能です。

また、キーワードを含めるだけでは同業他社よりも検索結果上位に表示されません。余力があれば優良な情報発信を行うなどSEOにも取り組むと、さらなる集客が見込めます。Webからの集客を意識して屋号を決めましょう。

屋号のネーミング例一覧

前章で紹介した屋号の決め方のコツを基に、フリーランスエンジニアに適した屋号のネーミング例を紹介します。

  • 〇〇システム
  • 〇〇プログラミング
  • 〇〇開発
  • エンジニア〇〇
  • 〇〇ラボ
  • 〇〇ソリューション
  • 〇〇プロジェクト
  • 〇〇技研
  • IT〇〇
  • 〇〇テック

「〇〇」には名字や名前、ハンドルネームなどを入れます。「システム」や「プログラミング」などITエンジニアであることが伝わるような文言を屋号に含めます。

専門分野を持って活動をする場合のネーミング例は次の通りです。

  • 〇〇アプリ開発
  • 〇〇データサイエンス
  • AI研究家〇〇
  • フロントエンドエンジニア〇〇
  • クラウドサービス〇〇

専門分野を持って活動する場合は、どの領域に強みがあるのか屋号を見ただけで伝わるようにネーミングすると案件依頼が入りやすくなります。

屋号を決める際の注意点

屋号にしてはいけない名称や屋号に使わない方がよい文字など、屋号を決める際の注意点を紹介します。これから屋号を決めようとしている方は一度本章の内容を参考にしてみてください。

法人と誤解されるものはNG

屋号はフリーランスの事業名としてつけるものであるため、会社であると誤解を招くおそれのある文字は使用できません(※)。そのため、「株式会社」や「法人」などの文言は屋号に用いないようにしましょう。

また、銀行や証券会社、保険会社などの特定の業種と誤解される文言を含む屋号も銀行法などで禁止されています。前章で紹介した屋号や「〇〇事務所」「〇〇企画」のように、個人が事業名として使用しても問題のない文言を屋号にする必要があります。

※:会社法第7条

既存の法人名や商標登録されている名称は避ける

屋号を決める際は、既存の法人名や商標登録されている名称は避けるようにしましょう。既存の法人名と類似する文言を用いると会社法第8条第1項の規定に引っかかる可能性があります。似た名称を用いることで、顧客に思い違いをさせてしまったり、トラブルに巻き込まれたりする場合があるため、すでに使われている名称は避ける方が得策です。

また、検索結果においても既存の法人や商品が上位に表示されることで、ホームページやSNSアカウントへの流入が減少してしまいます。

既存の法人名や商標登録された商品名については国税庁の法人番号公表サイトや特許庁の特許情報プラットフォームで検索できるため、屋号を決める前に確認しておくとよいでしょう。

商号に使用できない文字は使わない

将来的に法人化を視野に入れている場合、屋号をそのまま商号に引き継ぐのであれば、商号に使用できない文字は屋号にも使わないようにしましょう

屋号には法的な制約はありませんが、商号には商業登記規則などによって使用できる文字や符号が定められています。日本語以外に商号の登記に使用可能な文字や符号は次の通りです。

  1. ローマ字
  2. アラビア数字
  3. 符号
    1. &(アンパサンド)
    2. ’(アポストロフィー)
    3. ,(コンマ)
    4. ‐(ハイフン)
    5. .(ピリオド)
    6. ・(中点)

「!」や「?」「@」といった符号は商号に使用できません。また、符号は商号の先頭および末尾には使用できず、字句を区切る目的としてのみ用いることができます。ただし、ピリオドのみ省略を表すものとして末尾に用いることが可能です。

屋号に関するよくある質問

最後に屋号に関するフリーランス・個人事業主のよくある質問と回答を紹介します。同じような疑問を持っている方は参考にしてみてください。

案件を受注するときに屋号はなくてもいい?

フリーランスとして案件を受注するために屋号は必須ではありません。税務署に提出する開業届には「屋号」欄が設けられていますが、開業時点で屋号が決まっていない場合は空欄で提出しても受理されます。

屋号がある方が顧客からの信頼を得やすくなりますが、屋号がなくても案件獲得は可能です。

開業届提出後に屋号を決めた場合でも、すぐに税務署に届け出る必要はなく次の確定申告のタイミングで「屋号・雅号」欄に屋号を記入して提出すれば、屋号の変更手続きは完了です。

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既に使われている屋号でも問題ない?

屋号には法的な制限がないため、他のフリーランスや個人事業主が使用している屋号をつけても違法ではありませんが、不適切です。

あなたに依頼したい顧客がWeb検索から流入しづらくなったり、取引先を困惑させたりする可能性があります。屋号が同じであることからトラブルに発展する場合もあります。

基本的には誰かが使用している屋号は用いないようにするのが得策です。また、将来的に法人化を検討している場合、前章で紹介したように不正な目的を持って類似または同一の商号を用いると会社法に抵触する可能性があります。

事業用口座はどうやって作る?

事業用口座は金融機関に本人確認書類や印鑑、開業届のコピーなどを提出することで開設できます。具体的な提出書類や事業実態の確認方法は金融機関によって異なるため、各金融機関のホームページなどで確認が必要です。

事業用口座につけられる名義は「個人名のみ」または「屋号+個人名」「個人名+屋号」のいずれかが多く、「屋号のみ」の事業用口座は基本的に開設できません。

屋号をつけたら印鑑(角印)は必要?

屋号を決めても、会社印のような屋号の印鑑(角印)は必須ではありません。事業用口座を開設する際も多くの場合、個人の印鑑で口座開設が可能です。

ただし、見積書や納品書、請求書に屋号の捺印があると、取引先からの信頼感や事業への熱意が伝わるため、可能であれば屋号の印鑑を作成しておくとよいでしょう。

屋号を変更してしまうと印鑑も再度作成する必要があるため、焦って作成してしまうのはおすすめしません。

まとめ

今回はフリーランス・個人事業主として活動を始める際に屋号が必要か、屋号のメリットや決め方、注意点について解説しました。

屋号はフリーランスエンジニアがクライアントから信頼を得ることや集客をするうえで、大切な看板の役割を果たします。そのため、しっかりと考えてから決める必要があります。

ただし、案件を獲得するために屋号は必須ではありません。屋号は後からつけることも可能です。

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