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企業の生産性向上の最適な方法とは~人とRPAどちらを選ぶ?~

更新日 2024/10/08

少子高齢化による労働人口減少および人件費の高騰などにより、近年「生産性向上」に対する取り組みが不可欠となってきています。
公益財団法人日本生産性本部の発表によると、OECD加盟諸国の中で日本の労働生産性は35カ国中22位となっており、世界で戦える競争力を強化するためにも「生産性向上」は重要な課題であるといえます。
従来よりも少ない人数で生産力を高めるための手段として、現在RPA(ロボットによる業務自動化:Robotics Process Automation)が注目を集めています。
2017年の調査では国内では14.1%の企業が導入済み、6.3%が導入中、19.1%が導入検討中でした。市場規模は2017年度で31億円、2021年度には100億円規模になると予測されています。
そこで本記事では「RPA」と「人」を比較しながら 、それぞれのメリット・デメリットをご紹介したいと思います。

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生産性向上とは

まず「生産性向上」とは何か、簡単に説明します。 「生産性」とは生み出された成果や価値と、その成果や価値を生み出すために投入された資源量の比率のことで、 生産性 = 産出(Output)/ 投入(Input)という式で表せます。
例えば従業員数(Input)3人の生産量(Output)が150個だとすると、一人当たりの生産量(生産性)は50個であると言えます。
「生産性向上」とはこの値を大きくすることです。

産性向上の利点

生産性を向上させると質の高いアウトプットに繋がり、費用対効果が高くなります。
このような企業側にとっての利点だけではなく、被雇用者側にとっても労働時間が削減されることで時間を有意義に使うことができ、さらなるモチベーション向上に繋がります。
社会全体として見ても、労働人口が減少傾向にある現在、先述したように一人当たりの労働時間に対する国民生産性は先進国の中でも低く、うつ病や過労死などの社会問題の一要因となっています。生産性を向上させることで、このような社会問題の解決にも繋がります。

生産性向上の方法

生産性向上に向けて、本記事で言及するアプローチ方法は二つあります。
一つ目が組織内の「人」の生産性の向上、二つ目が「RPA」を用いた生産性の向上です。

人による生産性向上

まず人による生産性向上の方法について見ていきます。

組織ベースの生産性向上の方法

組織で心がけなければいけないことは、「従業員が熱中できる環境を整える」ことです。
人は熱中すると時間を忘れてひたすら没頭し、高揚感に包まれます。
このように、取り組んでいる対象に自分自身の心理的エネルギーが100%注がれている状態を「フロー体験」と呼びます。
「フロー体験」は自分自身の能力を最大限に発揮して取り組むため、自分の能力そのものとより複雑なものに取り組む力が向上し、この繰り返しによって成長に繋がります。
「フロー体験」をさせるために企業が組織で取り組むべきことは4つあります。

  1. 適切な難易度の仕事を与える
    従業員の能力と照らしあわせ、それをやり通すことでその自分の能力が向上するような難易度の仕事を与え、全能力を出しきることを要求します。
  2. 対象への自己統制感を抱かせる
    取り組んでいる仕事に対して、運頼みではなく自分の頭を駆使してコントロールできるという感覚や可能性を感じさせることが重要です。
  3. 直接的にフィードバックを行う
    取り組んでいる仕事に対し即座に「良いか、よくないか」フィードバックを行うことで、従業員の軌道修正や、モチベーション向上につながります。
  4. 集中できる職場作り
    大手人材会社の事例では、アメーバ型のデスクを取り入れることでチームの垣根を超えた協力体制が出来るようになり、カラフルな絨毯や置物の設置などデザイン性のあるオフィス作りを行うことで、楽しく集中できる環境になったと言います。

RPAによる生産性向上

次にRPAによる生産性向上の方法について見ていきます。

RPAとは何か

「RPA」とはロボットによる業務自動化のことで、従来人の手作業で行われてきた定型的なPC操作を、ソフトウェアのロボットを用いて自動化・効率化する取り組みです。

RPAでできること、できないこと

RPAでできることは、定型業務を的確にこなすことです。RPAは複数アプリケーションの連携を必要とする単純作業を得意としています。ルールエンジンや画像認識、座標取得、業務フロー管理などの機能が搭載されており、実際の現場では

  1. 売上伝票や領収書、請求書データなどの処理業務
  2. 過去データの分析と予測による受発注業務
  3. アンケート用紙のデータ入力作業・集計作業
  4. 従業員の勤怠管理・長時間残業に対する自動警告
  5. 競合のWebサイト巡回による情報収集とマーケティング
  6. 顧客情報の管理・分析
  7. 見込み客の洗い出し、販促メッセージの自動作成

など様々に活用されています。 RPAは判定基準や対処方法を細かく設定しておくことで様々なイレギュラーに対応することができる一方で、設定されていないイレギュラーに対しては対応することができません。

導入方法・コスト

具体的なRPAの導入方法についてですが、以下のプロセスが必要です。

  1. 導入目的を明確にする
  2. 自社のRPA対象業務を明確にし、RPAに置き換える業務を選別する
  3. RPAツールの中から自社の条件に合うものを選定する
  4. 導入後のエラー予測と対応方法の検討
  5. 試験導入・分析
  6. 本格導入
  7. 導入の効果検証・見直し

コストに関しては各社ツールによって差がありますが、 国内シェアNo.1のWinActorでは1年あたりの年間利用料(保守料含む)は標準価格90万8,000円(税抜)程度であり、グローバルシェアNo.1のBlue Prismでは3年契約で年間最低利用料が標準価格1200万程度となっています。
企業の提示する条件によって値段やプランが変わってくる為、一度問い合わせる必要がある場合が多いです。

RPA企業導入事例

RPAの得意分野は定型業務であるということから、取り扱い企業としては大量に定型業務が存在する銀行がイメージしやすいと思います。
しかし銀行以外の一般的な企業でも、数多くの企業がRPAを導入しています。
大手保険会社では2万7000時間分の業務をRPAで代替したという事例があります。ツールはBlue PrismとAutomation Anywhereを導入し、本格導入までには18ヶ月かかっています。本格展開となった現在は、時間に換算すると55人分(10万時間)を自動化するべくロボット開発を進めています。
大手食品メーカーでは卸会社からの販売情報の転記作業の効率化を行いました。以前は約100社の卸会社からエクセルで送付される販売報告情報を手作業でエクセルに転記していました。RPA導入により、卸会社の入力項目がずれていてもRPAが入力項目と入力内容を特定して転記してくれるので、現在運用試験中のため効果は未確定ですが5営業日かけて4人がかりで行っていた作業がほぼなくなる見込みです。

RPA導入によるメリット・デメリット

「RPAによる生産性向上」のメリットは、取り組みの成果が目に見えやすく、ロボットによるものなので、より確実な成果が得られることです。
デメリットは、導入に至るまでにコストや時間がかかってしまうことです。

両者の比較と提案

ここまで述べてきた特徴や、メリットやデメリットを踏まえつつ、両者の比較をしていきます。

目的別の比較

生産性が低いと一言で言っても、必ず企業ごとに生産性が低くなってしまっている理由があります。
それに対する打ち手の例として、業務内容の効率化によるコア事業への取り組み強化、コミュニケーション増加や集中力向上などのモチベーションアップ等が挙げられます。 まずは自社の「生産性が低い理由」を明確にし、それぞれの課題に即した対策をしていくことが重要です。
自社の生産性が低い理由について考えたときに、コミュニケーションの減少、集中力の低下などに起因するものであれば「人」に着目するべきで、業務が煩雑で、集中すべき業務に集中できていないのであれば「RPA」の導入を検討しても良いのではないでしょうか。

コスト比較

コストの比較 自社にRPAに回せるような資源があるかどうかも重要なポイントです。 RPA導入にかかるコストを踏まえた上で、慎重に検討することが求められます。
自社に資金がない場合はまずは「人」に着目した生産性向上に着手し、資金に余裕がある場合は「RPA」導入を検討してみても良いのではないでしょうか。

効果の比較

先述したように「人による生産性向上」と「RPAによる生産性向上」の効果の可視性には差があります。 RPAは導入に時間がかかるものの、導入後の効果は見えやすいです。
一方で人による生産性向上はすぐに取りかかることが可能なものの、取り組み開始後の効果は見えづらく、個人差も生まれやすいです。手早く実践したい場合は「人」に着目し、より確実に効果を実感したいという場合は「RPA」に着目しても良いのではないでしょうか。

まとめ

「生産性向上」は今や多くの企業が抱える問題です。
どのようにすれば自社の生産性が上がるのか? この問いに答えるためには「自社の課題が何なのか」正確に把握していなければなりません。
まずは自社の課題をブラッシュアップし、自社の目的や資源を考慮しつつ、打ち手を考えていくことが重要であると言えるでしょう。

 

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