IoTデバイスやITサービスの普及により、ビッグデータと呼ばれる多様で膨大なデータを収集できるようになりました。このビッグデータを企業のマーケティングや商品開発、業務改善などのビジネス活動に貢献させるべく、分析するのがデータサイエンティストです。 今回の記事ではデータサイエンティストの仕事内容や必須スキル、年収を解説したうえで、データサイエンティストになる方法についても紹介します。
AI人材とは?種類や求めるべきスキル、効果的な育成方法を解説

AI人材とは
そもそも、AI人材とはどのような人材を指すのかみていきましょう。ここでは、AI人材の概要と、混同されやすいIT人材との違いについて解説します。
AI人材とはどのような人材か
AI人材とは、機械学習やディープラーニング(深層学習)、データサイエンスなどに関する知識と技術を持ち、AIシステムを構築・運用したり、技術を改善したりする人材のことです。その特性上、AI人材は理系のイメージが強いですが、プロジェクトを進めたりAIの導入を推進したりする文系の人材も求められています。
近年、さまざまな分野でAIの活用が進むにつれ、AI人材の育成や獲得が企業にとっても、国家にとっても急務と考えられています。既にアメリカではAI人材育成のために教員を養成する計画が発表されたり、中国ではイノベーション創出に関わる人材を育成するプロジェクトがスタートしたりしています。
IT人材との違い
AI人材と混同されやすいのがIT人材です。AI人材がデジタル・IT技術の中でもAIに関する知識や技術に特化している人材なのに対し、IT人材は、情報サービス業やITソフトウェア・サービスの提供事業に従事する人たちから、企業の情報システム部門の従業員まで、より広い範囲の人材を指しています。
また、問題解決に寄与するのがAI側か人間側かという違いもあります。AI人材の場合は、問題解決するのはAIであり、人間はAIが問題解決するための手伝いをするという認識です。一方、IT人材の場合、問題解決するのは人間であり、ITツールはあくまでも処理スピードを早めたり、合理的にしたりするための手段として使われます。
AI人材が重要視される理由
上記のように、AI人材は企業の成長にも、国家の成長にも必要な存在として重要視されています。その理由を、3つのポイントからみていきましょう。
- 人材不足
- AI技術の将来性
- 少子高齢化への対策になる
人材不足
AI関連技術の急速な普及や発展に伴い、AI人材が求められるようになったことで、AI人材の不足が顕著になりました。経済産業省によれば、AI/IT人材の不足は2020年の約37万人から、2030年には約79万人に拡大すると予測されています(※)。AI関連技術は製造業や小売業、医療、農業、物流など非常に多くの分野で活用されているためです。
AI人材が求められる一方で、戦力となりうるAI人材は現状、その育成が難しいとされています。後述しますが、AI人材には機械学習やディープラーニングの知識のほか、ビッグデータを活用するためのプログラミングやデータサイエンスの知識や技術も求められるためです。政府主導でスキル認定制度などの運用が開始されていますが、今後もAI人材の不足はしばらく続くでしょう。
※ 参考:経済産業省「AI人材育成の取組」
AI技術の将来性
AI関連技術はまだまだ発展途上であり、AI技術そのものの将来性が見込まれることも、AI人材の重要性を高める一因です。現在は第3次AIブームの時代と呼ばれ、インターネットやスマートフォンの普及でビッグデータの蓄積が進んでいます。企業が生み出すサービスにも、業務システムにもAI技術が使われるようになってきました。そのため、世界中の国家と企業がAI技術の将来性に期待しています。
少子高齢化による人材不足への対策になる
AI技術の発展は、少子高齢化による人材不足と生産性の低下を食い止める役割も期待されています。日本を含め多くの先進国では、少子高齢化による労働力不足、それによる生産性の低下、ひいては社会機能の低下が懸念されており、生活レベル維持のためにAI技術が欠かせません。
例えば、AI技術を活用した新人教育、行政サービスへのAI技術の導入などがあげられます。さらに、行政が提供する健康管理アプリケーションにAI技術を取り入れ、高齢化に伴って健康寿命を延ばそうとする取り組みも既に始まりました。
このように、AI技術によって暮らしが豊かで便利になれば、少子高齢化社会においても十分な生産性を確保し、社会機能を維持できるでしょう。少子高齢化時代に労働力不足を補い、生活レベルや社会機能を維持するためにも、AI技術を扱えるAI人材の重要性がますます高まっています。
AI人材の種類
では、AI人材にはどのような種類があるのでしょうか。まず、独立行政法人情報処理推進機構による「IT人材白書2019」が定義する、以下3つのAI人材の種類について解説します。
- AI研究者
- AI開発者
- AI事業企画
AI研究者
AI研究者は「AIを実現する数理モデル(AIモデル)についての研究を行う人材」と定義されています。AI関連の分野で博士号などの学位を持つなど、学術的な素養を備えた上で研究に従事していて、AIに関する学術論文を執筆・発表したり、自身の研究領域に関する学術論文に日頃から目を通したりしているような人材です。
実務としては、AIの処理速度や精度を高めるための研究を行ったり、さまざまな研究に基づいて実装レベルに活かせるアルゴリズムを開発したりします。論文の執筆・発表や読み込みに英語を使うことも多く、大学や研究所に所属するほか、企業に所属しながら研究・開発を行う研究者もいます。
AI開発者(エンジニア)
AI開発者はいわゆるエンジニアのことで、「IT人材白書2019」ではエキスパートレベルとミドルレベルが想定されています。
- エキスパートレベル…AIモデルやその背景となる技術的な概念を理解した上で、ソフトウェアやシステムとして実装できる(学術論文を理解できるレベル)
- ミドルレベル…既存のAIライブラリなどを活用し、AIを搭載したソフトウェアやシステムを開発できる
AI開発者は、製品やサービスに搭載されるAI技術を実装あるいは開発する人材です。そのため、AIについての技術的な知識があることはもちろん、製品やサービスを使う顧客の行動や市場における慣習なども理解した上で、ソフトウェアやシステムの実装・開発を行わなくてはなりません。
AI事業企画(プランナー)
AI事業企画はプランナーと呼ばれることもあり、AIを活用した製品やサービスを企画する立場です。「IT人材白書2019」ではエキスパートレベルとミドルレベルが想定され、以下のように定義されています。
- エキスパートレベル…AIモデルやその背景となる技術的な概念を理解した上で、AIを活用した製品・サービスを企画し、市場に売り出せる(学術論文を理解できるレベル)
- ミドルレベル…AIの特徴や課題などを理解した上で、AIを活用した製品・サービスを企画し、市場に売り出せる
AI事業企画は、システムやソフトウェアなどを扱う企業に所属することが多い人材です。エンジニアと比べて技術的なスキルはそれほど求められませんが、プロジェクトの管理・進行のためコミュニケーション能力が重視されることから、文系のAI人材として注目されています。
経営層、従業員にもAIに理解がある人が必要
前章では「IT人材白書2019」で定義されるAI人材について解説しました。しかし、前章で解説したAI人材の定義からは外れるものの、AIの活用のため求められる人材がいます。ここでは、経営層やデータサイエンティストなど、その他のAI人材について解説します。
- AIに理解がある経営層
- AIツールでデータ分析ができる従業員
- 自社へのAI導入を推進できる従業員
AIに理解がある経営層
AI関連の事業を進めたり、内部システムにAIを導入したりするためには、経営層の理解が欠かせません。AIの導入やDX推進、デジタル化など事業や企業体制の変革が成功している企業の多くは、トップである経営層がこれらの事業や体制に理解を示し、しっかりと舵取りをしていることが多いです。
AIツールでデータ分析ができる従業員(データサイエンティスト)
データを分析、整理するなどしてビジネスに活用するのがデータサイエンティストです。AI人材では特にAIツールを活用してデータの分析や評価ができる人材のことを言います。データサイエンティストは、AIモデルやデータ分析手法ごとの特性を理解した上で、場面に応じて適切に使い分けなくてはなりません。
現在、データサイエンティストは慢性的な人材不足とされており、データサイエンティスト協会によれば、採用の現場において「目標としていた人数を確保できなかった」と答えた企業は58%にのぼります(※)。
※ データサイエンティスト協会「データサイエンティストの採用に関するアンケート調査結果」
自社へのAI導入を推進できる従業員
自社の内部体制にAI導入を推進できる人材も必要です。主に現場における自社の課題や可能性を分析し、どこにどういったAI技術を導入すれば企業としての成長につながるか見極めます。また、そのスキルと同時に、AI導入に関するプロジェクトを推進するマネジメント力が求められます。
AI人材に求めるべきスキル
AI人材と一口に言っても、業種によって求められるスキルは異なります。そこで、AI人材に多く求められるスキル別にその概要をみていきましょう。
- プログラミング
- データサイエンス
- 機械学習、ディープラーニング
- 論理的思考力
- デジタルリテラシー
プログラミング
プログラミングスキルは、主に開発者(エンジニア)に求められるスキルです。特にAI技術の分野ではPythonというプログラミング言語がよく使われているため、AI人材の育成を考えているならまずPythonを学んでもらうのが良いでしょう。機械学習やデータ解析などツールの開発や、各種アプリケーションの開発にも用いられています。
Pythonのほかにも、C言語やPHP、JavaなどITエンジニアとして需要の高い言語もAI開発に活用できます。そのため、社内にこれらの言語が使えるITエンジニアがいる場合は、AI人材として育成もしやすいでしょう。
データサイエンス
データサイエンスのスキルは、主に研究者やデータサイエンティストに求められるスキルです。統計学や情報工学、アルゴリズムなどの手法を使い、収集したさまざまなデータから新たな知見やビジネスに有意義な情報を引き出します。特に近年のAI技術活用にはビッグデータが必ず関わってきますので、データサイエンスを扱える人材は必須です。
さらに、引き出した情報をどう扱うか考えるのもデータサイエンティストの仕事です。どういった結果が欲しいのかということから逆算し、どのようなデータをもとにどういったロジックで結果を導き出すのかを考えることもあります。ビッグデータを扱いやすいよう整形する「データクレンジング」などの作業も求められるでしょう。
機械学習、ディープラーニング
現在広く普及している、AI技術の代表的な領域です。そのため、機械学習やディープラーニングに関する知識は、AIプロジェクトに関わるすべての人に必須と言えます。機械学習とは、AIにデータを読み込ませてパターンや法則を見つけ出すこと、ディープラーニングは、機械学習をコンピューター自ら行うようにしたものです。
専門的なスキルは研究者や開発者に求められますが、基本的な知識はどのAI人材であっても備えておく必要があるでしょう。
論理的思考力
AIにおける機械学習やディープラーニングで重視されるのが、論理的思考力です。AIに携わるすべての人に求められるスキルと言えるでしょう。機械学習やディープラーニングを行う際、どのような規則性や法則性を指標として学習させるのか、それによってどのような結果を得るのか考えるために、論理的な思考力が求められます。
デジタルリテラシー
デジタルリテラシーとは、コンピューターで扱うさまざまな情報について適切に理解し、活用できるスキルのことで、これもAI人材すべてに必要なスキルと言えます。デジタルリテラシーを表す言葉として、デジタルリテラシー協議会によって「Di-Lite」という言葉が定義されました。
Di-Liteは「ITソフトウェア領域」「数理・データサイエンス領域」「AI・ディープラーニング領域」の3領域にまたがる言葉です。今後DX化やAI技術の普及が進んでいくと予測されるビジネスの分野において、すべてのビジネスパーソンが持つべき共通のリテラシーとされています。
AI人材の育成方法
上記のように重要性の高いAI人材ですが、採用によって確保しようとするのがなかなか難しいのも事実です。そこで、社内でAI人材を育成する方法について、課題とその解消法、育成ステップに分けて解説します。
AI人材育成における課題
まず、AI人材育成においてどのような課題が考えられるでしょうか。以下で3つのポイントを紹介します。
育成プラン立案の負担
AI人材を社内で育成するとき、育成プランを立案するという業務が、人事担当者の負担になってしまうリスクがあります。既存事業を行いながら、育成プランの立案も行わなくてはならないためです。人的リソースを育成に割くことで、既存事業に従事できる人的リソースが減ってしまったり、担当者の負担が増えて業務負荷が深刻化したりすることが懸念されるでしょう。
また、そもそもAI人材が何人くらい、どのようなスキルを持った人材が必要なのかわからないという企業も少なくありません。社内でAI人材を育成するためには、育成プランを立てる前に、まず必要な人材を洗い出す必要があります。
実務に活かせる教材が見つけにくい
現場で活かせるAI技術育てるための教材が少ないことも、AI人材の育成における大きな課題の一つです。実際の事例に基づくケーススタディが最も有効ですが、実務に立ち入るようなAI技術の教材はまだまだ多くありません。
そもそもAI技術自体が発展途上であり、実務に活用されているケースがまだまだ少ないことを考えれば仕方のないことですが、できるだけ実務に活かせる教材を使う必要があります。
スキルアップが難しい
実務で活かせる教材が少ないこととも関連しますが、スキルアップできるような案件が都合よく見つからないことも、AI人材の育成に立ちはだかる課題です。実務に活かせるスキルを身につけるためには、実際に業務を行いながらスキルを習得していかなくてはなりません。そのためには、AI関連プロジェクトそのものをスキルアップのために利用するケースもあるでしょう。
AI人材育成の課題を解消するために
では、上記のようなAI人材育成の課題を解消するためには、どのような解決策が考えられるでしょうか。ここでは、3つのポイントに絞って解説します。
自己学習
育成プラン立案のために社内リソースが割かれてしまう課題を解決するための策として、自己学習を推奨する方法があります。従業員自ら自己学習を行えば、社内で担当者が育成プランを一つひとつ立てていかなくても、ある程度までは学べるでしょう。例えば、既に作成された動画コンテンツを視聴したり、プログラミングコードを演習形式で埋めていったりするツールがあります。
ただし、自己学習はあくまでも初心者や入門者レベルのスキルを身につけるためには有効ですが、一定以上のスキルを持つ人には期待したほどの効果が出ない可能性もあります。ある程度のスキルを自己学習で身につけたら、後述する外部研修やスキルアップにシフトしていきましょう。
外部研修を取り入れる
外部研修は実務に活かせる教材が見つかりにくい課題を解決してくれるでしょう。特に、ワークショップでディスカッションやロールプレイングを通じて課題解決やビジネスプランの立案に取り組んだり、実務で発生している問題を題材にしながら行う演習形式で学んだりする方法は、AI人材の中でも中級者〜上級者に向いている育成方法です。
求めるゴールと必要なスキルを見極める
スキルアップしにくいという課題を解決するためには、企業の求めるゴールとそれに必要なスキルを見極め、学習するスキルを絞ることも役立つでしょう。あれもこれもとやみくもに学ぶスキルを増やしても、本人の負荷や育成コストがかかるばかりで、実務に活かせるスキルは身につきません。
スキルアップを主目的としてプロジェクトを始動する場合は特に、どのようなスキルが必要で、スキル習得のために活かせるプロジェクトかどうかよく検討しましょう。
AI人材育成のステップ
AI人材育成のおおよそのステップを、一例として紹介します。
- 1年目
・育成計画やプランを作成し、育成対象者を選抜する
・入門レベルの知識習得と、自社ビジネスへの適用案を考えるため、研修を行う - 2年目
・プロジェクトの進め方を学んだり、プログラミング言語や論理的思考、機械学習などの基礎スキルを学んだりする
・ディープラーニングなどの基礎を学び、自社データを活用した実証を行う - 3年目
・AIプロジェクトに着手し、案件に必要な個別の応用スキルを習得する
・ビジネス成果につながる、2〜3の成功事例を生む
ここであげたのは一例ですが、AI人材として成果を上げられるようになるまでに3年程度かかるという認識が一般的です。AI人材の育成期間をどのくらい取ればいいのか悩んでいる場合は、3年間が目安になるでしょう。
まとめ
AI人材には研究者、開発者をはじめさまざまな種類があり、需要の増加に伴って採用は困難を極めています。AI人材を確保するためには、社内で育成するのも一つの方法です。自己学習ツールや外部研修を取り入れるなどして、自社に必要なスキルを持ったAI人材を育てましょう。
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