【税理士監修】フリーランスが経費で認められる支出は?確定申告のポイントも解説
「独立してフリーランスとして働き始めたけれど、経費についての知識がなく、どこまで経費として認められるのか分からない」という方も多いのではないでしょうか。
経費として計上できる支出を理解しておけば、効率のよい節税対策が可能です。本記事では、フリーランスが知っておきたい経費の基本や申告のポイントを税理士監修で解説します。
この記事の監修者
税理士法人小原会計
社員税理士、公認会計士
小原崇史
1989年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業。
会計士試験に合格後、有限責任監査法人トーマツにて主に監査業務を経験。
都内中堅税理士法人で税務業務に従事後、2023年7月独立開業。
2024年4月1日に税理士法人化。
現在は、スタートアップや起業支援…
フリーランスが経費を申告するメリットとは?
フリーランスが経費を漏れなく計上すると、課税対象となる所得額を減らせるため納税額を軽減できます。例えばフリーランスエンジニアの場合、業務用パソコンや専用ソフトウェアの購入費用を経費として申告すれば、税負担を軽減できるのです。
正確な経費計上は、節税対策において欠かせないポイントです。税負担が軽減されれば、業務効率化に役立つツールの購入費などに資金を充てられます。
さらに、適切な経費申告は税務調査時のトラブルを回避するためにも重要です。税務署から不正確な申告と判断されてで追徴課税を受けると、取引先からの信用が損なわれてしまうことも。フリーランスとして丁寧な経費計上をするのは当然であると考え、抜け漏れのない申告を心がけるのが大切です。
フリーランスの経費として認められる支出とは?
フリーランスが経費として計上できる主な支出項目は、以下のとおりです。
- 家賃・水道光熱費の一部
- 通信費(インターネット・携帯代)
- 書籍やリサーチのための資料代
- 取引先との接待交際費、交通費
それぞれ解説します。
家賃・水道光熱費の一部
自宅を事務所として利用している場合、業務で使用している部分に応じた家賃や水道光熱費を家事按分として経費に計上できます。
例えば、部屋の一部を仕事用スペースとして利用している場合、面積に応じた割合を算出し、該当する費用を経費として計上が可能です。ただし、家賃の一部として計上する際には、業務で使用するスペースが明確でなければなりません。
また、1日のうち何時間を業務に費やしているか計算し、使用割合で経費を計上する方法もあります。仕事でもプライベートでも同じ部屋を使用している場合は、時間で使用割合を計上するのもおすすめです。
加えて、水道代や電気代についても、業務のために使用した分を合理的に区分し、計上できます。
通信費(インターネット・携帯代)
エンジニアなどが業務で利用するインターネットや携帯電話の通信費用は、経費に計上できます。業務でインターネットを利用するエンジニアにとって、これらは業務に欠かせない費用です。
ただし、経費として認められるのは業務で使用した分だけです。プライベートと業務の使用割合を明確に区分し、申告しなければなりません。例えば、携帯電話を業務で50%使用している場合は、通信費の半分を経費として計上できます。
なお、曖昧な申告は認められない可能性があるため、通話履歴や利用明細書を保存し、業務使用を証明できるデータを備えておくのが重要です。
書籍やリサーチのための資料代
業務に役立つ書籍や資料の購入費用も、経費として認められる項目の一つです。例えば、エンジニアが新しいプログラミング技術を学ぶための書籍や業界動向を調査するための専門誌の購入費、学習用のサブスクなどが該当します。
ただし、趣味や私的な目的で購入した書籍や資料は、経費として計上できません。申告の際には、業務との関連性を示す証拠として、購入時の領収書や書籍の概要を記録しておくのが重要です。
取引先との接待交際費、交通費
クライアントとの接待や打ち合わせで発生する費用は、業務遂行のための経費として認められます。具体的には、取引先との会食費やカフェでの打ち合わせにかかる飲食代、移動に必要な交通費などが該当します。
また、エンジニアが商談のために使用した電車やバスの運賃、タクシー代も経費として申告可能です。ただし、私的な会食や不要な移動にかかる費用は認められないため、目的や日付を明確に記録しておかなければなりません。
支出に関連する領収書は必ず保管し、必要に応じて支出の詳細を説明できるよう準備しておくのが大切です。
フリーランスの経費として認められない支出とは?
フリーランスが経費申告を行う際、認められない支出を把握しておくのも重要です。以下に主な例を挙げます。
- プライベートな支出
- 事業に関連性の低い支出
- 10万円を超える備品の購入費用
- 生計を共にする家族への給与
- 所得税、住民税
- 借入金の元本
プライベートな飲食代や旅行費
個人的な用途で使った費用は、経費として認められません。例えば、家族と飲食店で食事をした際の費用やプライベート用PCの購入費用、家族旅行の費用などが該当します。
これらは事業活動とは無関係な支出であり、経費として申告すると税務調査で否認されるリスクがあります。そのため、申告時には支出が業務に関連することを明確に示すのが重要です。
曖昧な基準で経費を計上するのではなく、業務専用で使用された費用のみを対象とし、プライベートと事業の徹底した線引きが求められます。
事業に関連性の低い支出
事業運営に直接必要ではない支出は、経費として認められません。例えば、高級な家具や装飾品、趣味のための音響機器などが該当します。
これらは業務にて直接使用しているとはいえない場合が多いため、経費に含めるのは不適切です。また、業務と関係の薄いセミナー参加費や、業務に不要なソフトウェアの購入費も同様に経費として認められません。
経費として認められるためには、支出が事業活動において必要不可欠であるのを証明しなければなりません。事業とそれ以外を線引きするための基準を明確に定め、適切に区分するのを心がけましょう。
10万円を超える備品の購入費用
PCやプリンターなど、取得価額が10万円を超える備品は一括で経費計上はできません。「減価償却」という項目で毎年少しずつ経費計上していきます。
減価償却の計算方法は「定額法」や「定率法」などがあり、くわしく知りたい方は関連記事をご参照ください。
生計を共にする家族への給与
共に生活している配偶者や家族へ支払った給与や仕送りなどは、原則として経費にできません。フリーランス(個人事業主)の確定申告時に、家族は配偶者控除や扶養控除といった控除の対象になるためです。
所得税、住民税
所得税や住民税は所得に対してかかる税金であり、経費として認められません。一方、固定資産税に関しては事業のために使用している土地や建物にかかる固定資産税は全額を経費計上できますし、自宅兼事務所の場合は事業に使用している部分の固定資産税を家事按分で算出し、経費計上できます。
融資や借入金の元本
事業用に資金融資を受けた際の借入金は、利息分は経費にできますが、元本自体は経費計上できません。
領収書の保存方法
フリーランスが経費申告を行うためには、領収書の適切な保管が欠かせません。以下に、保存方法のポイントを解説します。
- 領収書の保管期間と必要な理由
- 紙媒体での保管方法と整理ポイント
- 電子データでの保存方法と要件
領収書の保管期間と必要な理由
領収書の保管期間は、税法によって明確に定められています。青色申告を行う場合は7年間、白色申告の場合は5年間の保管が義務付けられています。
これらの保管期間は、税務調査が行われた際に必要な資料として提示するために欠かせません。経費として認められるかどうかは、領収書の有無が非常に重要です。また、領収書を保管しておけば申告内容の正当性を証明でき、不要なトラブルを防ぐ助けにもなります。
適切な領収書の保管は、経費が正確に認められ、適切な納税を実現するために必要です。税務リスクを回避するためにも、領収書の確実な管理・保管は欠かせません。
紙媒体での保管方法と整理ポイント
紙の領収書を保管する際には、効率的で整理しやすい方法を採用するのが重要です。まず、領収書は取引ごとや月別に整理し、専用のファイルやフォルダーに保管するのがおすすめです。
さらに、交通費や通信費、接待交際費などカテゴリーごとに分けると、申告時に必要な情報を迅速に確認できます。また、領収書が破損したり消失したりしないよう、湿気や直射日光を避けた場所に保管するのも大切です。
適切に整理すれば、効率よく経費申告時の準備作業を行え、スムーズな経費管理につながります。
電子データでの保存方法と要件
電子帳簿保存法の改正により、フリーランスを含む事業者に対し、電子取引データの保存が義務化される重要な変更が行われました。また、紙で発行または受領した書類をスキャンして電子データ化し、「スキャナ保存」としての保存が可能となり、クラウドや専用ソフトを利用して広く採用されています。
ただし、データ保存にはいくつかの要件を満たさなければなりません。たとえば、スキャナ保存の場合は、改ざん防止のために訂正や削除ができないシステムに保存をする、もしくはタイムスタンプの付与が必要です。さらに、保存されたデータが必要な際に迅速に検索・確認できる状態であることも求められます。
デジタル保存を活用すれば、紙の保管に比べ管理の効率化を図れ、紛失リスクも軽減されます。
フリーランスの確定申告に役立つ経費管理のポイント
フリーランスとしての経費管理は、確定申告をスムーズに進めるためにも重要です。具体的には、以下のポイントに注意しなければなりません。
- 過剰な経費申告は避ける
- 領収書を正しく保管する
- 経費はこまめに計算しておく
それぞれのポイントを解説します。
過剰な経費申告は避ける
必要以上に経費を申告することは、不正計上とみなされる可能性があります。経費として認められない支出を無理に計上した場合、税務調査で指摘されるリスクが高まり、修正申告や追徴課税が発生する可能性もあります。
例えば、プライベートな食事や業務と無関係な旅行費用を経費に含めるのは避けるべきです。正確な経費管理を行い、領収書や証拠書類を適切に保管して、支出の根拠を明示できるのが重要です。
税務署からの信頼を得るためにも、経費計上はルールを守り、業務に関連する範囲内で行うよう心がける必要があります。
領収書を正しく保管する
経費を申告する際、領収書は必要不可欠な証拠書類です。紙媒体で保管する場合は、月別や費目ごとに整理して専用ファイルにまとめておくと後の確認がスムーズになります。
一方、電子データで保存する場合は、スキャンしたデータにタイムスタンプを付与し、徹底した改ざん防止対策を講じるのが大切です。保存期間は青色申告で7年間、白色申告で5年間と定められています。
整理整頓された領収書の保管は、税務調査に対応する際の裏付けです。日常的な管理を徹底し、確定申告をスムーズに進められる環境を整えておく必要があります。
経費はこまめに計算しておく
経費を1年分まとめて計算するのは、手間がかかるだけでなく、記憶が曖昧になってしまい正確性を欠く恐れがあります。そのため、毎月や週ごとに経費を記録しておけば、確定申告時の作業負担を軽減可能です。
さらに、こまめな記録は経費申告の漏れや重複を防ぐ効果もあります。会計ソフトや経費管理アプリを活用すれば、効率よく経費の追跡ができ、正確な計算を維持可能です。小さな習慣を積み重ねることで、確定申告の準備に必要な労力を分散させられ、業務全体の管理もよりスムーズにすすめられます。
まとめ
フリーランスとして成功するには、正しい経費管理が欠かせません。経費申告を正確に行えば、節税効果を得られるだけでなく、取引先や税務署からの信頼を高めることが可能です。
経費として認められる項目や認められない支出を明確に把握し、領収書の正確な保存と整理を徹底しなければなりません。また、過剰な申告を避け、こまめに経費を記録していけば、確定申告時の負担を軽減できます。
経費管理の基本を守ることで、税務リスクを回避し、事業の成長を持続させる基盤を築く一助となります。
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