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IoT/AI/Fintech等による技術革新は従来にないスピードで進行しており、これら技術革新は「第4次産業革命」とも表現されています。日本においても当該時技術革新を産業・生活に取り入れることで、「Society5.0」※を世界に先駆けて実現していくことを目指しています。
(※Society5.0:仮想空間と現実空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(内閣府HPより))

それでは、新たな技術革新により、従来のIT技術は淘汰されていくのでしょうか?
いいえ、日本は技術ありきの経営よりも、お客様目線のサービスありきの経営が根強い傾向がありますし、ドラスティックな技術要素は企業としても設備投資が追いつかないため、新たな技術要素へはゆるやかな変遷となり、当面は従来型IT技術との融合型になると予想されます。
また、従来型のIT技術は既に重要な経営基盤ともなっていることから、従来型IT人材はまだまだ必要とされることでしょう。ここでは、従来型ITのキャリアパスを整理してみようと思います。

目次

1.IT人材のキャリアパスとは?

IT人材と言えば、一般的にはプログラマやシステムエンジニア、プロジェクトマネージャのように、システム開発プロジェクトの中の役割がイメージされやすいと思います。また、キャリアパスも「プログラマ→システムエンジニア→プロジェクトリーダー→プロジェクトマネージャ(コンサルタント)」が一般的でしょう。
一方、システム開発自体は外部委託し、予算措置や関係者調整・委託先管理・経営報告を担うような、事業会社のIT部門も、広い意味でIT人材と言えます。それでは、システム開発への従事有無で、IT人材のキャリアは線引きされるのでしょうか?ここでは、IT人材が担う職種の種類と、各々のキャリアパスを示したいと思います。

1.キャリアパスの定義

ここでは、経済産業省が定める指標「ITスキル標準」(https://www.ipa.go.jp/jinzai/itss/itss1.html)を参考に、キャリアパスを定義していこうと思います。

ITスキル標準
(後述もしますが、現在の多様化された人材要求のもとでは、画一的な定義を行うことはできないため、あくまで定義の一例となることはご容赦ください)まず、ITスキル標準において、ITサービスは以下のとおり11分類されています。

・マーケティング
・セールス
・コンサルタント
・ITアーキテクト
・プロジェクトマネジメント
・ITスペシャリスト
・アプリケーションスペシャリスト
・ソフトウェアデベロップメント
・カスタマーサービス
・ITサービスマネジメント
・エデュケーション

本稿では、上記分類の中で、コンサルタント・プロジェクトマネジメント・アプリケーションスペシャリスト・ソフトウェアデベロップメントをピックアップしたいと思います。(経済産業省「IT人材職種別モデルキャリア開発計画策定事業」の、モデルキャリア開発図も参考としました)

●ソフトウェアデベロップメントのキャリアパス
プログラム開発メンバー → プログラム開発リーダー → 設計開発リーダー

●アプリケーションスペシャリストのキャリアパス
設計開発メンバー → プロジェクトサブリーダー → プロジェクトリーダー

●プロジェクトマネジメントのキャリアパス
ソフトウェアデベロップメント → アプリケーションスペシャリスト → プロジェクトマネージャ

●コンサルタントのキャリアパス
プロジェクトマネージャ → PMOメンバー → PMOコンサルタント → ビジネスコンサルタント

2.キャリアパスを定義する理由

個人(事業会社IT部門メンバーや、SI企業等の従業員、フリーランス)にとっては、キャリアパスを定義することで、自身の現在の立ち位置と、将来目指すキャリアとのギャップを認識し、スキル開発をどのように行うかの判断材料となります。
事業会社のIT部門は、会社の規模や文化に応じ、SI企業等への外部委託の範囲も異なりますが、委託先へのプロジェクトマネジメントは必要となる等、ITスキル標準の11分類に基づく各人によるキャリアパスの定義は、IT人材に広く有効と考えられます。
また、企業としては、自社に必要な人材ポートフォリオを示すための「ものさし」となります。

3.キャリアパスの中意識すべきこと

キャリアのターゲットを絞り込み、自身の立ち位置が特定できましたら、次ステップへ進むために具体的・自発的に動き出しましょう。
ここでは、キャリアパスに対する心がまえや、日々の業務への取り組み姿勢に触れてみたいと思います。

「自身の描くキャリアパスで、次のステップの人材ならば、どのようにこのタスクを進めるか」を常に意識し、創意工夫を加えながら日々の業務に従事していきましょう。
また、日々の業務と並行し、専門書や社内外の勉強会等を通して、専門家として知識の「引き出し」を増やすことにも心がけましょう。

なお、IT業界の経験が浅い若手の方は、専門性に囚われ過ぎると多様な可能性を見落としてしまいかねません。このため、ひとつの専門分野を探求しながらも、幅広い知識も習得し、いわゆるT字型モデルの人材になることを心がけましょう。
T字型モデルの人材とは、特定の分野に深い専門性を持ちながら(アルファベットTの縦棒)、それ以外の幅広な分野についても知見を併せ持つ(アルファベットTの横棒)ことで、自己の専門分野外とも上手く協業し、大きな成果を生むことが期待できる人材です。

2.所属形態におけるキャリアパスの違い

通常、IT人材は所属によりキャリアが異なります。例えば、事業会社のIT部門(システム開発の発注側)と、Sier/ITコンサル会社やフリーランス(システム開発の受注側)とでは、プロジェクトの中で異なった役割を担います。ここでは、IT人材の所属毎にどのようなキャリアが当てはまるのかを考えていきたいと思います。

1.事業会社

事業会社のIT部門では、通常は事業会社内の組織体系(ex.担当→係長→課長→部長)にもとづいたキャリア形成を行います。

一方、システム開発プロジェクトの関わり方では、ITを導入することによる事業への効果を検証し、後述のIT支援会社へ具体的なシステム化の検討と共に見積りを依頼します。また、見積りの妥当性を検証し、開発スケジュールを具体化のうえ、予算措置・プロジェクトの立上げを行います。プロジェクト開始以降は、IT支援会社からの報告をもとに、プロジェクト品質を評価し、関係者調整や経営報告を担います。
このため、IT戦略を立案する立場であれば、前項の「コンサルタント」のキャリアパスが目安になるでしょうし、プロジェクト管理を担う立場であれば、「プロジェクトマネジメント」のキャリアパスが当てはまることになります。

2.外部からのIT支援会社(Sier、ITコンサル等)

事業会社に対してITソリューションの提案やシステム導入を行う組織を、ここでは「外部からのIT支援会社」と呼称することにします。外部からのIT支援組織では、Sierであれば「エンジニア→チーフエンジニア→マネージャ→次長→部長」等のキャリア形成になります。
Sierのシステム開発プロジェクトへの関わり方というと、事業会社や大規模ITベンダー等から、システム開発(或いはその一部機能の開発)を受託し、要件定義~テスト・リリースまでの一連のタスクと、発注者への都度報告を担うことになります。このため、受託範囲により異なることはありますが、「プロジェクトマネジメント」「ソフトウェアデベロップメント」「アプリケーションスペシャリスト」のキャリアパスが一般的となります。

一方、ITコンサル会社では、「アナリスト→コンサルタント→マネージャ→パートナー」等のキャリア形成となります。プロジェクトの関わり方が、ソリューション提案やPMOとしての参画であれば、「コンサルタント」や「プロジェクトマネジメント」のキャリアパスが当てはまることになります。

3.フリーランス

参画プロジェクトにおける立場によりますが、プログラマ・システムエンジニア・ITコンサルタント各々について、キャリアパスは上述の「外部からのIT支援会社」と同様の考え方になります。
ただ、自ら参画対象プロジェクトを決める、やりたい仕事に旗を立てるためには、専門性が重要と思われます。本稿では詳細には触れませんでしたが、「ITスペシャリスト」として、データベース・ネットワーク・情報セキュリティ等の技術スキル・知識スキルを、最新動向も含め徹底的に磨き上げることで、その道の第一人者となるキャリアパスも魅力的な可能性として存在します。

3.キャリアパスの過程で身につけるべきスキル

冒頭の繰り返しとなりますが、これまではIT人材のキャリアパスは「プログラマ→システムエンジニア→プロジェクトリーダー→プロジェクトマネージャ(コンサルタント)」が広く一般的とみなされていました。
ただ昨今のITシステムの複雑さやユーザーニーズの高度化が進む状況下、新たな技術要素が登場していくことで、従来のゼネラリストタイプに加え、専門性の高いスペシャリスト人材も必要となっているのが現状です。このため、「所属組織の中での昇格=ゼネラリストとしてのキャリア」といった画一的な考え方ではなく、キャリアパスに関しても多様化してきています。

「プログラマとして経験を重ねるうちに、マネジメント的視点を修得しプロジェクトマネージャへキャリアチェンジ」や「ITコンサルタントとしてソリューション提案活動の経験を重ねる中で、システム開発業務の重要性に気づきがあり、ITアーキテクト(システムエンジニア)へキャリアチェンジ」等も、キャリアパスとして受け入れる土台が整いつつあります。
例えば大手Sierを中心に、独自のスキル指標や技術者認定制度を設け「その道のプロフェッショナル」になることを要求するようになっています。それでは、キャリアの転身により修得すべきスキルはリセットされるのでしょうか?ここではキャリアパスの過程でIT人材が身につけるべきスキルを考えてみたいと思います。

1.プロジェクト管理スキル

プロジェクトに共通するスキルとして、プロジェクトマネジメントの国際的知識体系「PMBOK」があります。10の知識エリアでは、各々プロジェクトマネジメントに関する成功事例が体系立って整理されていますが、これらは「プロジェクトマネージャ」だけが修得すればよいのではありません。プログラマやシステムエンジニアに関しても、意識して業務遂行することで成果物の品質向上に期待が持てます。どのようなプロジェクトにアサインされたとしても、IT人材としてのキャリアパスを構築する上で土台となるスキルと言えます。

2.システム開発スキル

システム開発スキルは、プログラマやシステムエンジニアだけが知っていればよいというわけではありません。事業会社のIT部門担当者が、開発委託先から提出された見積の妥当性を検証する際の、判断材料にもなります。また、プロジェクトマネージャがプログラマとコミュニケーションを取るときの共通言語にもなりますので、システム開発プロジェクトへの関係者にとっては重要な知識スキルと言えます。

3.業務知識

システム開発プロジェクトにおいては、ユーザー業務を意識することが肝要です。誰がどのように事務を回しているのか?このような場合の決裁権限は誰になるのか?今回は基幹業務システムの開発ではあるが、間接部門のデータとはどのようにI/Fしているのか?と俯瞰的な見方ができれば、プログラム間の結合品質に向上が期待できますし、他社事例を知っていることは特にフリーランスの強力な武器にもなり得ます。

4.資格の取得

IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が発信する「IT人材白書2018」において、事業会社/Sier共に、IT人材のスキルを把握する手段の一つとして「情報処理技術者試験の資格保有」を挙げており、体系的な知識スキルを保有することの証明であるといえます。
また、フリーランスの方も、スキルの取得と同時に市場価値を向上させる手段の一つとしても有効ではないかと思われます。

4.まとめ

如何でしたでしょうか?最後まで御覧いただき、まことにありがとうございました。
以下3点をまとめとして、本稿を締めくくりたいと思います。

・IT人材は個々のキャリアパスを描くことで、ギャップを認識し達成すべき目標を明確化する
・所属毎にキャリアパスの考え方は異なるので、自身に合ったキャリアの定義が必要
・キャリアパスの過程では、修得すべき汎用的なスキルがある


次回は、新たなIT技術に対する人材のキャリアについて整理したいと思います。

執筆者:三崎 隆