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近年、企業内の生産性向上を図り、RPAという自動化の仕組みが注目を浴びています。金融・医療業界ではRPA導入の事例が増加しており、導入支援を実施するコンサルファームやSIerも増加し始め、RPA事業が加速し続けております。
以前に本サイトでも、「RPA」と「人」を比較しながら 、それぞれのメリット・デメリットについて説明させていただきましたが、この記事では、RPAとは何かという概要から導入する上でのメリットや他のITシステムとの違いなどをご紹介し、企業がこぞって導入するRPAとは何なのかというものの理解を深めて頂くものとなっております。

※以前の記事については、こちらからご確認ください。

目次

1.RPAとは?

RPAとは、「Robotics Process Automation」の略称であり、今まで人手で行っていた定型業務(データの入力や登録、データの収集や統合といったパターン化された業務)、いわゆるホワイトカラー業務をソフトウェアが代行で自動化する仕組みや取り組みのことを指します。また、それだけでなく、RPAツール本体やRPA業務自動化ソリューションといったサービスをRPAと略して呼ぶこともあります。

1.なぜ今RPAなのか

そもそも、上述したような定型業務の自動化という取り組みにおいては、以前(約20年前)から実在しておりました。ではなぜ近年になってRPAに注目が集まっているのか、その社会的背景を触れておきましょう。

BPO業務の衰退
RPAは2016年の後半から国内では一気に注目を集め始めたものの、欧米諸国の金融機関は既に先行して注目を集めていました。
業務効率化の一環として、企業の運営上の業務やビジネスプロセスの一部を外部の専門的な企業に委託することで業務の効率化を図るBPO(Business Process Outsourcing)が2000年代に盛んに推進されていました。コスト削減を目的として、委託コストが安価な国へのBPOを推進する企業が多くいたものの、近年になるにつれ、委託していた国の人件費の高騰によってコスト削減の効果が薄れてきてしまっていました。そのため、新たなコスト削減や委託するためのソリューションが必要となり、RPAの注目が集まりました。

国内による「働き方改革」への対応
高齢化と労働人口の減少による労働力の確保が進められていることと、いわゆる「働き方改革」による残業時間の減少が求められる昨今となっております。すなわち、労働人口が減少する一方で一人あたりの生産性をあげるための取り組みが必然となります。その解決策として、ホワイトカラー業務と呼ばれる定型業務を自動化することを得意とし、人手で行っていた事務作業、場合によっては作業時間を70%短縮できた、作業速度が5倍になった、といった導入効果の高さからRPAが注目されています。
また、RPAツールが利用者にとってもより使いやすく、導入が容易となったことで、RPAが注目され利用されるケースが増える要因ともなっております。画面や操作方法が改善されて、PC操作を代替するための記録・実行が容易になりました。

2.導入メリット

RPA導入の目的について上述でご説明しました。次にRPAを導入することによるメリットをご紹介します。RPA導入のメリットとして、ホワイトカラー業務の人員削減だけでなく、残業抑止による働き方改革の実現や、生産性の向上や自社コア業務への専念による競争力の向上があります。

①ヒューマンエラーの削減によって常に高いレベルの業務品質を提供
人間による手入力や手作業は、長時間の作業などによる集中力の低下からミスが発生します。しかし、RPAは一定のルールに基づいて作業を行うためヒューマンエラーが大きく軽減され、ミスがなく高品質な成果物の提供を可能とします。

②作業処理速度の向上による処理件数の増加
人間と比較した場合に圧倒的に作業の処理速度は速く(速いものでは、人間と比較して処理速度が20倍以上といわれている)、1日に処理できる作業の件数が飛躍的に増加します。

③付加価値の高い自社のコア業務への人員の増員が可能
定型事務作業や単純なPC操作の作業に時間を割かれる必要がなくなり、自社のコア業務領域にリソースを割くことが可能となり、自社の生産力や競争力の強化への貢献が期待されています。

④24時間365日フル稼働による残業抑止や人員削減
24時間365日フル稼働で働き続けることが可能であり、残業による退職リスクもなく、モチベーション管理も必要ない、そして何より業務スピードが向上することによる人員の削減も実現できるため、費用対効果は抜群です。


3.AIや他のITシステムとの違い

では、近年注目を浴びているAIや今まで企業に導入されてきたITシステムとはどういった違いがあるのでしょうか?

AIとRPAの違いについて
AIとRPAでは人間の作業を自動化してくれるシステムという位置づけではあるものの、AIは自己学習機能をもち、自らがルールを考え見つけ出して判断し設定することが可能です。一方、RPAは人間が行う操作を一定のルールは人間が判断して設定するものであり、RPAで作成したシステムも人間側によるメンテナンスが必要となります。なお、RPAは3段階のクラスに分けられ、クラスが進むにつれて、自ら考えて判断することができる、いわゆる自律型AIと呼ばれるレベルに至ることになるため、RPAの中にAIが含まれるといえます。

AIと他のITシステムとの違いについて
また、今まで企業に導入されてきたITシステムとRPAとの違いにおいて、RPAは自動化するにあたり、ノンプログラミングで実現することが可能です。プログラミング作業は、様々なパターンを想定したプロセスを事前に決定するため、膨大な時間とコストが必要となります。しかし、ノンプログラミングによる自動化は、業務プロセスの把握のみで実装が可能であるうえ、業務フローが変化しても簡単に修正を加えることができる上、導入企業の業務担当者が開発~運用まで可能です。さらに、RPAは自動化できる対象が幅広く、複数のアプリケーションやITシステム間の連携が可能であり、一括で業務システムの自動化を実現することで、他のITシステムと比較しても費用対効果は非常に高いといえます。


4.RPAツールの主要製品紹介

現在、RPAツールは国産・海外製は数十種類存在しており、各RPAツールで共通した機能・特徴と独自で持っている機能・特徴を備えております。そのため、自社のニーズに適用するRPAツールの選定は容易ではありません。そこで今回は、RPAツールの構成について、RPAツールの代表的な5つの製品とベンダーの選択基準について、取り上げてご紹介します。

1.RPAの構成

RPAの構成として、「サーバー型」と「クライアント型」の2種類が存在します。サーバー型は、個々のソフトウェアロボットをサーバーで集中管理する方式を指します。RPAのシナリオは、サーバーアプリケーションが提供するスケジューラーなどを使って実行します。
これに対し、クライアント型では個々のソフトウェアロボットをクライアントPCにインストールして実行します。シナリオの実行中に、ダイアログの選択やファイルの指定といった人間の判断や処理を介在させることができるため、業務部門の担当者が自身の事務作業を自動化し、業務効率化を実現する用途に向きます。

2.RPAツール

・Blue Prism
概要
:2001年に設立された英Blue Prsim社が提供するRPAツールであり、RPAを世界で初めて「RPA」という概念を提唱した先駆者です。同社は2017年7月に東京に拠点を構え、日本市場での活動強化に取り組んでいます。

構成・特徴
:構成は、「サーバー型」であり、大量のソフトウェアロボットによる作業で生じる大量のトランザクションに対応が可能です。ロードバランシングや暗号化、監査などの機能を提供しています。
:特徴は、主に金融や医療分野を中心に導入実績があり、PCI-DSSやHIPPA(Health Insurance Portability and Accountability Act)、SOX法(サーベンス・オクスリー法)といった法規制に対応し、金融や医療分野での導入時に要求される高度なセキュリティを実現できます。

・Automation Anywhere
概要
:米Automation Anywhere社が提供しているRPAツールであり、米Forester Researchの調査では、世界第1位の評価スコアを獲得し、RPA市場において、Blue Prism社とUiPath社の3社がリーダーを担っております。
:世界には認定された技術者が1万人以上おり、収益面においても最大のRPAプロバイダーであります。

構成・特徴
:構成は、Blue Prism同様に「サーバー型」であり、高いITセキュリティを確保するような仕組みを備えており、バックオフィス系の業務に強いです。
:特徴は、なんといっても機械学習と自然言語処理技術を使った「IQBot」と呼ぶボットを利用した作業の自動化であります。RPAが得意とする一定のルールに従った業務だけでなく、機会学習を用いた柔軟な動作を実現できます。

・UiPath
概要
:UiPath社が作成したRPAツールであり、2017年8月に本社機能をニューヨークに移し、現在ではニューヨークやロンドン、日本などで活動を広げつつあります。

構成・特徴
:構成は、前述したBlue PrismやAutomation Anywhereとは違い、ハイブリッドであること、つまり、「クライアント型」のようにクライアントPCのデスクトップの面倒な業務を自動化することも可能であり、「サーバー型」として集中管理も可能であり、スモールスタートから大規模運用までの拡張性を備えております。
:特徴としては、構成でも述べたように運用範囲が非常に広く、金融・医療業界での利用が特に多いです。またオリジン開発においては、録画機能だけではなく、Microsoftの統合開発環境「Microsoft Visual Studio」と同様のUIを提供しているため、直観的なワークフローであり、効率よく作業の向上を実現させています。

・WinActor
概要
:WinActorは日本で作られた純国産のRPAツールであります。NTTアクセスサービスシステム研究所が開発し、NTTアドバンステクノロジが商品化、NTTデータが導入支援を実施しております。

構成・特徴
:構成は、「クライアント型」となっているものの、NTTデータにより管理・統制用ロボットが新しく開発され、ソフトウェアロボットやシナリオをサーバー上で一元的に管理・統制できるようになりました。
:対象を特定することができる画像解析技術があります。この機能により、操作性の高いフローチャート作成が可能です。
また、純国産の日本製であり、日本語表記の設定作業のため、技術習得のハードルが低く、利用部門の担当者でも扱えるほか、ベンダー側の支援技術者が豊富にいることも特徴です。

・BasicRobo
概要
:日本での知名度も高いRPAツールの1つであり、RPAテクノロジーズが「BizRobo!」シリーズとして提供している製品の一つとなります。

構成・特徴
:構成は、「サーバー型」となっており、金融分野を中心に、小売、旅行・運輸、製造、医療、政府などで利用されております。
:特徴は、WebやExcel、他のITシステムによる処理を複数のロボットが同時並行稼働で実行できるという特徴を備えております。
また、Webスクレイピング技術から発展してできたツールであり、他の RPAツールと比較してもWebブラウザ操作自動化において操作性に優れております。日本語のシナリオ開発や設定マニュアルが用意されているほか、録画機能に加え、「スニペット」と呼ばれる部品を活用することで、開発生産性の向上を図っています。

出典:RPAツール、主要5製品を比較分析(3ページ目) | 日経 xTECH(クロステック)

3.RPAベンダーを選ぶ基準

現在、RPAツールが多数登場しており、どうやってRPAを選定するのか、RPAツールそれぞれの特徴と対象業務の特性を併せて検討しなければなりません。導入する上で留意する例として以下の4点が挙げられます。

・自動化対象とする業務で何を操作するのか(Webシステムかクライアント/サーバー・システムか/Office製品のみの操作か/仮想環境で提供されるアプリケーションか、など)
・オペレーションの途中で、人の判断が必要か
・過度にベンダーに依存せず、シナリオ作成やメンテナンスを利用部門自らコントロール可能か
・セキュリティレベルに関してはどこまで必要なのか(システムアクセスのための認証情報などをどこに保持するか、など)

5.RPA導入事例について

実際にRPAを導入したことによる効果を他社の導入事例を用いてご紹介します。

①20種類のRPA導入により8,000時間分の事務処理作業を削減
・RPA導入企業
三菱UFJ銀行

・課題
:1時間おきに社内システムにアクセスしてデータを取得し、チェックしたデータをエクセルにコピーするというような煩雑な事務処理作業が多く、業務が非効率で担当者の負担が大きく効率化をしたいが、ITシステムを導入するにはコストがかかりすぎるという理由で、やむなく手作業を継続してきた

・対応内容
:PCを用いて、一定のルールに基づいて行われる作業にRPAを導入。
:一定の時間ごとの処理が求められる業務では、データをチェックする時間を定めて自動化を実施。

・導入効果
:20種類の事務作業において、年間で8,000時間(1日8時間で計算すると、約1,000人日)分の事務処理作業削減に成功。
:事務処理を担当していた社員から重要な作業に時間を割けるようになったという声が上がっている。
:複数のシステムを利用して行っていた事務処理に適用することで、システム連携による業務の単純化も視野に入れることができた。

出典:【参考】RPA(ロボットによる業務自動化)とは | RPA テクノロジーズ株式会社 

②RPA導入で日々の証拠金照合業務が8時間から20分へ削減
・導入企業
みずほフィナンシャルグループ

・課題
:当初は帳票の電子化が検討されてたが、取引会社数が多いために開発コストが大きくなることや、従来型の OCR(光学文字認識技術)では十分な効果が期待できないという問題があり、代替のソリューションを検討していた。

・対応内容
:画像認識技術の活用で、検討の結果、IBM Cloud プラットフォーム上で、IBM Watson™️のAPIの一つである Visual Recognition (以下、Watson VR) と OCR 技術を活用したRPA自動照合システムを導入

・導入効果
:これまで 4人がかりで 2時間かかっていた照合作業が、 2人で 5~10分で実施できるようになった

出典:クラウド + 自動化 + IBM = お客様が求める変革の実現 - IBM THINK Business – Japan

③年間約5,700時間分のPOSデータのダウンロード作業を自動化
・導入企業
サッポロビール株式会社

・課題
:某小売業のビールや乙類焼酎など20種類以上あるカテゴリーのあるPOSデータを1つずつ毎日ダウンロードする必要があり、さらに某小売業傘下に複数のグループ企業を抱えており、企業ごとに、同じ操作を繰り返す必要があった。しかし、次第にPOSデータをダウンロードする対象となる企業が増えてきたため、全カテゴリーの日次データ取得は困難になった。

・対応内容
:ウェブサイトの自動巡回(クローリング)によって自動でPOSデータを収集する業務をRPAで自動化

・導入効果
・年間約5,700時間分の作業を自動化
・全てのデータを収集できるようになり、きめ細かい分析や提案が可能となった
・繰り返し作業から解放された担当者は、営業支援業務の方へシフト
・年間の事務コスト削減は約1,100万円となり、導入コストは1カ月未満で回収

出典:POSデータダウンロード自動化ソフト「Autoブラウザ名人」ご導入事例-サッポロビール株式会社様

6.まとめ

さて、いかがでしたでしょうか。 最後までご覧いただきありがとうございました。
最後に、RPA導入のメリットでお伝えしましたが、人員削減といったコストカットという目的はもちろんのことですが、残業抑止による働き方改革の実現で社員のモチベーション管理の実現、自社の生産性向上や自社のコア業務への専念による競争力の向上が期待することができます。

また、プログラマーやエンジニアでないとできないITシステムとは違い、ノンプログラミングによるシナリオ作成であり、なおかつなおかつ簡易で短期的に導入できるため、業務担当者が自動化の仕組みを作成することができます。そして今後AIが発展していく上での足掛かりでもあるRPAは、多くの企業での実用が増え始めているということでした。当記事を読んで、RPAについての理解や興味を深めて頂けましたら幸いです。

執筆者:古屋 太輔