業界別IoT事例特集!IoTに必要なエンジニアスキルも解説!
IoT市場が活発です。2016年に1.4兆ドルといわれていた、IoT市場は2020年には3兆ドルを超えるとも予想されており、AppleやGoogle、Facebookといった、世界的に有名なIT企業も相次いで参入しています。
日本でも、東芝などの製造業を中心に、幅広く注目されている技術です。
また、最近ではヘルスケアの分野でも盛んに導入されており、この動きを無視することは大きなビジネスチャンスを逃すことになるでしょう。
しかし、IoTとはいったい何なのでしょうか。定義や事例などから、今後の動きや将来性についてまとめてみました。
IoTとは
IoTの定義
IoTとは「Internet of Things」の略称であり、日本では「モノのインターネット」と解釈されています。
ここでいう「モノ」とはいったい何を指すのでしょうか。
この「モノ」の定義は非常に曖昧です。消費者という立場からすると、多くの家電と考えられますが、ビジネスの現場では、工場の機械も「モノ」といえます。物流の分野でしたら、トラックや運んでいる荷物が、小売りや外食の現場では、そこで働いている人や扱っている商品が、それぞれ「モノ」と表現できるでしょう。
こうしてみると、「インターネットが取り扱える物体は何でも」と定義できそうです。
日本における著名なコンサルタントである大前研一氏は「IoTとはセンサーを組み込まれたものが、インターネットによって繋がるようになったことを指す」と説明しており、世界中がインターネットで繋がる世界ともいえるかもしれません。
一部では「IoE(Internet of Everything)」とも呼ばれており、モノを管理する・データをとる・情報を解析するといったことを通じて、新しいサービスが世界中で生まれているのです。
IoTの仕組みを示す3ステップ
IoTが広まると、どうして新しいサービスが生まれるのでしょうか。
ここでは、IoTの仕組みを見ていくことで、その概要をつかんでいきます。IoTの仕組みは主に3つのステップから出来上がっています。
- モノの情報を取りに行く
- 取った情報の蓄積・解析
- 解析データを元にネクストアクションへ
IoTを考える上で最も重要なのは、「情報(データ)」です。モノの情報は、センサーやモニターを利用することで、「温度」「湿度」「場所」「速度」など、様々な情報・データを得ることが出来ます。
このモノからの情報・データが、IoTの出発地点といえるでしょう。そして、この情報やデータを、インターネットを介して、保存場所に移動させ蓄積し解析していきます。
多くの場合、データは1つだけでは意味を成しません。
ある程度の量が集まって、初めて傾向や考察が生まれます。そして、この傾向や考察を基に、ネクストアクションに繋げていくのです。
つまり、IoTとは、今まで人間の手では量が取れなかったデータを、モノにセンやモサーニターを付けることで量を確保し、そうして蓄積・解析したデータを用いてビジネスに活用していくというもの、ということが出来ます。
M2Mとの違い
モノの情報をセンサーやモニターを使って蓄積し活用していくと聞くと、M2Mと同じではないかと考える人もいるかと思いますが、IoTとM2Mは違う概念で出来上がっています。
M2Mでは、機械の情報は閉じた世界であり、それ以上の広がりはありません。機械同士のセンサーネットワークを活用し多くの情報を手に入れ、そこで解析するのみです。
しかし、IoTの場合、得たデータはインターネットを通じてさらに多くのモノや人と繋がることが出来ます。
M2Mでは、機械同士の制御された情報やデータを取り扱うのに対し、IoTはもっとカオスとでもいうべき情報を扱っていくことになります。
M2Mによるデータ収集は、環境がコントロールしやすい工場や研究施設、あるいは機械のみの空間で出来上がっているもの(例:自動車など)には大きな力を発揮しますが、環境が変化しやすい日常生活の情報やデータや、人体と関係するデータなどはIoTでなければ、十分に活用できないのです。
IoTはなぜ注目されるようになったのか
IoTが注目されるようになった最大の理由は、「つなぐこと」がビジネスチャンスそのものであることがわかってきたためです。
例えば、FacebookやX(旧Twitter)といった、人と人とをつなぐSNSと呼ばれる仕組みは、その仕組み自体が大きな価値を持つことがわかっています。
また、つなぐといえばインターネットもそのひとつでしょう。他にも、道という点では、鉄道や道路も大枠では「つなぐこと」の一部といえます。
IoTは、動くモノや小さなモノを24時間絶えずモニタリングすることでコストを大幅に下げることに成功しました。
「モノとインターネット」が繋がるというのは、それだけでビジネスチャンスとして注目されているのです。
IoT事例
続いて、IoTの事例についてみていきましょう。具体的な事例があると、理解しやすいものです。
IoTは様々な分野に浸透してきていますが、今回は、「家電・医療・製造工場・スマートシティ・農業」の5つの分野に注目してみます。
家電のIoT事例
私たち、消費者という視点からすると、家電というのは非常に身近であり、また新しい技術を理解する上で大きな助けになります。
家電のIoT事例として、2つ挙げます。
まずは、人気が高いスマートフォンと連動した「電子鍵」です。
「キュリオ Smart Lock」と呼ばれ、玄関の鍵として利用することができます。
この家電は、スマートフォンと連動させ専用のアプリケーションを導入することにより、家の鍵を出すことなく、開閉が出来ます。その他にも鍵をオートロック化、利用履歴を確認が出来ます。
利用履歴について補足すると、例えば、離れた場所に住んでいる祖父母のヘルパーが、何時にきて何時に家を出たのかも、確認することができます。
2つ目は「Matchdor LED音楽電球」です。
「Matchdor LED音楽電球」なら、家にいる時に、ステレオをどこに置くかという悩みから開放されます。
スピーカーと電球が一体化されており、スマートフォンを使って何を流すか決めることが出来るのです。更に、電球の色や明るさも、スマートフォンで調節できます。
おしゃれでハイテクな音楽ライフを楽しむことができます。
医療のIoT事例
医療現場においてIoTは大きく期待されています。
今回ご紹介するのは、大塚製薬とNECが共同で開発した「服薬支援容器」です。
人は様々な病気にかかりますが、毎日決まった時間に飲み続けなければいけない薬があります。
例えば、脳梗塞の薬や精神病の薬や睡眠に関する薬です。こうした薬が、長期間にわたり連続して処方されている場合、半年間、医者の言いつけを守って適切に服薬できている人は、全体の50%に満たないといわれています。
この状況を改善するために生まれたのが「服薬支援容器」です。一見、1回ごとの服薬量が出てくる単なる薬の箱のように見えますが、「飲む時間をアラームで伝える」「服薬履歴が残る」といった仕組みと連動させ、「見守り家族にメールで通知」「薬剤師が履歴をリアルタイムで履歴を確認する」「医者が履歴を確認し、今後の治療につなげる」といった形で、治療のためのサポートへつなげていきます。
製造工場のIoT事例
製造工場におけるIoTの目的は、作業効率化にあります。どうして、IoTを導入すると、作業効率化に繋がるのでしょうか。
IoTでは、「データをモニターやセンサーで蓄積していく」と前述しました。このように聞くと、エネルギー使用量を見える化できるのではないか、と思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
まさに、最も多い事例が、このエネルギー使用量の見える化です。これまでも多くの工場で、省エネルギーのために、エネルギー使用量の見える化を進めてきました。
しかし、多くの場合、工場全体のエネルギー使用量までで終わってしまっており、個々別々の生産ラインや機械やロボットひとつひとつのエネルギー使用量といった、非常に細かいデータが取れず、具体的な削減施策に結びつかないという問題が出ていたのです。
IoTによるデータであれば、ひとつひとつの機械やロボットのエネルギー使用量がリアルタイムでモニタリングすることが出来ます。更に専門的なセンサーネットワークを構築できれば、時系列や季節による変動、あるいは生産量や稼働時間といったクロス集計を行っていくことで、見える化からの具体的な省エネルギー施策に繋げることができます。
スマートシティのIoT事例
スマートシティ構想というものが、時々新聞を賑わせていますが、残念ながら、スマートシティとしては、日本はあまり具体的な動きは行われていません。
ここでは、アメリカの先進事例としてのアトランタを見ていきましょう。
アトランタでは、2016年から、治安向上や生活の質の拡充のために、都市内全体にIoT技術を積極的に導入しています。
例えば、「シティIQ」と呼ばれるLED街灯では、単に明かりをつけるだけでなく、人の動きや流れ、あるいは量を逐次データセンターに送っています。
このデータに基づいて、通学時間に合わせて車の速度制限を行ったり、車の通行量が少ない道路の横断歩道では、歩行者に合わせて信号を瞬時に調整したり、といった施策が行われているのです。
こうした仕組みによって、人々はより快適に都市生活を進めていくことが出来ると期待されています。
農業のIoT事例
農業のテクノロジー化は、21世紀に入る前から大いに注目されていました。農業従事者の数が少なくなり、さらに日本では高齢化も深刻な問題となってきているため、今まで以上に農業に効率化を求める必要があるのです。
農業において、現在最も進んでいるIoTは環境データの収集です。天気予報による天気の違いだけでなく、温度や湿度の問題、さらに日射量や日射角度などのデータを収集し、最も効率的な農業はどのようなものか、何を作り、何を育てることでより効率的に農業を進めていくことが出来るかといった具体的な施策を生み出しています。
取り付けるだけで、湿度や温度を感知し、水の量を調整するといったテクノロジーも導入されています。
IoTにおける必要なエンジニアスキル
IoTを利用した製品を作り出そうとする場合、組み込み系エンジニアとWeb系エンジニアの2種類の知識や経験が必要になってきます。
ただ、製品を作るだけではいけませんし、同時にインターネットの回線にだけ強いという場合でも、IoT開発は不十分です。
もし仮に、どちらの知識も得るチャンスがあれば、今後幅広いフィールドで活躍できるでしょう。
国レベルで、IoTエンジニアの需要が増してきており、「一般社団法人 高度ITアーキテクト育成協議会」と呼ばれる組織が、「トップアーキテクト」と呼ばれる、ソフトウェアにもハードウェアにも強いエンジニアを育成すべく活動しています。ぜひ参考にしてみてください。