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フリーランスに開業届は必要か?受けられるメリットや提出方法などを解説【個人事業主】

更新日 2024/11/11

「フリーランスになりたい」と考えて、調べている人であれば、一度は「開業届」という言葉を目にしたことがあるかもしれません。フリーランスになるためには、開業届やその他関連書類を税務署や都道府県税事務所に提出する必要があります。

本記事では、開業届とはどんな書類なのか、開業届の提出方法、開業届を出すメリットやデメリットなどをご紹介します。

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荒川一磨

この記事の監修者

荒川会計事務所代表

荒川一磨

勤務時代は公認会計士事務所2箇所、税理士事務所1箇所にて個人・法人を合わせて300以上の会計・税務・決算申告業務に携わる。
規模も個人事業からプライム市場(東証1部)上場企業まで幅広く担当。
新宿にて独立開業後は、上場企業や中小企業の一般的な会計事務所業務…

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開業届とは

開業届は正式名称を「個人事業の開業・廃業等届出書」といい、所得税法によって定められた書類です。廃業のときにも使われる書類ですが、開業時に申請する際の書類は俗に「開業届」とよばれます。

開業届は所得税に関する書類

事業を開始する際には、開業届を事業の開始等から1か月以内に税務署に届けることが義務となっています。所得が発生すると、国に所得税を納めることが必要です。開業届は、国税に関する業務を行う税務署に対して開業したことを知らせるものなのです。

開業届を出す人の対象となるのは、事業所得、不動産所得または山林所得を新たに生む事業を開始した人であり、フリーランスも対象となります。

開業届と「個人事業税の事業開始等申告書」との違い

開業届と似た書類に「個人事業税の事業開始等申告書」があります。これは地方税である個人事業税に関する書類であり、都道府県税事務所に提出するものです。開業届と混同されがちであることから注意が必要です。

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フリーランスが開業届を出すことで得られるメリット

フリーランスが開業届を出すことには、メリットもデメリットもあります。まずはメリットからご紹介しましょう。

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メリット1:社会的信用が高まる

開業届には事業で使う名前である「屋号」を記載でき、開業届を提出された後は、仕事においても屋号での取り引きが可能になります。フリーランスとの取り引きに消極的なクライアントは存在しますが、開業届を提出していることで、クライアントからも信頼を得やすくなります。屋号の変更はいつでも可能で、税務署に届け出る必要はありません。

また融資を受ける際や補助金・助成金の申請時には、金融機関や主催者から必要書類として、開業届の控えの提出を求められるケースがあります。支援を受ける際は、期限が迫っている場合も考えられるため、そういった場合にも、前もって開業届を出していれば対処が可能です。

なお開業届の控えは申請時に受け取れるほか、再発行もできます。
※2024年(令和6年)6月時点の情報です。

メリット2:小規模企業共済に加入できる

開業届を出していると、小規模企業共済に加入できます。

小規模企業共済とは

小規模企業共済とは、小規模な企業の経営者や役員などに向けた退職時や廃業時などに給付金が受け取れる制度で、開業届を出したフリーランスも活用できます。開業初年度に小規模企業共済に加入する場合には、開業届の控えが必要です。

小規模企業共済の3つのポイント

小規模企業共済は、フリーランスに役立つポイントが3つあります。

1つ目は、掛金を積み立て、退職時や廃業時に受け取れることです。掛金は1,000~70,000円まで500円単位で自由に設定でき、加入後も増額・減額が可能です。銀行の定期預金などのように、満期や満額といった概念はありません。

2つ目は、確定申告時に掛金を「小規模企業共済等掛金控除」として申告できることです。控除により、所得税の負担を軽減できます。

3つ目は、共済独自の貸付制度です。貸付制度は2種類あり、申し込みがしやすく比較的早めに貸付が受けられる「一般貸付」、特別な事情がある場合に利用できる「特別貸付」があります。

参考:小規模企業共済とは | 独立行政法人 中小企業基盤整備機構

このようにフリーランスに役立つポイントがあるため、開業時にはチェックしておきたい制度です。

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国や自治体は、中小企業や小規模事業者を支援する補助金・助成金・給付金の制度を用意しています。これらは返済の義務がないのが大きなメリットで、各制度の条件を満たせばフリーランスや個人事業主でも利用可能です。

この記事では、資金援助を希望するフリーランス・個人事業主のための補助金・助成金・給付金を紹介します。(一覧に給付金は含まれていないため、必要に応じて各自治体や関連機関のウェブサイトをご確認ください。)

補助金や助成金を活用する際のメリット・デメリットや申請時のポイントに加えて、税負担を軽減できる税制優遇措置や支払い猶予についても解説しているので、ぜひ確認してみてください。

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メリット3:屋号で銀行口座を開設できる

開業届を出すと屋号で銀行口座を開設できます。屋号付きの銀行口座があるとその屋号で事業を行っている証明となり、「個人とのやり取り」という印象が薄くなります。

また屋号付きの銀行口座があると、プライベートのお金と明確に分けることが可能です。そのため、会計処理もしやすくなります。

※一部の銀行では開業届の控えがなくても屋号で銀行口座を開設することが可能です。

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本記事ではフリーランスや個人事業主に屋号は必要なのか、屋号の決め方やメリットを解説し、フリーランスエンジニアの屋号のネーミング例も紹介します。

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フリーランスが開業届を出すことによるデメリット

一方で、開業届を出すと失業手当を受け取れなくなる可能性や扶養から外れる可能性はあります。

デメリット1:失業手当が受けられなくなる可能性がある

会社員などの経験があり、退職して雇用保険の失業手当(俗にいう失業保険)を受けている場合、開業届を出すと失業手当が受けられなくなります。失業手当を受ける条件のひとつに「失業の状態にあること」があり、「開業届を出す=働ける状態」と見なされるためです。

ただし、雇用保険の一つである「再就職手当」は開業届を提出した後も受け取れる可能性があります。支給額や受給要件は細かく定められているため、厚生労働省のサイトをご参照ください。

参考:再就職手当のご案内

デメリット2:健康保険組合の扶養から外れる可能性がある

いわゆる家族の扶養に入っていても、開業届を出すことは可能です。ただし健康保険組合に家族として加入している場合には注意が必要です。

健康保険組合によっては、開業届を出し起業した時点で加入が継続できなくなるところもあります。その場合には、国民健康保険に加入して自分で保険料を納付するなどの手続きが必要です。一方で年収が一定額を超えていなければフリーランスでも加入できる健康保険組合もあります。

開業届を出す前に、加入している健康保険組合の要件をチェックしておきましょう。

青色申告とは

開業時に考えたいのが、確定申告の青色申告についてです。

青色申告について

青色申告は所得税の申告方法のひとつです。所得税の申告方法には青色申告と白色申告があり、白色申告よりも青色申告の方が税の優遇が受けられます(詳しくは後述)。

「所得税の青色申告承認申請書」を提出すると、確定申告において青色申告を行えるようになります。帳簿や書類などは原則として7年間、ものによっては5年間保存することが必要です。

開業届と同時に提出がおすすめ

上記で、開業届を出すメリットについても紹介しましたが、その開業届と同時に青色申告に必要な「所得税の青色申告承認申請書」を提出すると、申請が一度で済みます。

青色申告はフリーランスにとって大きな節税対策となるため、早めの申請がおすすめです。

No.2070 青色申告制度|国税庁

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本記事では、個人事業主になるにはどうすればいいの?という疑問にお答えします。開業に必要な手続きや個人事業主になるメリット・デメリットについて解説。また、「サラリーマンのまま個人事業主になれるの?」「主婦(主夫)が個人事業主になるのはどうすればいいの?」という疑問にもお答えしますので、これから個人事業を本格的に始める方の参考になれば幸いです。

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フリーランスが青色申告をするメリット

青色申告は、一般的に複式簿記という専門知識が必要な記帳方法を用いなければならない点が、人によってはデメリットとなりえます。しかし、青色申告は節税効果を得られるという大きなメリットがあります。

メリット1:所得控除が最高65万円になる

青色申告で確定申告をする場合は「青色申告特別控除」を受けることができ、条件を満たせば所得控除が最高65万円になります。その条件は下記の通りです。

条件1.事業所得や不動産所得が発生する事業を営んでいること
条件2.複式簿記で記帳していること
条件3.確定申告書に、貸借対照表と損益計算書を添付していること
条件4.確定申告の期限内に申告すること
条件5.電子帳簿保存またはe-Taxによる電子申告を行うこと

上記の条件1~4を満たせば控除額は55万円、条件1~5全てを満たせば控除額は65万円となります。

参考:65 万円の青色申告特別控除

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【税理士監修】フリーランスの確定申告ガイド!手続&必要書類など徹底解説【2024年版】

フリーランスとして独立するとき、あるいは副業をするときに最も悩むと言っても過言ではないのが、税金に関することです。

ニュースで「芸能人による所得税の申告漏れ」が取り上げられたときには、「もしや自分も?」と思い背筋が凍ってしまうかもしれません。帳簿付けは、それまで会計に関わる業務を行っていなければ難しく感じるものです。特に確定申告については注意が必要です。

この記事では確定申告について、フリーランスだからこそ注意したい点も踏まえてご紹介します。

※以下は、2023年4月時点の情報をもとに作成しています。

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メリット2:赤字を繰り越せる/所得税の還付を受けられる

事業所得に赤字があり、控除を適用しても赤字となる場合には、純損失として赤字を3年間繰り越すことが可能です。特定非常災害による損失の場合には、条件を満たせば赤字は5年間繰り越せます。赤字を繰り越して翌年以降の黒字と相殺すれば、翌年以降の所得を減らすことができ、節税につながります。

または前年度も青色申告をしている場合、赤字分を前年に繰り戻し、所得税の還付を受けることも可能です。

メリット3:家族への給与を経費にできる

年齢が15歳以上で、青色申告者と生計が同じ配偶者や親族が事業を手伝っている人のことを「青色事業専従者」といいます。青色申告適用下では、この青色事業専従者に支払った給与を「青色事業専従者給与」として必要経費にできます。言い換えると、家族への給与を経費にできるということです。

家族への給与を経費にするためには、「青色事業専従者給与に関する届出書」を期間内に、税務署へ提出する必要があります。なお青色事業専従者は、確定申告時の控除対象である控除対象配偶者や扶養親族になれないことには注意が必要です。

メリット4:貸倒引当金を一部経費にできる

事業を遂行するなかで、売掛金や貸付金が回収できず、貸倒れとなってしまう場合もあります。青色申告を行う場合には、年末に残っている売掛金、貸付金などに対して合計額の5.5%以下の金額を、「貸倒引当金繰入」として必要経費にすることが可能です。これにより一定の節税効果を得られます。

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開業届を出さない場合はどうなる?

開業届を出さない場合、じつは罰則はありません。しかし後々損をする可能性があります。

罰則やペナルティはない

開業届を業務の開始等から1か月以内に税務署へ提出することは、税法上は義務となっています。しかし提出しなくても特に罰則やペナルティはありません。そのためフリーランスや副業を行っている人のなかには、開業届を出さないまま業務に携わる人もいます。

しかし開業届は出さなくても、確定申告と納税の義務はあります。特に開業届を出さないまま事業をしていて、なおかつ所得が大きい場合には確定申告を忘れないよう注意が必要です。

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フリーランスとなって順調に利益が出せるようになってくると、納めるべき税金の額を見て「多い……」と感じるシーンも出てくるでしょう。また、個人事業主のままでいると、「法人化(法人成り)」するよりも税金を多く支払い続けることになるかもしれません。
そこで、法人化するかどうか悩んでいる、事業を成長させるために節税対策を検討したいという方に向けて、フリーランスが法人化するメリットやデメリットについて解説していきましょう。
※本記事ではフリーランス=個人事業主として記載しています。

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補助金・助成金が申請できない可能性はある

開業届を出していない場合、必要書類が揃わないために補助金・助成金が申請できない可能性があります。補助金・助成金によりますが、申請する際に条件として開業届の控えや契約書類、請求書、支払明細書といった就労の証明となる書類が必要となることがあります。

過去、新型コロナウイルス感染症が流行した際には、開業届を出している人のみを対象にした補助金もありました。不測の事態に備える意味でも、開業届を出すことを考えたいところです。

その他、就労証明がないことによる不利益

自治体によっては、保育園の申し込みや継続の際に、就労証明書(別名:在職証明書、就業証明書など)が必要となるケースがあります。就労証明書は文字通り、働いていることを証明するもので、自治体が保育園入園の選考材料として使う重要な書類です。雇用契約の場合は会社がその社員の就労を証明しますが、フリーランスの場合は自ら記入することになります。その証明のひとつとして、開業届の控え(コピー)を就労証明のひとつとして提示することも可能です。

ほかにリース契約においても就労証明が必要な場合があります。たとえば、カーリースでは基本的には収入証明が不要ですが、フリーランスが審査を受ける場合にはなんらかの証明を求められるケースも考えられます。

フリーランスの就労証明のひとつとしても、開業届を出す意義はあるのです。

開業届を提出するタイミング

開業届は所得税法第229条により、事業を開始してから1か月以内に税務署長宛てに提出しなければならないと定められています。

参考:所得税法 | e-Gov法令検索

基本は義務であるため、法令順守の観点からすれば事業開始時の提出が望ましいといえます。ただし提出しなかった際の罰則はなく、また過去の日付の開業届でも税務署で受け付けてもらえるため、後から提出することも可能です。開業届を出さないままでは屋号での銀行口座開設などのメリットを享受できないため、遅くなったとしても開業届を出すのがおすすめです。
また未来の日付の開業届も提出が可能です。開業予定が確定しているのであれば、先に開業届のみ提出してもかまいません。
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フリーランス始め方ガイド~フリーランスを目指す方が読むべき記事をまとめてご紹介~

働き方が多様化する近年、フリーランスエンジニアという選択肢を取る方が増加傾向にあります。勤務時間や場所を自由に働くことが可能である、年収をアップさせることができるなど、成功すると多くのメリットが得られます。

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開業届を提出する流れ

個人事業主として開業届を提出する流れを順にご紹介します。

参考:A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁

提出方法

提出方法は、大きく分けて下記の3種類があります。

  • e-Taxで提出:e-Tax上で書類を作成し、提出
  • 郵送で提出:書面で提出
  • 窓口で提出:税務署に行き、書面で提出

e-Taxでの提出ではe-Tax上で書類を作成し、提出します。本人確認書類の添付が不要で、自宅で申請が可能という点がメリットです。

郵送の提出や窓口の提出では、書類を準備して送付または税務署に持参します。特に税務署に持参する場合には、不明点は税務署にいるスタッフや税理士に即時確認できる点がメリットといえます。書類のフォーマットは国税庁のサイトからダウンロードが可能です。

ほかに、開業届をオンライン上で提出できる会計ソフトもあります。

必要な書類の準備

開業届に記載する内容を考え、書類を準備します。開業届を出す場合には、青色申告が可能となる「所得税の青色申告承認申請書」や、従業員と同等の家族がいる場合には「青色専業者給与に関する届出書」を同時に出すと良いでしょう。

書類 記載内容
開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)
A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁
納税地、住所、屋号、代表者氏名、事業内容、生年月日、届け出の区分、開業/廃業日
※納税地は一般的に住所地
所得税の青色申告承認申請書
A1-8 所得税の青色申告承認申請手続|国税庁
納税地、氏名、職業、屋号、事業所、所在地、所得の種類、簿記の種類ほか
青色専業者給与に関する届出書
A1-11 青色事業専従者給与に関する届出手続|国税庁
納税地、氏名、職業、専従者の氏名、続柄、仕事の内容、従事の程度、給与ほか

開業届の提出後

開業届の提出後は、それぞれ下記の通りとなります。

  • e-Taxの場合:受信通知を受け取る。e-Taxでは税務署の収受日付印が押された控えをもらえないため、開業届のデータとともに受信通知を印刷・保存しておく必要がある
  • 郵送の場合:返信用封筒を入れておけば、収受日付印が押された控えを郵送してもらえる
  • 窓口提出の場合:その場で控えに収受日付印を押してもらえる

以上で開業となります。

※2025年(令和7年)1月より申込書控えへの収受日付印の押なつは実施されなくなる予定です。

参考:令和7年1月からの申告書等の控えへの収受日付印の押なつについて|国税庁

まとめ

フリーランスが開業時に提出する開業届についてご紹介しました。開業届は、フリーランスとして活動している場合だけでなく、副業を行っている場合にも役立つものです。

税務署への届け出をこれまで行ったことのない人にとっては難しく感じるかもしれませんが、開業届や関係する書類の提出に際してサポートを行っている自治体もあります。一度お住まいの自治体のWebサイトやe-Taxを参考に、開業届提出のイメージをつかんでみるのはいかがでしょうか。

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