Accessを活用するには?データベース管理の役割からその将来性まで
Microsoft社が開発・提供するOfficeシリーズの一種である「Microsoft Access」は、データベースを作成してデータの蓄積・保存やデータ活用、データベースのカスタマイズなどを行えるソフトウェアです。Accessを使いこなすためには、SQLやVBAのスキルを身につける必要があります。
本記事では、Accessの役割やメリット、使いこなすために必要なスキルと将来性について解説します。Accessを活用したエンジニアを目指したいとお考えの方は、ぜひ参考にしてください。

Accessの役割
Accessとは、Microsoft社が開発・提供するOfficeシリーズのソフトウェアのひとつです。Accessを導入すると、データベースを作成し、データの保存・管理、活用などが可能になります。
ここでは、Accessの主な2つの役割について解説します。
データの保存・管理
Accessはデータの保存・管理を行えるソフトウェアです。大量のデータを保存・管理するシチュエーションで重宝されています。
Accessと同様に大量のデータを扱えるソフトウェアとしてExcelの利用が検討されることもありますが、Excelはひとつのワークシート内に記述できる行・列・文字数の上限が決まっており、無制限にデータを追加できるわけではありません。
一方のAccessはひとつのデータベース内に最大2GBのデータを保存できます。そのため、1件ずつが軽量かつ大量のデータを保存したいときは、Accessがおすすめです。
また、AccessはRDBMSであることからデータを構造化し、一貫性のある管理も可能です。
保存データの活用
Accessに保存したデータは、さまざまな形で活用が可能です。データベースを操作するための「SQL」という構文を使用して、データを取り出したり、複数のデータを計算したり、集計データを表として結合したりすることができます。
テーブル内から特定の条件を満たすデータを取り出して一覧で表示するクエリや、テーブルを印刷用にデータを整えてレイアウトをカスタマイズできるレポートの機能があります。
これらの機能を組み合わせて使用することで、データの分析から報告までを一貫して効率的に行うことができます。
Accessのメリット
Accessはアプリケーション型のソフトウェアであることから、データベースに不慣れな方でも比較的環境を構築しやすくなっています。基本的なSQL文を理解しておく必要はあるものの、一般企業の経理事務などでもよく利用されているように、一度構築が完了してしまえば、それほど知識が深くない方でも運用が可能です。
組織内に蓄積した大量のデータをデータベース化して一元管理することができるため、アナログで管理していたデータを一箇所に集めてデータ活用に活かせます。また、ソフトウェア内に実行環境がそろっているため、Accessをインストールするだけですぐに使い始められる点もメリットです。
AccessとExcelの違い
AccessとExcelでは、使用目的や処理が可能なデータ件数の上限、データの蓄積方法などが異なります。
前述の通り、Accessとは「データベースを管理するためのソフトウェア」です。クエリやレポートといった高度なデータ管理と表示の機能があり、特定のビジネスニーズに応じてカスタマイズされた分析レポートを簡単に作成できます。
一方のExcelは「計算処理を行うためのソフトウェア」であり、数式を入力して複数のデータから任意の数値を算出するのが主な役割になります。また、Accessは処理できるデータはデータベースにつき最大2GBまでと決められています。一方のExcelはデータの行・列・文字数に上限があります。
加えて、AccessはRDBMSであるため、テーブル間のデータ同士の関連性を定義することができ、データの一貫性を保ちながら効率的にデータを参照、更新、管理できます。複数のテーブルにわたる複雑なクエリも容易に実行可能です。一方、Excelではデータは基本的に一つのワークシート内で管理され、複数のシート間でのデータ同士の関係性は自動的には設定されません。
Accessの将来性
近年ではデータ活用の重要性が企業に認識されるようになり、さまざまなデータが蓄積して活用されるようになってきています。そのため、Accessを活用できるエンジニアも、引き続き現場で重宝されると考えられます。
Accessはインストールするだけですぐに使い始められるため、簡単かつ本格派のデータベースシステムを構築したいと考えている組織には特におすすめです。同じMicrosoft OfficeのExcelや、組織内で運用している他のデータベースと連携してデータ活用を行う際にもAccessを扱えるエンジニアの需要があるため、Accessのスキルは今後も求められると考えられるでしょう。
Accessを使いこなすための関連スキル
Accessを使いこなすための関連スキルとして、SQLの知識とVBAの知識が挙げられます。また、Accessに関する本格的な知識を身につけたいのであれば、資格を取得することで、さらに活用の幅が広がります。
ここでは、Accessに関連する2つのスキルと、資格取得がおすすめな理由について解説します。
SQLの知識
SQL(Structured Query Language)とは、データベースを操作するためのデータベース言語です。SQLを活用することで、データベース内に保存されたさまざまなデータを取り出したり、保存したりといった操作が可能になります。
SQLは多くのデータベースシステムで使用されています。そのためSQLを理解できれば、他のデータベース言語を学ぶ際にも役立ちます。
特にデータベースエンジニアとして活躍したいのであれば、SQLの知識は必要不可欠です。
VBAの知識
VBAとは、Officeソフトで活用できる独自のプログラミング言語です。特にAccessやExcelでよく使用されます。
VBAを活用することで、複雑な処理の自動化などを行なうことができます。大量のデータ操作を繰り返す業務が日常的に発生する場合は、VBAを使ってプログラムを構築しておくと便利です。
プログラミングの一種であるVBAは学習のための時間がある程度かかりますが、身につけておくと、データベースエンジニアとして幅広い活躍が期待できます。
資格を取得するとさらに活用の幅が広がる
Accessについて学ぶのであれば、資格を取得すると、さらに活用の幅が広がります。Accessを学ぶ際におすすめの資格の代表例としては、下記の2つが挙げられます。
- MOS Access
- Access®ビジネスデータベース技能認定試験
MOS Access
「MOS Access」は、Microsoftが独自に主催しているAccessの資格試験です。Microsoftが正式に認定しているため、Accessに関する正しい知識を体系的に学ぶ際に役立ちます。「Access 2016(一般)」と「Access 2019 エキスパート(上級)」の2種目があり、「Access 2016(一般)」はデータベースの基礎知識を、「Access 2019 エキスパート(上級)」は応用的な知識を問う問題が出題されます。
Access®ビジネスデータベース技能認定試験
Access®ビジネスデータベース技能認定試験は、株式会社サーティファイが主催する民間資格です。実務を想定した実践的な内容が出題されるため、現場で使えるAccessの知識が身につきます。
参考:Access®ビジネスデータベース技能認定試験│資格検定のサーティファイ│あなたのスキルアップを応援します
資格取得のための学習方法には、書籍やWeb、スクールに通う方法などがあります。自身のスケジュールや予算などに合わせて、適切な方法を選択しましょう。
Accessを活用できる職種
Accessを活用できる職種としては、データベースエンジニアや営業・一般で働く事務職の方などが考えられます。業務でAccessを利用する可能性がある方や、データベースエンジニアとして活躍したい方は、Accessの知識を積極的に身につけることをおすすめします。
データベースエンジニア
データベースエンジニアとは、データベースを構築したり、蓄積したデータを活用してデータ活用を行ったりする仕事です。VBAを使ってプログラムを構築し、一部の業務を自動化する作業を担うこともあります。
データベースエンジニアとして働く場合、Accessのみを運用するのではなく、SQLやVBA、その他のプログラミング言語を操りながら、データベースの構築・設計・運用・保守の全般を担当するのが一般的です。
データベースエンジニアのキャリアパス
データベースエンジニアとして活躍した後のキャリアパスとしては、プロジェクトマネージャーやデータベースコンサルタント、データサイエンティストなどが考えられます。
プロジェクトマネージャーとは、プロジェクトを取りまとめて進捗管理や人員管理などを行い、プロジェクトが適切に進行していくように調整役を担う仕事です。データベースコンサルタントに転身した場合は、自身のデータベースエンジニアとしての経験を活かし、クライアントに最適なデータベース構築・運用の提案ができます。
データサイエンティストは大量のデータを分析・構築することが主な仕事であり、データ解析の専門家ともいえる存在です。
事務職(営業・一般)
営業・一般の事務職も、Accessを使用する機会が巡ってくることがあります。自社で使用しているデータベースソフトがAccessである場合は、Accessを操作するための知識を学ぶ必要があります。
社内全体の事務職の場合は、Accessを通じて社内のさまざまなデータ集計を行います。一方、営業の事務職の場合は、営業担当者のサポート役として顧客データや売上データなどを集計・活用する機会があるでしょう。
Accessの競合製品
Accessは世界的にシェアの高いデータベースソフトウェアですが、市場には他にもさまざまな競合製品があります。代表的なものとしては、下記のようなソフトウェアが挙げられます。
- kintone
- LibreOffice
- FileMaker
- Microsoft SQL Server
ここでは、Accessの競合製品である下記の4つのソフトウェアについて解説します。
kintone
kintoneは、サイボウズ株式会社が提供するWebデータベース型の業務アプリ構築クラウドサービスです。クラウド型で提供されており、インターネットに接続できる環境下ならどこからでも使用できるため、リモートワークなどの用途にも向いています。
直感的に操作できるシンプルな画面設計と、充実したコミュニケーション機能が特徴で、初めてWebデータベースに触れる方でも扱いやすいのが魅力です。
拡張機能も充実しており、有料オプションにはなりますが、帳票出力やカレンダー、Webフォーム作成機能など200種類以上の豊富な拡張機能を追加できます。
参考:kintone
LibreOffice
LibreOfficeは、The Document Foundationによって開発されているオープンソースのオフィスソフトウェアです。文書作成、スプレッドシート、プレゼンテーション作成など多機能が含まれていますが、特にデータベース管理に関しては「LibreOffice Base」というアプリケーションがあります。
オープンソースであるため、無料で使用することができ、プラットフォームに依存しないのも大きな魅力です。しかし、RDBMSとしての高度な機能や、企業向けのサポートは限定的です。
参考:LibreOffice
Claris FileMaker
FileMakerは、Appleの子会社であるClarisが提供するデータベースソフトウェアです。主に中小企業や個々の部門、さらには個人ユーザー向けに設計されており、データベースの作成から管理、カスタマイズまでを一つのプラットフォームで行うことができます。
直観的で簡単な操作であり、ノーコード・ローコードで利用できるほか、JavaScriptを利用することでさらに高度な機能を実装できます。
Microsoft SQL Server
Microsoft SQL Serverとは、Microsoft社が開発したRDBMSです。Accessと比較すると、Microsoft SQL Serverの方が大量データの処理に向いているため、膨大なデータを扱う場合にAccessの代替として選択肢に入るでしょう。
大企業で導入する大がかりなシステムから、小規模事業者向けのシステムまで対応しています。Accessに比べると操作の複雑性は高いため、データベースエンジニアが在籍している現場に適しています。
まとめ
Microsoftが提供するデータベースソフトのAccessは、データの保存・管理やデータ活用など、データ操作に関わるさまざまな機能を持った製品です。データベースエンジニアを目指す方や、営業・一般の事務職の方は、Accessの知識を身につけておくと、転職や案件獲得に有利になる可能性があります。
Accessの知識を身につけるなら、MOS AccessやAccess®ビジネスデータベース技能認定試験などの資格試験を通して学習するのもおすすめです。特にデータベースエンジニアとして活躍したい場合は、Accessについて学んでおくと、他のデータベース言語の学習にも活かせます。
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