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【税理士監修】フリーランス向け源泉徴収と計算方法・請求書発行の基礎知識

更新日 2024/12/10

フリーランスとして働く場合、職種によっては請求書に源泉徴収額の記載が必要です。

しかし、フリーランスを始めたばかりの方には、請求書の書き方がわからない人もいるのではないでしょうか。本記事では税理士監修のもと、源泉徴収の仕組みから源泉徴収が必要な職種や税率・計算方法・請求書への具体的な記載方法についてくわしく解説します。

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この記事の監修者

税理士法人小原会計
社員税理士、公認会計士

小原崇史

1989年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業。
会計士試験に合格後、有限責任監査法人トーマツにて主に監査業務を経験。
都内中堅税理士法人で税務業務に従事後、2023年7月独立開業。
2024年4月1日に税理士法人化。
現在は、スタートアップや起業支援…

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フリーランスが知っておきたい源泉徴収の基礎知識とは

まずは、源泉徴収を把握するための基礎知識を、5つのトピックに分けて解説します。

  • 源泉徴収とは
  • 源泉徴収と確定申告の関係
  • 源泉徴収の対象となる報酬や料金
  • 2つの税率
  • 計算方法

源泉徴収とは

源泉徴収とは、所得税をあらかじめ差し引いて納税する仕組みを指します。簡単に説明すると報酬を支払う事業者(会社)が、所得税などを差し引いた上で受取側(フリーランスなど)へ報酬を支払う制度です。

源泉徴収された場合、所得税(源泉所得税)の納税義務があるのは、報酬の受取側ではなく支払側となります。そのため、対象となる報酬において、フリーランス側は納税する必要がありません。

会社員の場合は会社が毎月の給与支払いの際に所得税を計算し、直接国に納めます。一方、フリーランスは会社に雇われていないため、報酬の支払側から所得税の計算を求められるのは珍しくありません。もしも支払いを受けた報酬から源泉徴収されていなかった場合には、支払側に確認することが大切です。

また、フリーランス側が仕事を依頼し報酬を支払う立場になった場合、源泉徴収を行うケースもあります。所得税と消費税は報酬に対してそれぞれの割合で計算されるため、それぞれ記載が必要です。

源泉徴収額は、確定申告時に正確な税額計算をする際に欠かせません。

源泉徴収と確定申告の関係

会社員の場合、源泉徴収で納めた所得税に過不足があると、年末調整で差額が調整されます。一方、フリーランスは会社に雇われていないため、所得税の過不足調整を毎年2~3月の確定申告時に自ら計算した上で行うのです。

確定申告では、1年間の収入から経費を引いた所得を申告します。所得にかかる所得税と報酬の支払側が徴収した源泉徴収額との差額が計算され、源泉徴収額に不足があればその分を支払い、払い過ぎていれば還付を受ける仕組みです。

不足額がある場合は、確定申告期間中に納税しなければなりません。また、納付が定められた期限内に納付ができなかった場合、法定納期限の翌日から完納する日までの延滞税(※)を併せて納付する必要があります。

一方で、払い過ぎていた場合は、通常申告が受理されてから約1ヶ月前後で還付金を受け取れますが、処理状況によっては変動する可能性もあります。

※参考:延滞税の計算方法

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源泉徴収の対象となる報酬や料金

フリーランスのように個人が報酬や支払いを受ける場合、源泉徴収の対象となる料金は8つの種類に分類されます。これらは、職種や報酬内容によって異なるため、都度確認しておくのが重要です。

例えば、フリーランスエンジニアが自分の知見を活かして記事の執筆や講演、セミナー講師としての活動を行った場合、源泉徴収の対象となります。一方で、システム開発やアプリ開発、Webサイト構築といった業務は、源泉徴収の対象外です。源泉徴収は、同じ職種内でも業務内容によって扱いが異なるため注意が必要です。

詳細な源泉徴収の対象範囲については、国税庁のHPでの確認をおすすめします。必要に応じてご覧ください。

源泉徴収の税率2種類

フリーランスが受け取る報酬にかかる源泉徴収の税率は、以下の2種類に分かれています。

  • 100万円まで:10.21%(復興特別所得税0.21%を含む)
  • 100万円を越えた分:20.42%(復興特別所得税0.42%を含む)

計算例: 100万円×10.21%+(報酬-100万円)×20.42%

この税率には「復興特別所得税」が含まれています。復興特別所得税とは、東日本大震災からの復興支援を目的とした所得税に追加で課される税金です。所得税を納める義務のある個人は、復興所得税も納めなければなりません。

また、報酬に消費税が含まれている場合には、消費税込みの報酬に対して上記の税率で計算する必要があります。ただし、請求書で報酬と消費税が明確に分けられている場合は、消費税を除いた報酬金額に対して源泉徴収額を計算して問題ありません。

源泉徴収額を正確に計算しておけば、確定申告時の手間を減らせるためおすすめです。

源泉徴収額の計算方法

源泉所得税(源泉徴収金額)の計算方法について、具体例を挙げて説明します。以下は、報酬金額ごとの計算例です。

  • 1万円(税率10.21%)
    源泉徴収金額:10,000 × 0.1021 = 1,021円
  • 150万円(税率10.21% & 税率20.42%)
    源泉徴収金額:1,000,000 × 0.1021 + 500,000 × 0.2042 = 204,200円

計算結果に端数が出る場合、1円未満は切り捨てます。四捨五入や切り上げではないため注意が必要です。

  • 報酬が1万5千円の場合(税率10.21%)
    源泉徴収金額:15,000 × 0.1021 = 1,531.5 端数切り捨てで1,531円

源泉徴収金額の計算は、報酬額が多くなるほど計算結果に影響が出るため、正確な税率と切り捨て処理を徹底するのが重要です。

フリーランスの請求書作成例

請求書は報酬を受け取るために欠かせない重要な書類です。請求書には、どのような成果物に対して報酬を求めるのかを明確に記載する必要があります。

特にインボイス制度に対応している場合は、仕入税額控除を受けるために適格請求書の要件を満たしておかなければなりません。適格請求書には、必須項目と推奨項目があります。

  • 必須項目:宛先、請求者の氏名または名称、登録番号、取引年月日、取引内容、取引金額
  • 推奨項目:書類名、請求書番号、振込先(振込先の口座情報と振込手数料なども記載)、支払期限、備考

インボイス制度に登録していない免税事業者であっても、必須項目と推奨項目を押さえて情報を抜け漏れなく記載しておくのがおすすめです。必須項目は法律上求められる最低限の情報ですが、推奨項目を加えることで、より詳細で信頼感のある請求書を作成できます。

丁寧で正確な請求書の作成は、取引相手に安心感を与えるだけでなく、フリーランスとしての信頼性を高められる重要なポイントです。

宛先

請求書なのが一目でわかるように、「ご請求書」または「御請求書」の文字を、用紙の一番上か左上の目につきやすい場所に大きく記します。

宛先に相手の会社名または会社名と担当者名を記載する際は、敬称に注意が必要です。敬称をつけ忘れたり、間違えたりすると印象が悪くなりかねません。

具体的な書き方は次の通りです。

  • 会社名のみ:A株式会社 御中
  • 会社名+担当者名:A株式会社 B様
  • 担当者名が不明:A株式会社 (経理)ご担当者様

発行者の氏名(屋号)

請求者の氏名または名称をどのように書くかは、フリーランスとしての事業形態に応じて異なります。会社(法人)の場合は会社名を、屋号があれば、氏名の前に記載が必要です。

  • 会社(法人)の場合:A株式会社 氏名
  • 屋号がある場合:屋号 氏名
  • 個人名の場合:氏名

請求書には、押印を求められる場合もあります。紙ではなくPDFなどの電子書類で提出する場合には、電子印影が必要です。使用する電子印影は、作成ソフトを利用するか、判子の印影を撮影し画像として取り込む方法もあります。例えば、Adobe Acrobat Readerのスタンプ機能を活用すれば、無料で電子印鑑を作成可能です。

また、請求者の氏名または名称に加えて、住所や電話番号、メールアドレスも記載します。

各情報を明記することで、取引先にとって信頼できる事業者としての印象を与えられます。また、万が一の連絡漏れを防ぎ、スムーズな取引を実現するためにも、漏れなく請求者情報を記載するのが大切です。

登録番号 ※インボイス制度に登録している場合

インボイス制度に登録している場合は、適格請求書発行事業者の登録番号を請求書に明記する必要があります。登録番号はTから始まる13桁の番号で、発行元は国税庁です。

登録番号を記載すれば、取引先が仕入税額控除を適用できるようになります。また、登録番号は国税庁のインボイス制度適格請求書発行事業者公表サイトに掲載されるため、取引先も確認可能です。

取引年月日

取引年月日とは、請求書の作成日を指します。取引年月日を明記すれば、請求書が取引の証拠として有効となり、後日の確認やトラブル防止にも役立ちます。

特に、フリーランス新法では報酬支払期日が定められているため、請求書に取引年月日を記載するのは重要です。

取引内容

取引内容では、何に対する請求なのかを項目ごとに分けて記載し、明細としての意味も持たせます。取引相手が請求内容を明確に把握できるようになるため、正確な記入を心がけてください。

以下の項目を含めると、取引内容がわかりやすく整理されます。

記載項目:成果物、納品日、単価、数量、小計

例えば、システム開発に対する請求の場合は以下のように記載します。

〇年〇月納品分(または納品日)
システム開発費 750,000円 1 750,000円

時間給の場合には、稼働時間と時間給も併せて記載します。

〇年〇月納品分(または納品日)
システム開発費(100h×5,000円) 500,000円 1 500,000円

取引金額

取引金額は、源泉徴収に関係する金額であるため、正確に記載するのが大切です。

前項で記載した取引内容に応じた金額の明細に加えて、合計報酬額や消費税、源泉徴収金額、最終的な請求金額を細かく記載します。

以下は、75万円のシステム開発を引き受けた場合の例です。

  • 品目(明細)
    〇年〇月納品分(または納品日)
    システム開発費 750,000円 1 750,000円
  • 消費税(10%) 75,000円
  • 源泉徴収(10.21%) 76,575円
  • 合計 748,425円※請求額と同一
  • ご請求額(消費税込) 748,425円※合計と同一

合計と請求額は表現が異なりますが、同じ金額を指します。請求書では、計算結果を示す合計金額を記載したうえで、最終的に取引先が支払う請求額(振込額)をわかりやすく目立つ形で記載するのが一般的です。請求額は、書類名の近くに大きく記載すると、支払側もわかりやすく、ミスの防止にもつながります。

請求書番号

請求書には、請求書番号を振るのをおすすめします。請求書番号は、相手先や発行月、発注ごとにわけるなど、管理しやすい形式にすると便利です。例えば、「20241121-001」のように発行年・月・連番とすれば、どの請求書を指しているかすばやく特定できます。

特に、複数の請求書を発行している場合は、記録の管理や確認作業の大幅な効率向上が可能です。

振込先

報酬の振込先も、請求書には欠かせない情報のひとつです。次の項目を記載します。

  • 振込先の情報:銀行名、支店名、預金種別(普通か当座)、口座番号、名義人(カタカナ)

クライアントが都合の良い銀行を選べるように、振込先を複数用意して記載するのもおすすめです。これにより、取引相手にとって柔軟な支払い方法を提供できます。

なお、銀行コードや支店コードを求められる場合もあるため、事前に確認して請求書に記載しておくのもおすすめです。

支払期限

契約時に支払期限を決めていればその期限を、案件ごとに支払が異なるならば、個別契約に基づいた期限を記します。

フリーランス新法では、報酬の支払いは物品や成果物の納品日から起算して60日以内のできるだけ早い期日と定められています。そのため、支払期限を記載する際は、最長でも納品日から60日以内の日付を設定してください。

納品から1ヶ月後の場合は「締め日の翌月」、2ヶ月後の場合は「締め日の翌々月」と表します。締め日とは事務処理の区切りとなる日で、支払日は相手先によってさまざまです。

例えば、締め日の翌々月末払いという契約であれば、6月中に納品した成果物に対する支払いは8月末となります。

備考

請求書には必須ではないものの、備考欄を設けておくと便利です。備考欄は、取引先への補足説明や何か記録に残しておきたい情報を記載するのに役立ちます。

例えば、分割払いに関して記載する場合や今後のスケジュール案内を記載する場合などに利用できます。

備考欄を取引における補足情報の共有スペースとして活用すれば、取引相手とのスムーズなやり取りやトラブルの防止に効果的です。

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まとめ

フリーランスは、成果物を仕上げるのはもちろんのこと、支払いを受けるための請求処理も重要な業務のひとつです。報酬には源泉徴収の対象となるものがあり、該当する場合は正確な金額を請求書に記載しておく必要があります。

請求書を作成する際は、税率や計算方法などを把握し、適切に反映させるのが大切です。

本記事で紹介した請求書の書き方やポイントを参考にして、丁寧で正確な請求書を作成してください。

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