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ITストラテジストとは?仕事内容・スキル・資格の取得方法まで解説

更新日 2023/10/24

ITストラテジストとは、企業や組織において、IT技術を取り入れた事業戦略を策定し、現場への導入を主導する役割を担う仕事です。近年はDX推進やIT活用が重視されていることもあり、一般企業においてもITストラテジストの需要は高まっています。 これからITストラテジストを目指す場合は、IPAが主催するITストラテジスト試験の取得もおすすめです。本記事では、ITストラテジストの業務内容や将来性、必要なスキルなどについて解説します。

it ストラテジスト と は

ITストラテジストとは

ITストラテジストとは、システム開発の最上流工程から参画して、経営者目線に立ってIT戦略の立案・実行する戦略家のことです。一般的に、事業の計画段階からプロジェクトに参画し、既存事業の調査と分析を行った上で、ビジネスモデルの方向性を決定づけたり、導入すべきシステムの全体像を描いたりします。

システム開発のエンジニア系における上級職のひとつで、最上流工程から参画して事業戦略の舵取りを担うため、高度な経営知識やマネジメント能力が必要になります。求められるスキルが高いことから、高年収も期待できるでしょう。

システムエンジニアやプログラマーなど、開発現場で働くエンジニアたちは、ITストラテジストの策定した事業戦略を前提として、システムを製造・開発することになります。

ITストラテジストの業務内容

ITストラテジストの主な業務内容として、以下の4つが挙げられます。

  • ITを絡めた事業戦略の策定
  • 全体・個別システム化の策定
  • システムのモニタリングおよびコントロール
  • 最新の市場動向を調査(IT知識の更新・拡充を図る)

それぞれの業務内容について詳しく解説します。

ITを絡めた事業戦略の策定

ITを絡めた事業戦略の策定においては、最初に対象となる企業や組織の既存事業を調査し、調査結果を分析して、現状の課題を抽出します。その後、明らかになった課題を解決するために最もふさわしいシステムを導き出し、システムを含めた事業戦略を策定することが、ITストラテジストの業務のひとつです。

事業戦略を策定する際は、IT業界の最新の動向を調査した上で、これまでにない新たなビジネスモデルの展開も検討する必要があります。新たなビジネスモデルを前提とした事業戦略を策定する際は、実現可能性も十分に考慮することが大切です。

全体・個別システム化計画の策定

事業戦略を策定した後の「全体システム化計画」の策定も、ITストラテジストの業務範囲に含まれます。全体システム化計画の策定とは、事業戦略を実現するためにはどの業務範囲をシステム化しなければならないのかを明らかにした上で、必要なシステムの全体像を可視化する業務です。

また、全体システム化計画の策定後は、個別システム化計画の策定へと移ります。個別システム化計画では、全体システム化計画でシステム化の対象となった業務範囲を詳細に分析し、各業務ごとに構築するシステムを具体化します。

全体システム化計画と個別システム化計画が完成したら、双方の関連性に注意しながら、具体的なスケジュールに落とし込んでいきます。

システムのモニタリングとコントロール

システム全体のモニタリングやコントロールも、ITストラテジストの業務のひとつです。リスク分析や運用管理、トラブルへの対応など、リスクマネジメント全般について、リーダーの立場で主導します。

システムの実装にあたってどのようなリスクが考えられるのかを事前にリストアップし、根本的な解決を図るとともに、万が一トラブルが起きた際の対応策についても検討しておきます。

また、参画したプロジェクトの運用推進や評価も、ITストラテジストが担当します。開発中にはプロジェクトが円滑に進んでいくための舵取りを行い、リリース後にはプロジェクトが十分に機能していたかを判断します。

最新の市場動向調査

ITストラテジストは、企業や組織の業種・業態・商材に合わせてあらゆるシステムを活用した事業戦略の策定を行います。そのため、プログラミングの知識だけでなく、ソフトウェアやハードウェアに関するIT知識が必要不可欠です。

他にも、経営者視点で事業戦略を策定する役割が求められることから、時には法律や知的財産などの知識が必要になる場面もあります。単に最新のIT知識を理解するだけでなく、幅広い視点からさまざまな知識・スキルを身につけることが重要になります。

ITストラテジストの将来性

近年、IT技術を事業戦略に活用する企業が数多く見られるようになりました。このことから、最新のIT技術を取り入れた事業戦略を策定し、運用推進やリスクマネジメントまで担うことができるITストラテジストの需要も高まっています。

ITの活用が重要な現場は、決してIT企業だけではありません。DX推進などの影響で一般企業においてもIT技術が重要視されるようになり、ITを活用した経営戦略を策定できる人材が必要とされているため、ITストラテジストの活躍の幅は広がっています。

前述のように、ITストラテジストにはIT知識や経営知識、法務の知識など、さまざまな知識が必要になります。その専門性の高さから人材不足の状況が続いており、市場価値も高い状態にあります。

ITストラテジストのキャリアパス

ITストラテジストには、高度な専門知識が求められるため、身につけたスキルを活かして多種多様なキャリアプランを形成することが可能です。

例えば、企業の課題を解決するために、組織の中核を担う経営者のポジションを目指すキャリアパスもひとつの選択肢です。また、ITの専門知識を活かして、開発プロジェクトのリーダーやCIOなど、部門責任者としてステップアップしていく道もあります。

求められるスキルが幅広いからこそ、ITストラテジストは柔軟性の高いキャリアパスを描くことができるのです。また、高度なプログラミング知識を活かしてエンジニアとして活躍したり、IT知識と経営知識を融合させてITコンサルタントとしてクライアントの課題を解決したりと、得意分野に特化した人材として活躍することも可能です。

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IoT/AI/Fintech等による技術革新は従来にないスピードで進行しており、これら技術革新は「第4次産業革命」とも表現されています。日本においても当該時技術革新を産業・生活に取り入れることで、「Society5.0」※を世界に先駆けて実現していくことを目指しています。 (※Society5.0:仮想空間と現実空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(内閣府HPより))

それでは、新たな技術革新により、従来のIT技術は淘汰されていくのでしょうか?いいえ、日本は技術ありきの経営よりも、お客様目線のサービスありきの経営が根強い傾向がありますし、ドラスティックな技術要素は企業としても設備投資が追いつかないため、新たな技術要素へはゆるやかな変遷となり、当面は従来型IT技術との融合型になると予想されます。

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ITストラテジストに必要なスキル

ITストラテジストに必要なスキルには、技術面のスキルとソフト面のスキルがあります。技術面のスキルは「ITに関する技術的な知識やスキル」を指し、ソフト面のスキルは、ヒアリングやコミュニケーション能力などの「ヒューマンスキル」を指します。
ここでは、技術面のスキルとソフト面のスキルに分けて、それぞれ必要なスキルをご紹介します。

技術面のスキル

ITストラテジストは、ITを絡めた事業戦略の策定やプロジェクトの運用管理が業務の中心となるため、開発現場で実際にプログラミングを行う場面はほとんどありません。しかし、システムやプログラムに関する十分な知識を持っていなければ、予算面や技術面を考慮して、実現可能な事業戦略を立案することは困難です。

そのため、実際に現場で開発を行う機会がほとんどないとはいっても、システムやプログラムに関する知識を深めるための努力が欠かせません。

場合によっては、実際にプログラミング言語を学習して開発がどのように行われるのかを体験したり、先にプログラマーやシステムエンジニアとして現場で開発を経験したりしてからITストラテジストに転身するパターンも考えられます。

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ソフト面のスキル

技術面のスキルだけでなく、ソフト面のスキルも重要です。ITストラテジストは、ITを活用した新しい事業戦略をプレゼンし、経営層からの理解を得て具体的な戦略の策定を進めていく必要があります。しかし、新規事業を立ち上げるときだけではなく、分析結果や評価を報告するときなどにもプレゼンの機会がめぐってきます。

このような背景から、ITストラテジストは状況に応じて適切な情報をわかりやすく伝えるための、プレゼンテーションスキルが求められます。

また、現状の課題抽出のためのヒアリング力や、開発現場とクライアントの間をつなぐ調整力、新システムをリリースするときに現場と協力して円滑な導入を行うためのコミュニケーション能力などのヒューマンスキルも重要です。

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ITストラテジストになるにはITストラテジスト試験の合格が近道

これからITストラテジストを目指すなら、「ITストラテジスト試験」の取得がおすすめです。ITストラテジスト試験とは、IPA(情報処理推進機構)が主催している国家資格試験で、同機構が実施している基本情報技術者試験、応用情報技術者試験よりも上位にあたる「高度試験」に含まれます。

IPAが主催するIT関連の国家資格のなかでも難易度は高めですが、持っているとITストラテジストとして活躍できる能力を持つことをアピールできるため、転職に有利になる可能性が高いです。

ITストラテジスト試験は毎年1回(通常は春季)実施されています。ここでは、ITストラテジスト試験に挑戦してみたい人のために、試験内容や合格率、学習費用などを解説します。

ITストラテジスト試験の試験内容

ITストラテジスト試験には「午前試験」と「午後試験」の2種類があり、そのなかでも下記の4つのカテゴリに分かれています。

午前試験(合計90分) ・午前Ⅰ:50分
・午前Ⅱ:40分
午後試験(合計210分) ・午後Ⅰ:90分
・午後Ⅱ:120分

午前Ⅰと午前Ⅱは選択式で、4つの選択肢から正しい答えを選んでマークします。午前Ⅰ、午前Ⅱそれぞれに制限時間が設定されており、午前Ⅰが終了してから午前Ⅱを開始する流れです。

午後Ⅰと午後Ⅱは記述式で、設問に沿った回答を自分の言葉で回答用紙に記述します。より応用力を求められる設問が出題されるため、ITに関する深い知識と、経営者目線に立って柔軟に事業戦略を策定できる能力が求められます。午前の流れと同様に、午後Ⅰが終了してから午後Ⅱに移ります。

参照:独立行政法人情報処理推進機構 試験情報

ITストラテジスト試験の合格率

ITストラテジスト試験の合格率は、年によって多少変動しますが、概ね13〜15%と合格率は低く、事前の対策が必要不可欠です。
ITストラテジスト試験の合格点は、下記のようになっています。

午前試験 ・午前Ⅰ:満点の60%以上
・午前Ⅱ:満点の60%以上
午後試験 ・午後Ⅰ:満点の60%以上
・午後Ⅱ:ランクA

合格点を満たすためには、一つひとつの試験で確実に合格点を満たせるような学習方法が求められます。

参照:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験  推移表(平成21年度春期以降)

ITストラテジスト試験の学習費用

ITストラテジスト試験の学習方法は、主に「書籍を購入して独学する方法」と、「通信教育を利用する方法」の2種類あります。それぞれの学習費用の目安は下記のとおりです。

  • 書籍を購入して独学する場合:3,000~4,000円×購入冊数
  • 通信教育を利用する場合:30,000~50,000円程度(コース内容によって変動)

書籍を購入して独学するメリットは、学習時間はある程度かかるものの、コストを大きく抑えられる点にあります。ITの知識や経営知識がある程度備わっている人なら、より効率的に学習できるでしょう。
また、学習のスケジュールが自由なので、空き時間を使って計画的に勉強できる人に向いています。

一方、通信教育を利用するメリットは、「初心者でも1から丁寧に学べること」です。コストはかかりますが、ITの知識やスキルがほとんどなく、これから新たにITストラテジストを目指す人でも効率的に学習できます。
学習スケジュールがある程度決まっているので、計画的に勉強するのが苦手な人にもおすすめです。

まとめ

ITを絡めた企業や組織の事業戦略を策定するITストラテジストは、IT企業だけでなく、一般企業にとっても重要な存在になりつつあります。プログラムやシステムなどの技術的なスキルだけでなく、経営層向けのプレゼンテーションスキルや、現場で旗振り役を務めるためのコミュニケーション能力、リーダーシップなども、重要なスキルのひとつです。

これからITストラテジストを目指すのであれば、ITストラテジスト試験の取得も検討するとよいでしょう。試験の勉強を通してITストラテジストとして活躍するために不可欠な知識を学べるだけでなく、取得した資格は、転職活動において大きなアピールポイントとして活用できます。

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