【サーバーエンジニアへの道】資格と必要スキルを解説
サーバーエンジニアの仕事には設計業務、構築業務、保守・運用業務などがあり、現場で活躍するためには、ハードウェアやOS、ネットワーク、セキュリティなど、さまざまな知識が求められます。
これからサーバーエンジニアとして活躍したいと考えている方は、関連する資格試験を受験するのが有効です。本記事では、サーバーエンジニアの仕事内容や必要な知識・スキル、おすすめの資格試験などについて解説します。
この記事の監修者
INTLOOP株式会社
TECH STOCK MAGAZINEサイト 監修部
TECH STOCKの運営会社であるINTLOOPで活躍している現役エンジニアで構成された監修部です。各領域の言語・スキルの知見を持ったメンバーが、現場の知見も含めて記事のチェック・監修を行っています。
サーバーエンジニアの仕事内容
サーバーエンジニアの主な仕事内容は、設計業務、構築業務、保守・運用業務です。
ただし、企業体制やプロジェクト規模によってサーバーエンジニアの対応範囲は変わってくるため、サーバーエンジニアが部分的に対応したり、他の職種にトスアップしたりする場合もあります。
ここでは、設計業務、構築業務、保守・運用業務それぞれの仕事内容について、わかりやすく解説します。
設計業務
設計業務では、サーバーの設計を行います。ハードウェアとして実物が存在する物理サーバーのほか、一台の物理サーバーがあれば複数の仮想サーバーを稼働できる技術も登場しています。さらに目的に応じて、Webサーバーやデータベースサーバーなどさまざまなサーバーの種類が存在します。
そのため、サーバーエンジニアはサーバーを利用する目的や環境に合わせ、コスト(機材費用や運用費など)や容量(メモリーや通信量など)、CPUや通信速度などの要件を設計しなければなりません。また、サーバーが安定して稼働するためのOSやミドルウェアの選定も行います。
このように、顧客のニーズにはどのようなサーバーが合うのか考えてサーバーを設計します。
構築業務
構築業務では、設計した内容をもとにサーバーの構築を行います。物理サーバーを購入もしくはレンタルし、配線をつないだり設定を行ったりしてサーバーを利用できるよう整備します。仮想サーバーを利用する場合には、ソフトウェアのインストールや設定なども行います。
また、サーバー自体の設定だけではなく、OSやミドルウェア、アプリケーションなどのインストールと設定も必要です。サーバーは24時間365日フル稼働するため、安定的に稼働できるようにサーバーエンジニアが最適な環境に整えます。
サーバーエンジニアは、構築業務のみを行う場合もあれば、設計業務+構築業務+保守・運用業務の一連の業務を担う場合もあります。保守・運用業務も同時に行う場合は、構築が完了した後、保守・運用業務へと移ります。
保守・運用業務
保守・運用業務とは、構築が完了したサーバーの保守・運用を行う仕事です。サーバーを監視して正常に稼働しているかどうかをチェックしたり、セキュリティを維持・管理してサイバー攻撃などの脅威から身を守ったりする役割があります。
また、サーバーに保存されているデータを定期的にバックアップして、万が一の事態に備えるのも保守業務の仕事のひとつです。
他にも、「サーバー内で運用しているアプリケーションのバージョンアップが通知されたときに速やかに適用を行う」「負荷を最小限に抑えるためのチューニングを実施する」といった、サーバーに関わる大小さまざまな業務を行います。
サーバーエンジニアとして活躍するために必要な知識・スキル
サーバーエンジニアとして活躍するために必要な知識・スキルとして、ハードウェアやOSの知識、ネットワークの知識が必要不可欠です。また、ミドルウェアの知識や安全性を守るためのセキュリティ知識・スキルも求められます。
ここでは、これからサーバーエンジニアとして働きたいと考えている方のために、身につけておきたい6つの知識・スキルについて解説します。
ハードウェア知識
サーバーエンジニアにとってハードウェアの知識は欠かせません。どのようなCPUやメモリを選択すると希望要件を満たした最適な環境を実現できるのかを判断するためには、最新のハードウェア知識を身につけて、幅広い選択肢のなかから最適なパーツの組み合わせを見つけ出す必要があります。
また、サーバーの故障や高負荷状態に効率よく対応するためには、ハードウェアの仕組みと特性を理解することが不可欠です。
このようなハードウェアに関する広範な知識とスキルが、サーバーエンジニアとしての効率的な運用とトラブル対応に直結します。
OSの知識
サーバーを動作させるための中枢となるOSの知識がなければ、ハードウェアを組み立てることはできても、実際に稼働させることはできません。サーバーOSは主に、Windows系とUnix系(Linux系、BSD系、SystemV系)の2種類があります。それぞれ、コストやセキュリティ、サポートや操作性などが異なるため、目的やスキルに応じて使い分けることが重要です。
ネットワークの知識
サーバーの稼働時はネットワークに接続して顧客向けのサービスを運用したり、社内ネットワークを構築して社内のクライアント(PCやスマートフォン、タブレットなどの端末)を統一管理したりします。
そのため、ネットワークに関する豊富な知識を持ち、状況に合わせた最適なネットワーク設計を行う必要があります。
ネットワークの知識が身についていないと、規模に合った最適なネットワークを選択できず、稼働後に頻繁にトラブルが起きてサービスが停止したり、低速な通信が続いて顧客満足度が著しく低下したりするおそれがあるため、注意が必要です。
ミドルウェアの知識
ミドルウェアの知識も、サーバーエンジニアにとって非常に重要なスキルセットの一つです。ミドルウェアは、OSとアプリケーションの間で動作し、各種サービスや機能を提供します。特にWebサーバ、アプリケーションサーバ(APサーバ)、データベースサーバ(DBサーバ)の三つは、多くのシステムで核となる要素です。
ミドルウェアの知識によって、より効率的なシステム構築と運用が可能となり、可用性や拡張性も向上します。商用ミドルウェアやオープンソースを問わず、幅広い知見が必要です。
セキュリティ知識・スキル
セキュリティ知識やスキルも、サーバー構築には必須となります。サーバーをネットワークに接続して使用する以上、常に悪意を持つ第三者からのサイバー攻撃の脅威にさらされることになります。このような攻撃を防御し、安全な運用を続けるためには、正しいセキュリティ知識のもとに適切なセキュリティ対策が必要です。
例えば、定期的にログ監視を行うためのログ取得機能を導入したり、ネットワークに接続する際にVPNを使用したりと、さまざまな観点からセキュリティ対策を講じて、安全性を高めるための工夫が大切です。
プログラミングスキル
プログラミングスキルは、サーバーエンジニアが効率的に作業を行い、システムを安全かつ確実に運用するために必要なスキルです。スクリプト言語を使用することで、定期的に行う作業の自動化やデータの抽出作業の効率化などができます。
また、システムの一元管理やアップデートの自動化を行うサーバー管理ツールを利用するにあたってはプログラミングの知識が求められます。
このようにプログラミングスキルによって、手作業により発生するミスや運用コストの削減が可能になります。
サーバーエンジニアの将来性とキャリアパス
近年では自社でサーバー構築・運用を行うオンプレミスから、事業者側が運用するサーバーを利用するクラウドへの移行が進んでいますが、社内規定やセキュリティの観点などから、オンプレミスを採用する現場も数多くあります。
このことから、今後もオンプレミスが完全になくなることはなく、サーバーエンジニアの需要が失われることはないと考えられます。案件が爆発的に増えることはなくとも、安定的にサーバーエンジニアとしての仕事はあり続けるでしょう。
また、最近ではクラウド上でサーバーを構築することもあるため、クラウドエンジニアと兼務しての需要もあると考えられます。サーバーエンジニアは、将来的に次のようなキャリアパスを描くことができます。
職種 | 業務内容 |
プロジェクトマネージャー | プロジェクトの進行管理、人員調整、コスト管理など |
サーバーエンジニア(スペシャリスト) | サーバーエンジニアの業務を極めたスペシャリスト |
データベースエンジニア | データベースの設計・構築・運用・保守を行う データ活用のスキルが必須 |
ネットワークエンジニア | ネットワークの設計・構築・運用・保守を行う ネットワークの知識が求められる |
セキュリティエンジニア | 幅広いセキュリティ対策業務を担当する ネットワーク、クライアント端末、サーバーなど、対応範囲はさまざま |
サーバーエンジニアとして将来的にどのような道に進みたいのかを検討した上で、必要な知識を身につけることが大切です。
フリーランスエンジニアの案件紹介サービスTECH STOCKでは、身に付けている現状のスキルと今後習得すべきスキルを目指したいキャリアに照らし合わせて、最適なキャリアカウンセリングを行います。キャリアのご相談もTECH STOCKにお任せください。
TECH STOCKはフリーランス・ITエンジニアのための案件紹介サイトです
サーバーエンジニアへのキャリアチェンジを目指すなら資格取得がおすすめ
サーバーエンジニアへのキャリアチェンジを目指すなら、資格取得を通して必要な知識やスキルを習得するのがおすすめです。資格取得を目指して勉強することで、サーバーエンジニアとしてより専門性の高い仕事に取り組める可能性が高まります。
サーバーエンジニアに必要な知識のなかでも、比較的学習の難易度が高い知識として「OSに関する知識」と「ネットワークに関する知識」があります。「Linux技術者認定試験」などのOSに関する資格や、「CCNA」や「CCNP」などのネットワーク資格の取得を目指すことで、サーバーエンジニアに必要な知識・スキルを幅広く専門的に学習できます。
また、資格を取得すると、年収アップや案件獲得にも良い影響をもたらす可能性が高いと考えられます。
サーバーエンジニアにおすすめの資格
ここからは、サーバーエンジニアにおすすめの7つの資格を紹介します。紹介する資格は、下記の7種類です。
- 基本情報技術者試験
- 応用情報技術者試験
- CCNA
- CCNP
- Linux技術者認定資格
- MCP(マイクロソフト認定資格)
- ITIL®認定資格
それぞれの資格の特徴や内容、取得の難易度、有効期限などについて解説します。これから資格取得に挑戦したいとお考えの方はぜひ参考にしてください。
基本情報技術者試験
基本情報技術者試験は、独立行政法人情報処理推進機構(以下、IPA)が主催する、エンジニア全般を対象としたIT知識・スキルを証明するための国家試験です。駆け出しのエンジニアにとって難易度はやや高めですが、まだITの知識がそれほど豊富ではない初心者でも、十分な対策を行うことで合格できる可能性はあります。
ハードウェアやOSの基礎知識から、プログラムの基本的な考え方まで、エンジニアにとって不可欠な知識が幅広く問われるため、エンジニアを目指す人が最初に挑戦する資格としてもおすすめです。
2023年9月現在は有効期限が定められておらず、一度取得すれば基本情報処理技術者試験の資格は生涯有効です。
CCNA
CCNA(Cisco Certified Network Associate)は、ネットワーク製品を開発・販売するCiscoが主催するネットワーク関連の資格試験です。CCNAでは、ネットワークの基礎知識やセキュリティの基礎、IPサービス、自動化のためのプログラム設計・構築に関する問題などが出題されます。
Ciscoからトレーニングのためのe-ラーニングシステムが提供されており(有料)、試験対策のための演習問題を効率的に学習できるのが特徴のひとつです。
資格の有効期限は3年間で、期限を更新するためには再度認定試験に合格するか、Ciscoから提供される学習教材を使って「生涯学習クレジット」を30ポイント取得する必要があります。
CCNP
CCNP(Cisco Certified Networking Professional )は、前述のCCNAの上位資格です。CCNAがCiscoの認定資格のなかで「アソシエイト」と呼ばれる入門資格である一方、CCNPは「プロフェッショナル」に該当し、より専門性の高い内容が出題されます。
CCNPの認定を受けるためには、「コア試験」と「コンセントレーション試験」の2種類の試験に合格しなければなりません。コア試験は、IPv4やIPv6などのIP知識のほか、仮想化やセキュリティ、ネットワークアシュアランス、自動化などの知識が問われます。
コンセントレーション試験は6種類からひとつを選択して受験するように求められているため、専門性に合わせて選択可能です。
CCNAと同様、CCNPの有効期限も3年間となっています。
Linux技術者認定資格
Linux技術者認定資格(以下、LinuC)は、サーバー構築によく用いられるOSの「Linux」に関する知識・スキルを証明するための認定試験です。Linux技術者認定には「LinuCレベル1」「LinuCレベル2」「LinuCレベル3」の3つのレベルがあり、受験者のレベルに合わせて最適なものを選択できます。これから初めてサーバー知識について学ぶ方は、まずはLinuCレベル1に該当する「101試験」と「102試験」を受検することをおすすめします。
LinuCレベル1では、物理/仮想Linuxサーバーの構築と運用について問われます。101試験と102試験の両方に合格すると、Linuxシステム(仮想環境を含む)の基本操作とシステム管理ができる技術者として認定されます。
2023年9月時点、資格の有効期限は定められていません。
参考:LinuC
Microsoft認定資格プログラム
Microsoft認定資格プログラム(MCP)とは、Microsoft社が公式に主催しているマイクロソフト製品に対する認定資格です。認定資格の取得には、資格に対応する試験の受験が必要になります。製品別、役割別、レベル別など、多種多様な認定資格を通して、マイクロソフト製品に関する幅広い知識を習得できます。
各認定資格の有効期限は1年です。期限を延長するためには有効期限が消失する6か月前に、オンラインで提供される所定の更新評価を受けることで、1年間延長が可能です。
2023年9月現在、初心者向けの「初級」資格は全部で8種類あります。初心者におすすめなのは、Microsoft Azureの基礎について学べる「AZ-900: Microsoft Azure の基礎」です。
Azure認定資格は、同社のクラウドサービスに関する知識やスキルを証明するMicrosoftの資格試験です。全部で27種類あり、難易度や役割によって分類されています。ここでは、どの資格を取得すればいいのかが分かるよう、資格試験の概要に加えて取得のメリット、難易度別資格一覧、学習方法についてお伝えします。
ITIL®認定資格
ITIL®認定資格とは、ITサービスマネジメントの知識・スキルを認定するための資格試験です。ITIL(Information Technology Infrastructure Library)®はITサービスマネジメントのベストプラクティス集を指す言葉で、世界におけるITサービスマネジメントの業界標準として認識されています。
サーバーエンジニアにとっても、システム運用管理業務に活用できるITサービスマネジメントの知識は必要不可欠です。ITIL認定試験を受験することで、サーバー運用に役立つ知識を体系的に身につけられます。
基礎資格として「Foundation資格」が、上位資格として「Specialist資格」「Strategist資格」「Leader資格」があります。2023年現在、Foundation資格のみ日本語試験がリリースされています。初心者の方はFoundation資格から挑戦すると良いでしょう。
有効期限が3年間に定められており、再受験、上位資格の受験、継続学習の要件を満たすことのいずれかによって更新する必要があります。
参考:ITIL®認定資格
サーバーエンジニアの資格を取得するための勉強法
サーバーエンジニアの資格を取得するための勉強方法としては、書籍の購入やWebサイトの利用、専門のスクールに通うなどの方法があります。自分の予算やスケジュールに合わせて、適切な方法を選ぶことが大切です。
ここでは、3つの方法について詳しく解説します。
書籍を購入する
サーバーエンジニアの知識・スキルを身につける方法の1つ目は、書籍を購入して独学する方法です。1冊の中に体系的にサーバーエンジニアとして活躍するための知識がまとまっているため、順序立てて知識を身につけたいという方におすすめです。
最初の1冊目から応用レベルのものを選んでしまうと、内容が理解できずに挫折してしまうおそれがあるので、初めてサーバーエンジニアの知識を学ぶ場合は、基礎レベルのものを選びましょう。IT知識がほとんど身についていない方は、サーバーエンジニアの書籍を購入する前に、ITに関する基礎知識を学べる書籍を1冊読んでみるのもおすすめです。
Webサイトを利用する
Webサイト上に掲載されているサーバーエンジニア向けの学習コラムや、ベンダーが提供している公式の演習問題などを利用して学習する方法もあります。
Webサイトを利用した方法には、低コストで必要な情報を学べるというメリットがあります。一方で、Webサイト上には真偽不明の情報が混ざっていることもあるため、できるだけ大企業や公的機関などの信頼できる発信元が提供しているWebサイトを利用しましょう。
専門のスクールに通う
サーバーエンジニアの知識やスキルを教えている、専門のスクールに通う方法も考えられます。専門のスクールは、現場で培った専門知識を持ったプロの講師が担当するため、現場で使えるスキルを身につけやすいというメリットがあります。また、疑問に思った点をその場で講師に質問できるため、つまずきをすぐに解消できる点もメリットです。
ただし、専門のスクールや書籍やWebサイトを利用する場合に比べて費用が高額になりやすいため、予算と相談の上で利用するかどうかを検討しましょう。
まとめ
サーバーエンジニアの仕事には主に、設計業務、構築業務、保守・運用業務があり、一部の業務を担当することもあれば、全ての業務を総合的に担当することもあります。
サーバーエンジニアになるための知識を学ぶのであれば、資格試験の受験をおすすめします。ITエンジニアとしての基礎知識を学べる基本情報技術者試験や、OSについて学べるLinux技術者認定試験、ネットワーク知識に関するCCNAやCCNPなど、不足している知識を身につけられる資格試験を受験して、サーバーエンジニアとしての知識やスキルを高めましょう。