フリーランス・個人事業主の補助金・助成金・給付金を紹介|申請時のポイントも解説
国や自治体は、中小企業や小規模事業者を支援する補助金・助成金・給付金の制度を用意しています。これらは返済の義務がないのが大きなメリットで、各制度の条件を満たせばフリーランスや個人事業主でも利用可能です。
この記事では、資金援助を希望するフリーランス・個人事業主のための補助金・助成金・給付金を紹介します。(一覧に給付金は含まれていないため、必要に応じて各自治体や関連機関のウェブサイトをご確認ください。)
補助金や助成金を活用する際のメリット・デメリットや申請時のポイントに加えて、税負担を軽減できる税制優遇措置や支払い猶予についても解説しているので、ぜひ確認してみてください。
補助金・助成金・給付金の違い
補助金・助成金・給付金はいずれも国や自治体が行う資金援助の制度ですが、それぞれ性質が異なります。手続きの手間や支給決定までのハードルの高さなどが異なるため、申請前にこの3つの違いを理解することが大切です。
はじめに、補助金・助成金・給付金の違いについて見ていきます。
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補助金とは
補助金は、国が中小企業やフリーランスなどの事業活性化を促進するために支給する資金で、研究開発や新市場の創出、地域振興や設備投資の促進が主な目的です。
補助金には、支給する件数や金額の上限があり、上限を超える申請があると一部は不採択となるため、申請すれば必ず受給できるというわけではありません。
申請には事業計画や資金計画の提出が必要で、審査を通過するには質の高い計画書が求められます。また、補助金は事業期間終了後に受け取れるため、報告書や支払証憑類の提出が必要です。
このように、補助金は手続きが多く、受給までのハードルが高い制度です。ただし、申請時にしっかりとした計画書を作成し、審査を通過できれば、事業計画の妥当性や将来性が認められた証明になるため、審査の厳しさはある意味でのメリットにもなります。
助成金とは
助成金は、企業や事業者の労働環境の改善や雇用維持などを支援するために、国や地方自治体が支給する資金です。主に人材の採用や育成、労働環境の整備などに活用されます。
助成金の受給には補助金と同様に審査がありますが、それほど厳しくないのが特徴です。申請の条件を満たしていて申請書類に不備がなければ、基本的に受給できます。支払いタイミングは、助成金の要件となっている事業や取り組みが完了した後です。
助成金は審査のハードルは低いものの、受給に必要な要件は細かく決められている点に注意が必要です。条件を満たせば原則受給できますが、その条件が厳しく設定されているものも少なくありません。
給付金とは
給付金は、緊急事態や特定の需要が高まったときに、国や地方自治体が企業や事業者、個人に対して支給する資金です。主に、緊急時の経済支援や特定の損失補填、経済的困窮者の救済などを目的としています。
例えば、新型コロナウイルス感染症の流行時には、家計を支援する特別定額給付金や、売上が減少した事業者を支援する持続化給付金が支給されました。
給付金の特徴は、基本的に使用用途が自由に決められる点です。また、給付条件もそれほど厳しくありません。用途に制限がないため、補助金や助成金のように指定の事業や取り組みを実施する必要がありません。申請内容に不備がなければ、比較的短期間で支給されます。
一方注意点としては、非常時の救済を主な目的としているため、事業者向けの給付金はそもそも数が少ないことが挙げられます。
補助金・助成金・給付金の違い
補助金・助成金・給付金は、それぞれ目的が異なります。
補助金の目的は、新しい事業やプロジェクトの支援です。一方、助成金は労働関連の改善や維持の支援、給付金は緊急時における経済的困難への対処が主な目的とされています。
それぞれの制度の目的に応じて、対象者や税法上の扱い、審査の有無や審査を通過するハードルなどが変わってくることを把握しておきましょう。例えば審査の厳しさは特定の事業・プロジェクトを支援するための補助金が最も厳しく、緊急時の支援を目的とする給付金は審査自体がないものもあります。
利用する制度を選ぶ際は、これらの特徴を踏まえたうえで検討することが大切です。
【24年度版】フリーランス・個人事業主向けの補助金一覧
ここからは、フリーランス・個人事業主が利用できる具体的な補助金制度を紹介します。2024年度に利用できるものを以下にまとめているため、参考にしてください。
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小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は小規模な法人や個人事業主を対象とした補助金で、事業者の経済活動の持続可能性を高めることが目的です。持続可能な事業活動のための経営計画を作成し、それに基づく販路開拓や商品開発、生産性向上などに必要な取り組みにかかる費用の一部について補助が受けられます。
取り組み内容に応じて、「通常枠」「賃金引上げ枠」「卒業枠」「後継者支援枠」「創業枠」の5つが申請可能です。枠によって補助率や補助上限などが異なり、機械装置等費・広報費・ウェブサイト関連費など補助対象経費も細かく定められています。
参考:小規模事業者持続化補助金
事業再構築補助金
事業再構築補助金は、新たな事業モデルへの転換や事業構造の改革・再編などを行う事業者の支援を目的とする補助金です。中長期的な経済環境の変化が予測されるポストコロナ・ウィズコロナ時代への適応を目指す事業者を重点的に支援するため、2021年に創設されました。
事業再構築補助金の対象は、本制度が示す「事業再構築」の定義に該当する事業です。具体的には、新市場進出・事業転換・業種転換・事業再編・国内回帰または地域サプライチェーン維持・強靭化のいずれかが対象になります。
参考:事業再構築補助金
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金は、生産性の向上や競争力の強化を図るために設備投資や技術導入をする中小企業・小規模事業者等が対象となる補助金です。働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げやインボイス導入など多数の制度変更に対応するための取り組みを進める事業者を支援します。
取り組み内容に応じて、「省力化(オーダーメイド)枠」「製品・サービス高付加価値化枠」「グローバル枠」の3つが申請可能です。補助上限額は従業員数によって決まり、大幅賃上げを行う場合は上限額が引き上げられます。
IT導入補助金
IT導入補助金は、デジタルツールや情報技術を活用して事業の効率化やサービスの品質向上を目指す事業者を対象とする補助金です。特に、中小企業・小規模事業者のデジタル化を推進することが狙いで、ITツールの購入費だけでなく導入時のサポート費用やクラウドサービス利用料なども補助対象となっています。
申請枠は、「通常枠」「インボイス枠(インボイス対応類型)」「インボイス枠(電子取引類型)」「セキュリティ対策推進枠」「複数社連携IT導入枠」の5つです。補助対象となるソフトウェアやサービスなどは事務局の審査を受けたものに限られていて、申請時には事務局に登録された事業者とパートナーシップを組む必要があります。
参考:IT導入補助金2024
事業承継・引継ぎ補助金
事業承継・引継ぎ補助金は、事業の世代交代をスムーズに行うための補助金です。事業承継をきっかけに新しい取り組みを行う事業者や、事業再編・事業統合に伴って経営資源の引継ぎを行う事業者を対象としています。
主な目的は、事業承継計画の策定や引継ぎプロセスの整備をサポートし、安定した事業継続を促進することです。取り組み内容などに応じて、「経営革新枠」「専門家活用枠」「廃業・再チャレンジ枠」の3つが用意されています。
参考:事業承継・引き継ぎ補助金
【24年度版】フリーランス・個人事業主向けの助成金一覧
続いて、フリーランス・個人事業主向けの助成金制度を紹介します。利用できるものがないか確認してみてください。
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人材開発支援助成金
人材開発支援助成金は、従業員のスキルアップや資格取得を支援する助成金です。業務に関連する知識やスキルを習得するための研修などを計画に沿って実施すると、研修にかかる経費や研修期間中の賃金の一部が支給されます。
人材開発支援助成金では、「人材育成支援コース」「教育訓練休暇等付与コース」「人への投資促進コース」「事業展開等リスキリング支援コース」「建設労働者認定訓練コース」「建設労働者技能実習コース」「障害者職業能力開発コース」の6つが利用可能です。
参考:人材開発支援助成金
トライアル雇用助成金
トライアル雇用助成金は、人材の採用時に試用期間中の労働コストの一部を助成する制度です。無期雇用への移行を前提として一定期間の試行雇用を行うと、1人雇用するごとに月額4万円(最長3ヶ月間)が支給されます。
トライアル期間を設けることで、雇用のミスマッチを防ぎながら人材確保を進めることが可能です。トライアル雇用助成金の受給には、「ハローワーク等の紹介で採用する」「原則3ヶ月の試行雇用を行う」といった条件を満たす必要がある点に注意してください。
中小企業退職金共済制度に係る新規加入掛金助成及び掛金月額変更掛金助成
中小企業退職金共済制度に係る新規加入掛金助成及び掛金月額変更掛金助成は、中小企業が退職金共済制度に新規加入する際の掛金、もしくは掛金額を増やす際の一部を支給する制度です。従業員の福利厚生の充実と、中小企業の魅力向上が目的です。
具体的な支給内容は、以下の通りです。
- 新規加入の場合:掛金月額の2分の1(従業員1人につき上限5,000円)を加入4ヶ月目から1年間
- 掛金額を増やす場合:総額分の3分の1を増額月から1年間
特定求職者雇用開発助成金
特定求職者雇用開発助成金は、高齢者や障害者、母子家庭の母など就職が困難な求職者を積極的に雇用する企業を支援する制度です。就職が困難な人の雇用を国が促すことで、多様な人材の活用を目指しています。
特定求職者雇用開発助成金を受給する場合、ハローワークもしくは民間の職業紹介事業者から採用するなどの条件を満たさなければなりません。具体的な支給額は、雇用する人の労働時間や、「高齢者」「重度障害者等」といった属性によって決まります。
地域雇用開発助成金
地域雇用開発助成金は、雇用情勢の厳しい地域での雇用機会の創出や雇用環境の改善を支援する制度です。「求職者数に比べて雇用機会が著しく不足している」「若年層・壮年層の流出が著しい」といった地域が対象で、その地域に居住する求職者を一定の条件で採用すると、雇用環境の整備にかかった費用の一部について助成が受けられます。
地域雇用開発助成金は、地域経済の活性化と安定した雇用の確保が目的です。具体的な支給額は、事業所の設置や整備にかかった金額と、新たな雇入れによって増加した労働者数によって決まります。
早期再就職支援等助成金(中途採用拡大コース)
早期再就職支援等助成金(中途採用拡大コース)は、中途採用の拡大を積極的に進める事業者を支援する制度です。具体的には、中途採用率を20ポイント以上上昇させた事業者が対象となります。中途採用率の計算方法は、以下の通りです。
過去3年間の中途採用者数÷過去3年間に雇い入れた労働者数×100
中途採用率を20ポイント以上上昇させた場合、50万円の助成が受けられます。また、追加で「45歳以上の労働者で10ポイント以上上昇」「該当する45歳以上の労働者の賃金を前職と比べて5%以上上昇」の条件を満たした場合、助成額は100万円です。
キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金は、有期雇用や派遣労働者など非正規雇用といわれる従業員のキャリアアップを促進するための制度です。労働者の意欲や能力の向上によって、企業の生産性やサービス品質の向上を図ることが目的です。
キャリアアップ助成金は、「正社員化支援」と「処遇改善支援」の大きく2つの枠組みからなる制度です。「有期雇用労働者を正社員として採用する」「有期雇用労働者の基本給を3%以上増額する」といった条件を満たすと、対象の労働者1人につき決まった額の助成金が支給されます。
参考:キャリアアップ助成金
ITエンジニアとしてキャリアアップしたくても、具体的にどのような行動をすれば実現するかわからないと悩む方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、ITエンジニアがキャリアアップするための具体的な行動と事例について解説します。
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創業助成金
創業助成金は新規事業創業者を対象とした制度で、ビジネスプランの立案や市場調査、初期投資などを支援することが目的です。創業時のリスク軽減や、事業の成長を目指すための支援が行われます。
東京都中小企業振興公社が運営する制度のため、都内での創業を予定している人、もしくはTOKYO創業ステーションの事業計画書策定支援修了者など特定の要件を満たす人が対象です。上限400万円、下限100万円で、賃借料や広告費、器具備品購入費などの支援が受けられます。
補助金・助成金・給付金の申請方法
補助金・助成金・給付金の申請方法は申請する制度によって異なりますが、基本的には以下のような流れで手続きを進めます。
- 利用したい制度を選び、満たすべき条件や支給額などを詳しく調べる
- 必要な書類を用意して提出する
- 採択結果の通知を受け、採択された場合は交付申請を行う
- 交付が決定したら、指定の期間内に申請した内容の事業に取り組む
- 必要な書類を用意し、取り組みについて中間報告を行う
- 対象の事業が終了したら実績を報告し、受給の申請を行う
- 必要に応じて、受給後も定期的に事業の状況報告を行う
補助金・助成金は特定の事業に取り組む際にかかった経費の一部を負担するという特性から、実際の受給は中間報告および終了後の事業実績の報告を行ったあとになります。
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フリーランス・個人事業主が補助金・助成金を申請するメリット・デメリット
補助金・助成金の申請には多くのメリットがある一方で、いくつかデメリットもあります。ここでは、フリーランス・個人事業主が補助金・助成金を申請するメリット・デメリットについて詳しく見ていきましょう。
申請するメリット
まず、申請するメリットを3つ紹介します。
メリット①:返済の必要がない
補助金・助成金を利用する最大のメリットは、返済の義務がないことです。新規事業の立ち上げや既存事業の拡大にかかる費用の一部を国や自治体が負担するため、経済的な負担を抑えながら取り組みを進めることができます。
経済的な負担から設備投資などを見送っている、金融機関から融資を受けたものの返済に苦労している、といったフリーランスや個人事業主の方は少なくありません。
補助金・助成金なら返済の必要がないため、返済のための資金繰りに苦労することはありません。
メリット②:事業投資の拡大
補助金・助成金を利用すると、事業投資を拡大できるのもメリットです。手元の資金が潤沢でない場合、親戚や知人からの借り入れや提供による資金調達を検討することもあるでしょう。しかし、個人からの借り入れや提供は、事業への干渉や配当などの見返りの要求といったトラブルの元となるため、注意が必要です。
一方、補助金・助成金は、国や自治体が運営する制度です。そのため、申請要件となっている事業に適切に取り組んでいれば、外部から干渉を受けることはありません。自分の采配で事業を進めながら、事業投資の拡大が目指せます。
メリット③:事業計画の再評価
補助金・助成金は経済面のメリットだけでなく、事業計画を再評価する機会が得られるというメリットもあります。これらの制度にはそれぞれ要件があり、申請時には事業の強み・弱みについて客観的に評価しながら事業計画書などを作成する必要があります。この作業には多くの労力がかかりますが、事業計画を再評価する良い機会になります。
補助金・助成金を申請することで、自分の事業とじっくり向き合うことができます。
申請するデメリット
続いて、補助金・助成金を申請する3つのデメリットについて解説します。
デメリット①:申請と審査の手間
補助金・助成金は細かな要件が決まっており、申請時には取り組みの計画を立て、必要書類を用意する必要があります。申請する制度によっては説明会への参加や、面接審査が行われることもあります。このように申請や審査に多くの手間がかかるのが、補助金・助成金を申請する代表的なデメリットです。
手間がかかるのは申請だけでなく、採択を受けた後の事務処理や、対象となる事業の中間報告や事後報告も求められます。このような作業に大きな負担を感じる人も多いでしょう。
デメリット②:採択が保証されない
冒頭で紹介した通り、助成金は条件を満たせば基本的に受給できる一方で、補助金は申請しても審査によって不採択になる可能性があります。そのため、申請する制度によっては採択が保証されるわけではない点に注意が必要です。
補助金の採択率(申請件数に対する支給件数の割合)は、制度ごとに差があります。例えばIT導入補助金の2023年後期分の採択率は7割を超えていますが(※1)、創業助成事業の採択率は1〜2割程度です(※2)。
一般的に、予算規模が大きく申請件数が少ないものほど採択率が高くなります。利用する制度を選ぶ際は、過去の採択率も確認してみましょう。
※参考1:交付決定事業者一覧及び交付申請件数2023(後期事務局)
※参考2:「創業助成事業」過去の採択情報について
デメリット③:定期的な報告と審査
補助金や助成金は支給対象の取り組みが細かく決まっているため、何に資金を使ったのか経費内訳を報告しなければなりません。多くの場合、制度の対象となる事業の実施期間中や終了後に報告が求められます。その報告内容が適切であると判断された場合にのみ、補助金・助成金を受け取ることが可能です。
「設備投資をしたのに対象事業であると認められなかった」といった事態に陥らないよう、制度ごとの要件を事前に詳しく確認しておきましょう。
補助金・助成金の申請時に気をつけたい5つのポイント
補助金・助成金を申請する際には、いくつか注意点があります。ここでは、申請時に気をつけたい5つのポイントを紹介するため、補助金・助成金の利用を検討している人は参考にしてください。
ポイント①:フリーランスも対象として該当するか調べる
はじめに、申請する制度の対象にフリーランスが含まれているかを確認することが重要です。補助金・助成金は対象者の要件が細かく定められており、自分の事業が対象外となっている可能性もあります。
前述の通り、補助金・助成金の申請には多くの作業と時間が必要です。自身が対象外であることに気づかないと、かけた時間と労力が無駄になってしまいます。
ポイント②:地元の給付金を定期的に確認しておく
国の補助金や助成金だけでなく、地元の自治体が実施している支援策も定期的に確認しておきましょう。地方自治体では、その地域の特性に応じて独自の支援制度を設けているケースもあります。
国の制度は全国の事業者が対象です。申請件数が多いと競争率が高まり、不採択となる可能性もあります。一方、申請件数がそれほど多くない地元独自の制度では、採択される可能性が上がることもあります。
自治体の補助金や助成金、給付金に関する情報を見落とさないよう、地元の商工会議所や自治体のウェブサイトなどを定期的に確認することが大切です。
ポイント③:資金の前払いと遅延リスクを考慮する
補助金や助成金は「精算払い(後払い)」となっている制度が多く、対象の事業終了後から支給されるまでに時間がかかることがあります。まずは自己資金を使って事業に取り組む必要があるため、資金繰りが厳しいと受給対象の事業を進めることができません。
また、支給の遅延リスクもあるため、補助金・助成金を当てにした無理な設備投資などを行うのは危険です。自己資金による前払いが必要なことと、遅延リスクがあることを考慮し、余裕のある資金計画を立てる必要があります。
ポイント④:助成金の条件を満たさなければならない
助成金を受給するためには、厳格な条件を満たさなければなりません。特に、労働関係の法令を遵守することが重要です。労働基準法などに基づき、雇用契約書の整備、出退勤の時間管理、適性や残業代の支払いなどが求められます。これらの法令を守れていない場合、助成金を受け取ることはできません。
小規模事業者で労働環境の整備や法令遵守が徹底できていない場合は、まず助成金の条件を満たすことが必須です。
ポイント⑤:書類は事業終了後5年間は保管する
補助金や助成金の受給に関連する書類は、対象の事業が終了した後も5年間保存しておくよう義務付けられています(※)。補助金や助成金を利用した事業者は、後日監査を受けることがあり、その監査に関連書類が求められるためです。
事業や設備投資にかかった領収書などの支払証拠書類や事業計画書、補助金・助成金を受給した際の書類などは、きちんと整理した状態で保管しておきましょう。事業終了から5年間は、破損や紛失がないよう管理する必要があります。
※参考:別表 行政文書の最低保存期間基準
フリーランス・個人事業主のための税制優遇措置と支払猶予
フリーランス・個人事業主の経済支援につながる仕組みとして、税制優遇措置や支払猶予の制度もあります。税負担の軽減や納税のタイミングを遅らせることができるため、必要に応じて活用を検討してみましょう。
以下で、税制優遇と支払い猶予に該当する制度をそれぞれ紹介します。
税制優遇
まず、節税に効果的な税制優遇措置を4つ紹介します。
iDeCo(個人型確定拠出年金)
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、掛金を自分で運用して資産形成ができる年金制度です。20歳から65歳までの人は基本的に誰でも加入でき、自ら老後資金の積立ができます。掛金は定期預金や投資信託など運用商品を選んで運用し、60歳以降になると運用益を含む積立金を年金として受け取ることが可能です。
個人事業主がiDeCoに加入すると、掛金全額が所得控除の対象となります。そのため、節税効果が高いのがメリットです。国民年金だけでは老後に受け取れる年金額が十分でない可能性があるため、節税しながら将来の年金を増やせるiDeCoの活用を検討しましょう。
ふるさと納税
ふるさと納税は、自分で選んだ自治体に寄付をすることで、寄付金の大部分を所得税・住民税から控除できる制度です。生まれ育った故郷や応援したい自治体の地方創生に貢献しながら、節税ができます。
ふるさと納税を行うと、納税した自治体からの返礼品を受け取れるのが特徴です。その地域ならではの食品や工芸品などがもらえるため、返礼品を目当てにふるさと納税をする人も少なくありません。
NISA(少額投資非課税制度)
NISA(少額投資非課税制度)は、投資による利益が非課税になる制度です。株の運用や投資信託などで得た利益には通常約20%の税金がかかりますが、NISA口座を使った投資で得た利益は非課税となります。節税しながら資産形成を図れるため、フリーランスや個人事業主にもおすすめです。
NISAには「つみたて投資枠」と「成長投資枠」があり、それぞれ投資対象商品が異なります。また、年間投資枠も異なり、つみたて投資枠は年間120万円、成長投資枠は年間240万円が上限です(※)。
上記2つの枠は併用が可能で、最大で年間360万円分の投資に関しては運用益が非課税になるため、投資をする際は積極的に活用しましょう。
※参考:NISAを知る
主要控除の紹介
フリーランスや個人事業主が利用できる主要な控除として、以下が挙げられます。
- 青色申告特別控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 生命保険控除
- 地震保険料控除
- 寄付金控除
- 医療費控除 など
特にメリットが大きいのは、青色申告特別控除です。複式簿記による帳簿付けが必要な青色申告を行うと、最大で65万円の控除が受けられます(※)。
これらの控除を活用することで大幅な節税が見込めるため、利用できる控除がないか確定申告前に確認しておくのがおすすめです。
※参考:No.2070 青色申告制度
支払い猶予制度
個人事業主はさまざまな税金を支払う必要があり、資金繰りがうまくいっていないと「税金を支払うのが困難」という事態に陥ることがあります。
ここでは、このようなときに活用できる税金の支払い猶予制度を4つ紹介するため、参考にしてください。
減免制度
減免制度は、さまざまな事情で税金の支払いが困難になった人を対象とする制度です。減免制度の要件を満たす場合、それぞれの事情に応じて支払い税額の引き下げや免除の措置が受けられます。
税金の減免を受けるには、「生活保護を受給することになった」「所得が一切なく生活が著しく困難になった」といった細かな条件を満たさなければなりません。減免制度の条件に当てはまるかどうか、事前に確認が必要です。
また、減免を受けられるのは納付期限内のものだけで、納付期限を過ぎている分は減免されないため、注意が必要です。
延納制度
延納制度は、期限までに税金の納付が難しい場合に納付期限を延長できる制度です。主に所得税を対象とする制度で、納付期限までに税額の2分の1以上を納付することで、残りの額の納付期限を延長できます(※)。延長期間は、原則として確定申告を行った年の5月31日までです。
一度に支払う税金を減額できるため、手元にまとまった資金がない場合は活用を検討してみましょう。ただし、「延納期間中は利子税がかかる」「消費税の支払いについては延納制度が利用できない」といった点には注意が必要です。
※参考:【税金の納付】
納税の猶予
納税の猶予は、税金の納付が一時的に困難であると判断された場合に支払いの猶予が受けられる制度です。猶予が受けられれば、税金を納めるための資金状況の改善に時間を費やすことが可能です。
納税の猶予が認められる条件は、「災害や盗難の被害にあった」「本人や生計を一にする親族が病気や怪我をした」「事業で著しい損害を被った」「事業を廃止・休止した」などです。これらの条件に該当する場合、最大で1年間の納税猶予が認められます(※)。
※参考:第2章 納税の猶予
換価の猶予
換価の猶予は、すでに財産を差し押さえされている場合に、一定の要件を満たすと適用される制度です。換価の猶予が認められると、以下のような措置が受けられます。
- すでに差し押さえられている財産の売却が猶予される
- 差し押さえによって事業の継続や生活の維持が困難になる財産は差し押さえの猶予や解除が認められる
換価の猶予の期間は、最大1年間です(※1)。また、「納税について誠実な意思が認められる」「納付期限から6ヶ月以内に換価の猶予申請書が提出されている(※2)」「猶予を受ける税額に相当する担保がある」といった条件を満たす必要があります。
※参考1:第3章 換価の猶予
※参考2:G-9 換価の猶予の申請手続
まとめ
国や自治体は補助金・助成金・給付金の制度を用意しており、各制度の条件を満たせばフリーランスや個人事業主も利用可能です。補助金や助成金は種類が多く、目的や条件がそれぞれ異なるため、まずは自分の事業に当てはまる制度を探してみましょう。なお、採択が保証されない点や資金は後払いである点に注意が必要です。
資金繰りには補助金や助成金で資金を得るのも効果的ですが、税制優遇措置を活用して税金による支出を抑えるのもおすすめです。また、税金の支払いが困難な事情を抱えている人は、支払い猶予制度の活用を検討してみましょう。
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