スキルアップ

基本情報技術者試験とは?難易度や合格率・免除など制度概要について

更新日 2024/04/05

基本情報技術者試験は、2023年4月から通年化されました。このことを受け、今後ますます受験者の増加が見込まれます。そこで今回は、ITエンジニアとして理解しておくべき基本情報技術者試験の試験内容やメリット、合格率、受験までの流れについて解説していきます。

\スキマ時間に案件を見てみる/

基本 情報 技術 者 試験 と は

基本情報技術者試験とは

まずは、基本情報技術者試験とはどんな試験なのかについて概要をご説明します。

資格試験の概要

基本情報技術者試験とは、経済産業省が認定し情報処理推進機構(IPA)が実施する国家資格です。英語ではFundamental Information Technology Engineer Examinationと表記され、略してFEと呼ばれることもあります。

情報技術に携わる人材として、基本的な知識やスキルが備わっているかを問われるもので、ITエンジニアを目指す場合やデジタル人材育成の第一歩として取得されることが多い資格です。全13種類の情報技術者試験の中で、2020年、もっとも早くコンピューターを利用する回答方式(CBT方式)が導入されたことでも、知られています。
メインの受験者は20代〜30代の若いプログラマーやエンジニアですが、特に年齢制限はないため50代、60代の受験者もいます。

50年以上続く情報技術者試験の基礎

基本情報技術者を含む情報技術者試験は、1969年に試験制度が発足しました。基本情報技術者試験は、発足当時にスタートした「第二種情報処理技術者」の流れを汲むITエンジニアの基礎として、今日まで50年以上続いています。

技術の進歩やユーザーニーズなど、時代が大きく変化する中でも半世紀を超えて実施されていることに加えて、出題範囲や難易度が都度見直され、常に最新の技術に対応している試験だといえます。

冒頭でご説明したように、2023年4月から試験が通年化されました。それまでは年2回(春期・4月および秋期・10月)の実施でしたが、回数が増えて受験者にとっては便利になったといえるでしょう。また、午前の部・午後の部などの名称や出題内容も通年化に伴って変更されましたが、その点については後述します。

基本情報技術者試験を受験するメリットとは

基本情報技術者試験の受験を考える中で、受験や資格取得にはどのようなメリットがあるのでしょう。基本情報技術者試験を受験するメリットを見ていきます。

ITエンジニアとしての基本的な知識やスキルが身につく

基本情報技術者試験を受験するメリットとしてまず挙げられるのが、ITエンジニアとしての基本的な知識やスキルが身につくことです。

試験要綱によると、対象者像は「ITを活用したサービス、製品、システムおよびソフトウェアを作る人材に必要な基本的知識・技能をもち、実践的な活用能力を身につけた者」とされています。上司や指導者のもとで実務に従事できるレベルと言っていいでしょう。

ITの基本的な技術に関する知識はもちろんのこと、仕事の進め方や進捗管理の方法、システムのチェックといった管理に関する知識、また企業活動、企業戦略においてITシステムが担う役割など戦略についての知識も求められます。

基本情報技術者には、知識だけではなくスキルも必要です。プログラミングやアルゴリズムについての知識を前提とした、考えさせる問題もあります。その意味で、受験を通して、ITエンジニアとして活動していくために必要な基本的な知識やスキルが身につくといっていいでしょう。

就職や転職に有利

就職や転職に有利になることも、基本情報技術者試験を受験するメリットのひとつです。

近年では、どのような仕事でもITやデジタルの利活用が求められます。ITの知識やスキルがあることを社会的な信頼性が高い国家資格で示すことが可能です。IT人材不足は年々高まる傾向にありますので、就職や転職の時点で取得していれば有利となります。

また、在職中に資格を取得すれば、任される仕事の範囲が広がったり、意見を求められたりと、仕事の進め方に良い影響を与えることも考えられます。

昇格や昇給に資格試験の取得という条件を設ける企業もあります。実際的なところでは、資格手当が支給される場合もあります。就職や転職、在職中おいても、基本情報技術者試験がビジネスパーソンとしての信頼性を向上させると言っていいでしょう。

将来的なキャリアアップのための第一歩となる

ITエンジニアは、キャリアを重ねて得意分野の専門性を高め、スペシャリストとして活躍することも、システム開発全体のクオリティに影響するプロジェクト管理などのマネジメント職にステップアップすることも、可能です。ITエンジニアをきっかけとして、さまざまな方向にキャリアアップできる選択肢の多さも魅力です。

実際に情報処理技術者試験は、長期的にスキルアップできるよう、全13種類の資格試験が体系化されています。ITを利活用するユーザー側の資格として、ITパスポートや情報セキュリティマネジメント試験があり、情報処理技術者としてスタートする足掛かりとして基本情報技術者試験があります。

基本の先に応用があり、応用の上には、高度に専門的な資格群が配置されているという構成です。具体的には、システムアーキテクト試験やネットワークスペシャリスト試験、情報処理安全確保支援士(セキュリティスペシャリスト)などに加えて、プロジェクトマネージャ試験やITサービスマネージャ試験、システム監査技術者試験などからなっています。

基本情報技術者試験の出題範囲と試験内容

基本情報技術者試験は2部構成で、科目Aでは知識が、科目Bではスキルが問われます。試験の通年化に伴い、科目A(午前)と科目B(午後)のように名称変更されたことに加え、科目B(午後)の試験内容も一部見直されました。それぞれの出題範囲を見てみましょう。

出題範囲一覧表

科目A

テクノロジ系 基礎理論 基礎理論
アルゴリズムとプログラミング
コンピューターシステム コンピューター構成要素
システム構成要素
ソフトウェア
ハードウェア
技術要素 ヒューマンインタフェース
マルチメディア
データベース
ネットワーク
セキュリティ
開発技術 システム開発技術
ソフトウェア開発管理技術
マネジメント系 プロジェクトマネジメント プロジェクトマネジメント
サービスマネジメント サービスマネジメント
システム監査
ストラテジ系 システム戦略 システム戦略
システム企画
経営戦略 経営戦略マネジメント
技術戦略マネジメント
ビジネスインダストリ
企業と法務 企業活動
法務

科目B

プログラミング全般に関すること
実装するプログラムの要求仕様の把握
使用するプログラム言語の仕様に基づくプログラムの実装
既存のプログラムの解読及び変更
処理の流れや変数の変化の想定
プログラムのテスト
処理の誤りの特定(デバッグ)
及び修正方法の検討 など
プログラムの処理の基本要素に関すること
型、変数、配列、代入、算術演算、比較演算、論理演算、選択処理、繰返し処理、手続・関数の呼出し など
データ構造およびアルゴリズムに関すること
再帰、スタック、キュー、木構造、グラフ、連結リスト、整列、文字列処理 など
プログラミングの諸分野への適用に関すること
数理・データサイエンス・AI などの分野を題材としたプログラム など
情報セキュリティの確保に関すること
情報セキュリティ要求事項の提示
マルウェアからの保護
バックアップ
ログ取得及び監視
情報の転送における情報セキュリティの維持
脆弱性管理
利用者アクセスの管理
運用状況の点検 など

※参考:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 試験要綱|IPA

科目A(午前)

科目Aの試験時間や出題数などは、以下のとおりです。

  • 試験時間:90分
  • 出題数:60問
  • 出題形式:多肢選択式(四肢択一)
  • 合格基準:600点以上/1,000点満点(科目A・Bとも)

問われるのは知識で、テクノロジ系とマネジメント系、ストラテジ系の3つのカテゴリからそれぞれ出題されます。幅広い知識が必要になりますが、3つのカテゴリが科目A全体の出題範囲に占める割合から、テクノロジ系の比率が高くマネジメント系の比率が低いと予測可能です。

基本情報技術者試験の合格基準は両科目とも600点以上とされ、科目Aでの各カテゴリの基準点は設定されていません。例えばマネジメント系が苦手な場合は、ストラテジ系で多く得点できるようにするなどの工夫ができるでしょう。

なお、公式サイトでテクノロジ系に含まれるセキュリティが重点分野だと明らかにされています。セキュリティに関しては、技術面と管理面の両方が問われるともされていますので、よく準備しましょう。

科目B(午後)

科目Bの試験時間や出題数などは、以下のとおりです。

  • 試験時間:100分
  • 出題数:20問
  • 出題形式:多肢選択式
  • 合格基準:600点以上/1,000点満点(科目A・Bとも)

科目Bについては、試験の通年化に伴い試験時間や出題内容が変更されました。変更の目的は午後問題のコンパクト化と説明され、具体的には試験時間の短縮と選択問題の廃止が実施されています。

試験時間は150分から100分へと約1時間短縮され、出題数は11問中5問を選択し回答する方式から20問全問への回答が必須となりました。以前は個別のプログラミング言語による問題がありましたが、今後は疑似言語を用いてプログラミング的な思考力があるかを問うとしています。

科目Bで求められるのはスキルです。出題範囲は、プログラミングとデータ構造、アルゴリズム、セキュリティとされていますが、アルゴリズムとプログラミング、情報セキュリティの2つの分野を中心とした内容に変更すると公式サイトに記載されています。それぞれ出題割合は、8割と2割とされています。重点が分かっていれば、対策が可能です。

なお、2020(令和2)年度から基本情報技術者の過去問題は非公開となっていますが、試験内容の変更に伴ってサンプル問題(※)が公開されています。

※参考:基本情報技術者試験 科目 B サンプル問題|IPA

基本情報技術者試験の合格率と難易度

基本情報技術者は、長期間にわたって実施されている資格試験です。合格率や難易度にどのような変化があるのか見てみましょう。

合格率の推移

日経クロステック(※)によると、2020年度から合格率が約2倍に上昇したとしています。それまでは20%台で推移していたものの、CBT方式に全面的に移行したことが関係し40%台へと変化したのではないかと推測しています。その関係性は定かではありませんし、一時的なもので終わる可能性もあります。

基本情報技術者試験の合格率は、受験者にのみ期間限定で公開される仕組みです。一般的に公開されていないものの、合格率はおおむね20~30%の間で推移していると推測されていました。難易度としては、決して低いほうではありません。

今後、受験を検討している、または予定している場合、合格率が40%台のまま推移することを期待せず、しっかりと準備を進めると良いでしょう。

※参考:「基本情報技術者試験」の合格率が2倍以上に増加中、その理由を探る | 日経クロステック(xTECH)

関連資格との比較

基本情報技術者の受験を考える際、よく比較される資格がITパスポートや情報セキュリティマネジメント試験、応用情報技術者試験です。いずれもIPAによって実施され、経済産業省が認定する国家資格です。

ITパスポートは、ITを日常的に利活用する一般ユーザー向けにITの基本を問う試験だといえます。合格率や受験者数が公開され、合格率が約50%と2人に1人が合格することから、難易度は低めの資格だといっていいでしょう。受験者の30%弱は学生です。

ITパスポートと同様に、一般ユーザーを対象とする試験に情報セキュリティマネジメント試験があります。ITを日常的に利活用する中で、どのようなリスクや危険がどのような場所に潜んでいるか、万が一被害に遭った際にどのようにすれば被害を最小限に食い止められるかといったことについて学びます。

それに対して応用情報技術者は、基本情報技術者試験の上位に位置づけられている試験です。基本情報技術者試験に合格してから、挑戦するのがいいでしょう。

基本情報技術者試験申し込みと受験・免除制度・学習方法について

ここでは試験の申し込みや受験、試験の免除制度、リテイクポリシーに加えて基本情報技術者試験の学習方法について見ていきます。

申し込みから受験まで

試験の申し込みから受験までの流れを確認しましょう。通年で実施されるCBT方式の試験の場合、「利用者ID登録」「受験予約」「受験」という3つのステップがあります。

  1. 利用者ID登録(アカウント作成)
  2. 受験予約
  3. 受験

まずは、利用者IDを登録します(マイぺージアカウント作成)。利用者IDの登録を終えたら、試験会場と日程、受験料の支払い方法を選択しましょう。日程は申込日から3ヵ月後まで選択可能で、支払い方法には、クレジットカードとコンビニ店舗での支払い、バウチャーの3つから選びます。支払いが確認されたら、確認票をダウンロードしておきましょう。確認表を用意の上、試験当日に会場へと足を運んで受験します。

なお、バウチャーとは、受験料の支払いに利用できる電子チケットのことです。バウチャー購入のメリットは、キャッシュレス決済ができることと自分のスコアを後日画面で詳しく確認できることだといえます。

免除制度とリテイクポリシーについて

基本情報技術者試験には、科目Aの免除制度があります。IPAが認定する講座を修了することが条件です。有効期限は修了から1年間で、その間であれば科目Bのみ何度でも受験できます。認定講座は企業や学校などで開講されています。

通年化に伴って、リテイクポリシーも公開されました。リテイクとは、再受験のことです。受験した日の翌日から31日目以降の試験であれば、再受験が可能となります。スキルを求められる科目Bに集中したい場合は、科目Aの免除制度を利用するメリットがあるといえるでしょう。

効率的に学習するために

IPAでは、基本情報技術者試験の過去問題やサンプル問題を公開しています。効率的に学習を進めていくには、忘れずに確認しておきましょう。

基本情報技術者の過去問題は、上記試験のうち2009(平成21)年から2019(令和元)年度分まで、22回分が公開されています。どのような問題が出題されているか確認することもできるでしょう。ぜひ活用してください。

過去問題のほかにも、スクールに通ったり、書籍を購入したりなど、学習方法にはいくつかの選択肢があります。学習時間の目安は、受験勉強を始めるまでに身につけている知識やスキルによって大きく変わりますが、50~200時間といわれています。予算や確保できる学習時間などに応じて、自分に合ったものを選びましょう。

基本情報技術者試験概要

基本情報技術者試験の概要は以下のとおりです。

科目A(午前) 科目B(午後)
試験時間 90分 100分
出題数 60問 20問
回答形式 CBTによる四肢択一式 CBTによる多肢選択式
出題分野 テクノロジ系
マネジメント系
ストラテジ系より出題
アルゴリズムとプログラミング
情報セキュリティ
合格基準 科目AおよびBにて
総合評価点600点以上/1,000点
受験料 7,500円(税込)
開催 随時
会場 全国

まとめ

基本情報技術者試験は、ITエンジニアとしてキャリアをスタートする際に役立つ資格です。ITシステムやサービスなどを構築するITエンジニアに欠かせない、基本的な知識やスキルが身につきます。有資格者という肩書きを得て社会的な信頼感を高めましょう。

 

フリーランスエンジニアの案件紹介ならTECH STOCK!

TECH STOCKは直受け案件・高単価案件が豊富なフリーランスエンジニアの案件紹介サービスです。案件獲得のためのフォローアップも充実!初めての案件探しをサポートします。

関連する記事

おすすめの記事

スキルアップ
JavaScriptの資格4選!難易度・取得のメリット・勉強法を解説

JavaScriptの資格取得には、自身のスキルを明示できる、ポートフォリオが充実するなどのメリットがあります。本記事では、JavaScriptの資格にはどのようなものがあるのか、資格の概要や試験の費用、難易度や取得するメリット、勉強法について詳しく解説します。

\JavaScript案件多数!/

スキルアップ
Webエンジニアに資格は必要か?おすすめの資格19選

Webエンジニアにとって転職やキャリアアップで重視されるポイントは、スキルや経験です。職務経歴書などで概要は伝えられますが、より詳しいスキルレベルを伝えるには資格の取得が有効な手段となります。もちろん、資格取得のための学習もスキル習得に有用です。

しかしながら、Webエンジニアの業務に関連する資格は非常に多く、どれを選ぶべきか迷うかもしれません。本記事では、Webエンジニアに関係する資格を整理して紹介します。担当分野別におすすめ資格をあげていますので、参考にして頂ければ幸いです。

\システムエンジニア案件多数!/

スキルアップ
システムエンジニアになるために何を勉強する?勉強方法と資格の選び方

将来性の高さを見込んで、システムエンジニアに転身することを検討している方は少なくありません。システムエンジニアになるまでの道のりは長いものの、学習のための教材は豊富にあり、学習を始めるハードルは低いといえます。

そこで本記事では、システムエンジニアになるために必要な知識や勉強方法、資格についてご紹介します。

\システムエンジニア案件多数!/