スキル・知識

AI人材とは? 種類や必要なスキル、効果的な育成方法を解説

更新日 2024/10/30

近年、ChatGPTなどの生成AIが誕生し、AIは発展を続けています。その中で、AI関連技術を扱えるAI人材の需要はますます高まっています。しかし、一口にAI人材と言っても、AIを開発するエンジニアからプロジェクトの企画者、研究者など、業務内容は多彩です。

ここでは、AI分野への進出を考えている企業の担当者様へ向けて、AI人材の種類や必要なスキル、社内での育成方法について紹介します。

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AI 人材

AI人材とは

そもそも、AI人材とはどのような人材を指すのか見ていきましょう。ここでは、AI人材の概要と、混同されやすいIT人材との違いについて解説します。

AI人材とはどのような人材か

AI人材とは、機械学習やディープラーニング(深層学習)、データサイエンスなどに関する知識と技術を持ち、AIシステムの構築・運用や、技術の改善を行う人材のことです。その特性上、AI人材は理系のイメージが強いですが、プロジェクトの進行やAIの導入を推進する役割として、文系の人材も活躍することができます。

近年、様々な分野でAIの活用が進むにつれて、AI人材の育成や獲得は企業だけでなく、国家にとっても重要な課題と考えられています。既に、アメリカではAI人材育成のために教員を養成する計画が発表され、中国ではイノベーション創出に関わる人材を育成するプロジェクトがスタートしています。

AI人材とデジタル人材との違い

AI人材と混同されやすいのがデジタル人材です。中小企業庁の「中小企業白書(2023日年版)第2部第3章」では、デジタル人材を『(独)情報処理推進機構(IPA)「DX白書2021」のデジタル事業に対応する人材の分類等を参考とし、デジタル人材を「デジタル化の戦略を推進する人材」と「デジタル化の技術を担う人材」の二つに分類し』と定義しています。
AI人材がデジタル・IT技術の中でも特にAIに関する知識や技術に特化している人材であるのに対し、デジタル人材は、情報サービス業やITソフトウェア・サービスの提供事業に従事する人たちから、企業の情報システム部門の従業員まで、より広い範囲の人材を指します。

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AI人材が重要視される理由

上記のように、AI人材は企業の成長にも、国家の成長にも必要な存在として重要視されており、今後もAI人材の需要は高まり続けていくと予想されています。その理由を、3つのポイントからみていきましょう。

  • 人材不足の解消
  • AI技術の将来性
  • 少子高齢化による人材不足への対策になる

人材不足の解消

AI関連技術の急速な普及や発展に伴い、AI人材が求められるようになったことで、AI人材の不足が顕著になりました。経済産業省によると、AI/IT人材の不足は2020年の約37万人から、2030年には約79万人に拡大すると予測されています(※)。AI関連技術は製造業や小売業、医療、農業、物流など非常に多くの分野で活用されており、AI人材の需要は今後も高まるため、人材不足の拡大が予想されます。

また、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が公開した「DX白書2023」によると、AI導入課題として、「AI人材の不足」を挙げた企業は49.7%に上り、2022年度調査では最も多い回答です。

AI人材が求められる一方で、戦力となりうるAI人材の育成は現状難しいとされています。後述しますが、AI人材には機械学習やディープラーニングの知識のほか、ビッグデータを活用するためのプログラミングやデータサイエンスの知識や技術など多くのスキルが求められるため、育成が難しいです。そこで、政府主導でスキル認定制度などの運用が開始されていますが、今後もAI人材の不足はしばらく続くでしょう。

※ 参考:経済産業省「AI人材育成の取組」
独立行政法人情報処理推進機構「DX白書2023」

AI技術の将来性

AI関連技術はまだ発展途上であり、AI技術そのものの将来性が見込まれることも、AI人材の重要性を高める一因です。現在は「第3次AIブームの時代」と呼ばれ、2000年代初頭に登場したディープラーニング(深層学習)の技術が時代の始まりとされています。

企業が生み出すサービスにも、業務システムにもAI技術が使われるようになりました。そのため、世界中の国家と企業がAI技術の将来性に期待しています。

少子高齢化による人材不足への対策

AI技術の発展は、少子高齢化による人材不足と生産性の低下を防ぐ役割も期待されています。総務省の「令和4年 情報通信白書」によると、日本における1歳から64歳までの生産年齢人口は、1995年をピークに減少し続けています。

出典】 総務省 「令和4年 情報通信白書」 p.27 図表2-1-1-1 「高齢化の推移と将来推計」

このように、日本を含め多くの先進国では、少子高齢化に伴う労働力不足や生産性の低下、ひいては社会機能の低下が懸念されており、生活レベルを維持するためにAI技術が欠かせません。

例えば、AI技術を活用した新人教育、行政サービスへのAI技術の導入などがあげられます。さらに、行政が提供する健康管理アプリケーションにAI技術を取り入れ、高齢化に伴って健康寿命の延長を目指す取り組みも始まっています。

AI技術によって暮らしが豊かで便利になれば、少子高齢化社会においても十分な生産性を確保し、社会機能を維持できるでしょう。少子高齢化時代における労働力不足を補い、生活レベルや社会機能を維持するために、AI人材の重要性がますます高まっています。

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AI人材の種類

では、AI人材にはどのような種類があるのでしょうか。まず、独立行政法人情報処理推進機構による「DX白書2023」に記載されているデジタル事業に対応する人材をもとに、AI人材を以下の4つに分類して、解説します。

  • 先端的なAIアルゴリズムの開発等に従事する人材
  • AIの開発に携わる人材
  • AIの事業企画立案や事業を主導する人材
  • AIツールでデータ分析を行い、事業に活かせる人材

先端的なAIアルゴリズムの開発、研究等に従事する人材

機械学習、ブロックチェーンなどの先進的な技術を担う人材です。実務としては、AIの処理速度や精度を高めるための研究や、様々な研究に基づいた実装レベルに活かせるアルゴリズムの開発などを行います。論文の執筆・発表や読み込みに英語を使うことも多く、大学や研究所に所属するほか、企業に所属しながら研究・開発を行う研究者もいます。

AIの開発に携わる人材

主にエンジニアを指し、「DX白書2023」では「テックリード」「エンジニア/プログラマー」の2つが紹介されています。

  • テックリード…AIに関するシステムの設計から実装ができ、プロジェクトをリードする人材
  • エンジニア/プログラマー…AIの実装やインフラの構築、保守・運用、セキュリティ等の具体的な技術面での業務を担当する人材

上記のように、開発に携わる人材はAI技術の実装や開発を行うため、AIについての技術的な知識があることはもちろん、製品やサービスを使う顧客のニーズや市場の動向なども理解した上で、ソフトウェアやシステムの実装・開発を行わなくてはなりません。

AIの事業企画立案や事業を主導する人材

AIに関する知見とビジネスに関する知見を掛け合わせ、AIを活用した製品やサービスを企画する立場です。「DX白書2023」を参考にすると、以下のように分けられます。

  • AI事業の実現を主導するリーダー格の人材
  • AI事業の企画・立案・推進などを担う人材

企画立案は、システムやソフトウェアなどを扱う企業に所属することが多い人材です。エンジニアと比べて技術的なスキルはそれほど求められませんが、プロジェクトの管理・進行のためコミュニケーション能力やビジネスに関する知見が重視されることから、文系のAI人材として注目されています。

また、事業を主導する人材は、メンバーだけでなく、AIに対しての指示出しを行う必要もあるため、指示を出すプロンプトの作成などディレクションのスキルを身に着ける必要があります。

AIツールでデータ分析を行い、事業に活かせる人材

AI人材では特に、ビジネスにAIツールを活用してデータの分析や評価ができる人材です。AIモデルやデータ分析手法ごとの特性を理解した上で、場面に応じて適切に使い分けることや、AIの出力結果を評価するスキルが必要です。
現在、データ分析を行うデータサイエンティストは慢性的な人材不足とされており、データサイエンティスト協会によれば、採用の現場において「目標としていた人数を確保できなかった」と答えた企業は58%に上ります(※)。
※ データサイエンティスト協会「データサイエンティストの採用に関するアンケート調査結果

AI人材に求められるスキル

AI人材と一口に言っても、業種によって求められるスキルは異なります。そこで、AI人材に多く求められるそれぞれのスキルについて解説します。

  • プログラミング
  • データサイエンス
  • 機械学習、ディープラーニング
  • デジタルリテラシー
  • 各ビジネスのドメイン知識

プログラミング

プログラミングスキルは、主に開発者(エンジニア)に求められるスキルです。特にAI技術の分野ではPythonというプログラミング言語がよく使われており、機械学習やデータ解析などツールの開発、各種アプリケーションの開発に用いられています。AI人材の育成を行う際には、まずPythonを学んでもらうのが良いでしょう。

Pythonのほかにも、C++、Julia、R言語やJavaScriptなどの言語もAI開発に活用できます。そのため、社内にこれらの言語が使えるITエンジニアがいる場合は、AI人材として育成もしやすいでしょう。

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Pythonはプログラミング言語の中でもトップクラスで人気です。人工知能やデータ分析、アプリケーションの開発、事務作業の自動化まで幅広く使われており、基本を覚えるとさまざまな分野で使用できます。新しく技術を習得するときには、技術が古くならないか、学び損にならないかと心配になるものです。しかし、Pythonに限っては心配無用といえます。
この記事ではPythonでできることをはじめ、汎用的な言語と言われる所以や用途、不得意なこと、未経験者向けの学習方法もあわせてご紹介します。

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データサイエンス

データサイエンスのスキルは、主に研究者やデータサイエンティストに求められるスキルです。統計学や情報工学、アルゴリズムなどの手法を使い、膨大なデータから新たな知見やビジネスに有意義な情報を引き出します。特に近年のAI技術活用にはビッグデータが必ず関わってきますので、データサイエンスを扱える人材は必須です。

さらに、引き出した情報をどのように活用するのかを考えることも、データサイエンティストの仕事です。求める結果から逆算し、扱うデータや結果を導くまでのロジックを考えることもあります。また、ビッグデータを扱いやすいよう整形する「データクレンジング」などの作業も行います。

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機械学習、ディープラーニング

機械学習やディープラーニングは、現在広く普及しているAI技術の代表的な領域です。そのため、機械学習やディープラーニングに関する知識は、AIプロジェクトに関わるすべての人に必須のスキルです。

機械学習とは、AIにデータを読み込ませてパターンや法則を見つけ出すことに加えて、ルールやパターンを導き出し、判別や予測などを行う技術です。また、ディープラーニングは機械学習の手法の一つであり、多層のニューラルネットワークを使用して特徴量をデータから自ら抽出する手法です。

専門的なスキルは研究者や開発者に求められますが、基本的な知識はどのAI人材であっても備える必要があります。

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デジタルリテラシー

デジタルリテラシーとは、コンピューターで扱う様々な情報について適切に理解し、活用できるスキルのことで、AI人材すべてに必要なスキルです。デジタルリテラシーを表す言葉として、デジタルリテラシー協議会によって「Di-Lite」という言葉が定義されました。
Di-Liteは「ITソフトウェア領域」「数理・データサイエンス領域」「AI・ディープラーニング領域」の3領域にまたがる言葉です。今後、DX化やAI技術の普及が進んでいくと予測されるビジネスの分野において、すべてのビジネスパーソンが持つべき共通のリテラシーとされています。
その中で、文部科学省が数学のカリキュラム変更を行うなど、数理に関する知識の習得には政府も重点を置いています。

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AI開発・導入は、AIの知識を持っているだけでは成功しません。成果に結びつけていくためには、携わる業界を深く理解する必要があります。
AIの活用は、あくまでビジネスを成功させるための手段に過ぎません。そのため、現代ではAIの特性を理解し、ビジネスにマッチさせていける人材になることが求められています。

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AI人材の育成方法

上記のように重要性の高いAI人材ですが、採用によって確保しようとするのがなかなか難しいのも事実です。そこで、社内でAI人材を育成する方法について、課題とその解消法、育成ステップに分けて解説します。

AI人材育成における課題

まず、AI人材育成においてどのような課題が考えられるでしょうか。以下で3つのポイントを紹介します。

育成プラン立案の負担

AI人材を社内で育成するとき、育成プランを立案するという業務が、人事担当者の負担になってしまうリスクがあります。既存事業を行いながら、育成プランの立案も行わなくてはならないためです。人的リソースを育成に割くことで、既存事業に従事できる人的リソースが減ってしまったり、担当者の負担が増えて業務負荷が深刻化したりすることが懸念されるでしょう。

また、そもそも必要とするAI人材の数や保有スキルがわからないという企業も少なくありません。AI人材の育成プランを立てる前に、必要な人材を洗い出すことも負担になるでしょう。

実務に活かせる教材が見つけにくい

現場で活かせるAI技術を育てるための教材が少ないことも、AI人材の育成における大きな課題の一つです。実際の事例に基づくケーススタディが最も有効ですが、実務に立ち入るようなAI技術の教材はまだ多くありません。
そもそもAI技術自体が発展途上であり、実務に活用されているケースが少ないことも要因ではありますが、どれだけ実務に活かせる教育を行うかで学びの質は大きく変わります。

スキルアップが難しい

実務で活かせる教材が少ないこととも関連しますが、スキルアップできるような案件が都合よく見つからないことも、AI人材の育成に立ちはだかる課題です。特に、AIの案件は企業にとって重要なプロジェクトであることが多いため、実案件でスキルアップしていくことが難しいです。

AI人材育成の課題を解消する方法

では、上記のようなAI人材育成の課題を解消するためには、どのような解決策が考えられるでしょうか。ここでは、3つのポイントに絞って解説します。

自己学習

育成プラン立案のために社内リソースが割かれてしまう課題を解決する方法として、自己学習を推奨する方法があります。従業員自ら自己学習を行えば、社内で担当者が育成プランを一つひとつ立てなくても、ある程度までは学べるでしょう。例えば、既に作成された動画コンテンツの視聴やAIに関する資格の学習等があります。
ディープラーニングの理論やAIの活用方法などについて学べる資格の例としては、エンジニア系であればE資格やGenerative AI Test、非エンジニア系も含めるとG検定などがあります。
ただし、自己学習はあくまでも初心者や入門者レベルのスキルを身につけるためには有効ですが、一定以上のスキルを持つ人には期待したほどの効果が出ない可能性もあります。ある程度のスキルを自己学習で身につけたら、後述する外部研修やスキルアップにシフトしていきましょう。

外部研修を取り入れる

外部研修は、実務に活かせる教材が見つかりにくい課題を解決してくれるでしょう。特に、ワークショップでディスカッションやロールプレイングを通じて課題解決やビジネスプランの立案に取り組みます。このように実務で発生している問題を題材にしながら行う演習形式で学ぶ方法は、AI人材の中でも中級者〜上級者に向いている育成方法です。

求めるゴールと必要なスキルを見極める

スキルアップしにくいという課題を解決するためには、企業の求めるゴールとそれに必要なスキルを見極め、学習するスキルを絞ることも役立つでしょう。あれもこれもと闇雲に学ぶスキルを増やしても、本人の負荷や育成コストがかかるばかりで、実務に活かせるスキルは身につきません。
スキルアップを主目的としてプロジェクトを始動する場合は特に、どのようなスキルが必要で、スキル習得に活かせるプロジェクトかどうかよく検討しましょう。

AI人材育成のステップ

AI人材育成のおおよそのステップを、一例として紹介します。

  • 1年目
    • 育成計画やプランを作成し、育成対象者を選抜する
    • 入門レベルの知識習得と、自社ビジネスへの適用案を考えるため、研修を行う
  • 2年目
    • プロジェクトの進め方を学んだり、プログラミング言語や論理的思考、機械学習などの基礎スキルを学ぶ
    • ディープラーニングなどの基礎を学び、自社データを活用した実証を行う
  • 3年目
    • AIプロジェクトに着手し、案件に必要な個別の応用スキルを習得する
    • ビジネス成果につながる、2〜3の成功事例を生む

ここであげたのは一例ですが、AI人材として成果を上げられるようになるまでに3年程度かかるという認識が一般的です。AI人材の育成期間をどのくらい取ればいいのか悩んでいる場合は、3年間が目安になるでしょう。

まとめ

AI人材には研究者、開発者をはじめ様々な種類があり、需要の増加に伴って採用は困難を極めています。AI人材を確保するためには、社内で育成するのも一つの方法です。自己学習ツールや外部研修を取り入れるなどして、自社に必要なスキルを持ったAI人材を育てましょう。

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