データベーススペシャリスト試験とは?試験難易度や学習方法を解説
データベーススペシャリスト試験は、国家資格である情報処理技術者試験の一種です。合格難易度が高いため、計画的に試験対策をしないと合格は難しいでしょう。
この記事では、データベーススペシャリスト試験の具体的な傾向や合格基準などの試験内容から、取得するために必要な知識や学習法について解説します。
データベーススペシャリスト試験の基礎知識
まずは、データベーススペシャリスト試験の基本となる情報について説明します。
データベーススペシャリスト試験とは
データベーススペシャリストはIT人材育成のために開催される情報処理技術者試験の一種です。
実施主体は情報セキュリティやIT人材の育成推進を行う公的機関であるIPA(独立行政法人 情報処理推進機構)となります。国家資格であり、試験に合格すると情報処理技術者としての知識やスキルが一定水準を満たしている証明になるでしょう。
データベーススペシャリスト試験では経験に基づいた幅広い知識とスキルが求められ、試験概要の理解と計画的な学習が合否を分けると言っても過言ではありません。
試験の概要
データベーススペシャリスト試験の概要については、以下の表をご覧ください。
データベーススペシャリストの試験の概要(※) | |
試験日程 | 年1回、秋期(10月) |
試験時間 | 9:30~16:30 |
受験料 | 7,500円 |
合格ライン | 各試験で100点満点中60点以上 |
合格発表 | 2ヶ月後の12月下旬にIPAのホームページで公開 |
申込み方法と受験料 | 受験の申込みはIPAのホームページにて |
試験地 | 全国に用意された試験地(IPAの公式サイトにて掲載) |
後ほど改めて触れますが、データベーススペシャリスト試験は難易度の高い試験となります。
内容としても実務的なスキルに関する問題が多く、現場経験があることが問題への理解に繋がります。そのため、実務経験で培った知識やスキルの到達度で勉強時間には大きな開きがでるでしょう。
学習時間としては、半年から1年間かけて徐々に勉強するのが一般的です。
また、すでに応用情報技術者資格を保有していると一部試験が免除されるため、学習負担が減らせます。
いずれにしても、年に1回のみの試験となりますので、キャリアパスから逆算して計画的に試験対策することをオススメします。
対象者像
IPA情報処理推進機構は、データベーススペシャリスト試験の対象者像について以下のように述べています。
高度IT人材として確立した専門分野をもち、データベースに関係する固有技術を活用し、最適な情報システム基盤の企画・要件定義・開発・運用・保守において中心的な役割を果たすとともに、固有技術の専門家として、情報システムの企画・要件定義・開発・運用・保守への技術支援を行う者
※引用:IPA情報処理推進機構/データベーススペシャリスト試験
データベースに関する高い専門性を習得し、企画・要件定義から保守・運用までできる、もしくは技術支援に携われる人材を目指す方向けの試験と言えます。
また、実務でデータベースの設計・開発に関わった経験があると、広い視野で試験問題を捉えられるでしょう。
なぜデータベーススペシャリスト試験が重要なのか
データベーススペシャリスト試験は、データベースエンジニアを今後のキャリアとして目指す人には価値の高い試験といえます。データベース管理やビッグデータ解析などを行っている方は、試験内容と業務内容の関連性が高いため、すぐに仕事に活かしやすいです。
また、データベーススペシャリスト試験は難易度が高く合格率が低いため、ITについて理解のある職場では、合格することで高い知識やスキルを保有していることをアピールできます。
データベーススペシャリスト試験の準備と勉強法
データベーススペシャリスト試験は、独学でも合格可能です。そして試験ごとに対策できれば、効率的かつ効果的に学習を進められ、体系的に学べます。
では、試験ごとの学習法について見ていきましょう。
効率的な学習プランの立て方
学習方法に続いて、試験の中でそれぞれどの勉強方法、対策をすればいいのか解説します。
午前Ⅰ試験
午前Ⅰ試験の特徴は、応用情報技術者試験や基本情報技術者試験の過去問が大半を占めます。そのため、過去問を解くことで傾向をつかみましょう。
出題構成(※)は、以下のとおりです。
- テクノロジ系17問(57%)
- マネジメント系5問(17%)
- ストラテジ系8問(26%)
新しい形式の問題が出題されにくいため、直近3〜5年の過去問を繰り返し解きましょう。
また、考察問題が増える一方で文章問題が減っているのも午前Ⅰ試験の特徴です。データベーススペシャリストに必要な基礎知識がメインであるため、対策をすれば合格できます。
※参考:ITEC/IT資格一覧
午前Ⅱ試験
午前Ⅱ試験の特徴は、データベース分野が「約70%」、それ以外の分野が「約30%」出題されることです。
とくに以下の6分野で高度な知識が問われる傾向にあります。
- コンピューター構成要素
- システム構成要素
- データベース
- セキュリティ
- システム開発技術
- ソフトウェア開発管理技術
例年過去問から出題される傾向にあります。そのため、まずは過去問を通して必要な知識を補いつつ、出題傾向をつかむことが重要です。
データベース分野の問題がメインである一方、「セキュリティ」や「システム開発技術」などそれ以外の知識も問題を解く上で必要になるため、実務経験を通して学びながら問題の理解を深めておきましょう。
午後Ⅰ試験
午後Ⅰ試験は長文や記述式の問題の比重が増えます。
午後Ⅰ・Ⅱ試験の共通点は以下の3点です。
- データベースシステムの企画・要件定義・開発に関すること
- データベースシステムの運用・保守に関すること
- データベース技術に関すること
午後Ⅰ試験は記述式で3問出題されます。
- 問1:データベース設計
- 問2:データベースの実装と性能
- 問3:SQL
時間的な余裕はありそうですが、難易度が高く時間配分に配慮していないと最後まで回答できないこともあります。
また、データベース設計やSQLに関する問題は高確率で出題されているため、試験対策は入念にしましょう。
具体的には「なぜ現場ではこのように考えるのか?」が問われます。実務経験に基づいた内容で出題されるため、データベースエンジニアとして働いていれば有利でしょう。
午後Ⅱ試験
午後Ⅱ試験は、10ページ以上の長文読解の記述式問題です。出題意図を読み解きつつ、要点をまとめて文章に起こす力が必要になります。
まずは質問文を読んで出題者の意図を理解した上で、問題文を読み進めるとスムーズに回答できるでしょう。
また、読解力があっても回答できなければ点数につながりません。相手に言葉で伝える練習や文章を書き慣れておくのも対策の一つです。過去問の解答と照らし合わせながら、どのようにすれば要点を絞った文章を書けるか考えてみると、効率的に勉強できます。
試験当日、焦って頭が真っ白になったら、これまでの努力が水の泡です。出たとこ勝負で臨んでも合格はできないため、場数をこなして試験形式や傾向に慣れましょう。
過去問題での対策方法
まずは過去問に触れて、試験の問題レベルや傾向を知りましょう。過去問はIPA公式ホームページ(※)からダウンロードできます。
難易度の高い試験だからこそ、傾向と対策を入念に準備することが重要です。たとえば、午後の試験の出題形式はパターン化されているため、過去問に触れたかどうかは点数に大きく影響します。
また、以下のメリットからも過去問に目を通すことが必須です。
- 試験範囲を把握できる
- 得意、不得意分野を視覚化できる
- 学習スケジュールが立てやすい
学習を計画的に進められれば独学でも合格できます。まずは過去問に触れて、学習スケジュールを考えてみましょう。
おすすめのテキストと参考書
難易度の高いデータベーススペシャリスト試験に合格するためには、参考書と過去問を何度も繰り返し行うことが重要です。ここでは、データベーススペシャリスト試験におすすめのテキストや参考書をご紹介します。
情報処理教科書 データベーススペシャリスト 2024年版
15年にわたって選ばれ続ける、データベーススペシャリスト試験の定番書です。過去問(午前、午後I、午後II)が22年分ダウンロードできる他、搬出問題を解くための着眼点の解説やSQLの基本構文のわかりやすい解説、長文読解の攻略法など、合格力を高められるノウハウが網羅されています。
また、学習方法や解答テクニックも解説されているため、初めて受験する方にもおすすめです。
徹底攻略 データベーススペシャリスト教科書 令和6年度
データベーススペシャリスト試験攻略のための必須知識を網羅したテキストです。これまでの試験の基本的な知識はもちろん、ビッグデータやAI、情報セキュリティ技術など最新の動向を踏まえた解説がされているのが特徴です。
知識が定着しやすいアジャイル式学習法を取り入れており、確実に知識を定着させることができます。また、AI技術で過去試験の出題傾向を独自に分析し、それをもとにした試験対策の重点ポイントも掲載しています。
2024-2025 データベーススペシャリスト 総仕上げ問題集
こちらは試験対策の総仕上げにおすすめの問題集です。自分の実力を把握できるWeb確認テスト、過去問を解説し傾向と解法の理解、本試験を想定したオリジナルの実力テストへのチャレンジという3つのステップで実力を伸ばせます。
自分の実力を知り、知識があいまいな部分や弱点をカバーすることで、合格に近づくことができます。正解だけでなく間違いの選択肢についても解説されているのもポイントです。
試験当日の対策とポイント
試験当日の準備と心構え
持ち物チェックリスト
試験時に机の上に置けるのは、以下のみです。
- 受験票①
- 受験票②
- 黒鉛筆及びシャープペンシル
- 鉛筆削り
- 消しゴム
- 定規
- 時計(時計型ウェアラブル端末は除く。アラームなど時計以外の機能は使用不可)
- ハンカチ
- ポケットティッシュ
- 目薬
上記以外にも、土足厳禁の会場では上履きが必要になるため、あらかじめ受験票をしっかりと確認しておきましょう。また、服装にも注意が必要です。会場の場所や天候によっては、暑かったり寒かったりすることもあるため、上着やひざかけなど体温調節ができるものを持っていくと良いでしょう。
試験会場での注意点
データベーススペシャリスト試験は、午前・午後にわたって行われる長丁場のテストです。集中力を途切れさせないための事前の準備や注意点を抑えておく必要があります。
特に午後は、午前からの続きかつ昼食後ということもあり、集中力が途切れがちになります。甘いもので糖分を補給する、あらかじめ昼食を買って休憩時間を確保する、昼食を食べすぎないなど、集中力が持続できるよう準備しておきましょう。
試験当日の流れ
試験当日の時間や出題形式は、下記の通りです。
区分 | 午前 Ⅰ 試験 | 午前 Ⅱ 試験 | 午後 Ⅰ 試験 | 午後 Ⅱ 試験 |
時間 | 9:30~10:20(50分) | 10:50~11:30(40分) | 12:30~14:00(90分) | 14:30~16:30(120分) |
出題形式 | 多肢選択式(四肢択一) | 多肢選択式(四肢択一) | 記述式 | 記述式 |
出題数 | 30問(全問解答) | 25問(全問解答) | 3問中2問解答 | 2問中1問解答 |
試験合格後の活用
データベーススペシャリストの役割
データベーススペシャリストは、企業の保有するビッグデータの管理・保守やデータシステムの開発を担うエンジニアのことです。
高度情報化社会になり、顧客管理やマーケティング調査が重要となった現代において、ビッグデータの管理の重要性は高まっています。
データベーススペシャリストの具体的な業務範囲については、以下の表をご覧ください。
データベースに関する高度な技術や能力が求められることから、業務範囲が広いことが伺えます。目に見えないものを扱う仕事ですが、高度情報化社会において企業の業績を左右する重要な役割を担う、いわば縁の下の力持ちです。
データベーススペシャリスト資格を取得するメリット
スキルの証明になる
資格を取得すると、データベースに関する知識やスキルの証明になります。
誰が見ても資格を保有していれば、スペシャリストであることは一目瞭然なためです。
資格試験に合格するためには、一定以上の勉強と実務経験が必要になります。特定の分野において知識に基づいた正確な判断ができ、信頼性が高いことの証明にもなるでしょう。
市場価値が高くなる
自身の市場価値を高める上でもデータベーススペシャリスト試験に合格する意義は十分あります。
経験に基づいたデータベースに関する知識やスキルがあっても、客観的に評価できる指標は少ないためです。
一方で、資格があれば自身の市場価値が高いことの裏付けになります。データベーススペシャリスト試験の合格率は「約17.6%(R4秋期)」と、決して簡単に合格できるものではありません。
また、データベースの開発に終始携わった経験があれば、データベーススペシャリストとしての市場価値がより高まるでしょう。データベースエンジニアとしてキャリアアップや転職したい場合にも有利なため、取得する価値は十分あります。
幅広い知見が身につく
データベーススペシャリスト試験に合格するためには、幅広い知識や実務経験から得られる実践的なスキルが必要です。試験勉強をするだけでも、さまざまな知見に触れ、幅広い知識を養えます。
また、データセキュリティに対する社内の意識を高める活動として、研修や教育部門にも携わりやすくなります。企業全体の安全や信頼に関わる重要な業務に、主体的に参加できるということです。
資格手当や報奨金がもらえる
資格手当や報奨金などの臨時収入を得られる可能性もあります。
企業によってはデータベーススペシャリスト資格を取得すると、資格手当の支給も期待できるでしょう。企業ごとに相場は違うため具体的な金額はありませんが、一般的に「平均約10万円/月」(※1・2)です。
これまでと同じ業務をしても、月給に10万円も上乗せになれば仕事へのモチベーションも上がります。
※参考1:Geekly Media/IT関連資格の資格手当の相場をご紹介!資格ありで転職すると給与はいくら上がる?転職エージェントが解説
※参考2:Acro Vision/データベーススペシャリストの年収についての詳細2つ|試験対策方法を解説
フリーランスとして独立できる
フリーランスエンジニアがクライアントから信頼を得るなら、データベーススペシャリスト資格が強みになります。
高度情報化社会になり、どのような業界の企業でも顧客管理やビッグデータを取り扱うようになったためです。
安全に顧客情報を管理する基盤を作れるデータベーススペシャリストは、IT業界以外でも需要が高まってきました。安全に顧客情報を管理できることが、企業の信頼につながります。
データベーススペシャリストが活躍する場は増えているため、フリーランスとして独立しても働き口に困ることはありません。
たとえば、以下の案件などがあります。
フリーランスのデータベーススペシャリストの例 | |
運用系 | データベースシステムの運用・保守・改修など |
業務アプリケーション系 | システム開発における要件定義や設計、データベース形式を決定するなど |
インフラ系 | データベースシステムの構築 |
今後も情報化社会が進むにつれて、データベーススペシャリストの需要は高まっていくでしょう。
フリーランスエンジニアの案件紹介サービスTECH STOCKには、データベースエンジニア案件が多数ございます。スキルや希望にマッチする案件をご紹介、即アサインも可能です。フリーランスになって年収アップを狙うならTECH STOCKにお任せください。
他の国家資格の一部免除にもなる
データベーススペシャリスト資格を持っていると、以下の国家資格試験などの一部が免除されます。
- 中小企業診断士の1次試験科目の一部免除
- 弁理士試験の論文式筆記試験選択科目の理工V免除
- 技術士試験の第一次試験の専門科目「情報工学部門」が免除
- ITコーディネータ試験の一部が免除される専門スキル特別認定試験を受験可能
データベーススペシャリストを土台に他の資格にも挑戦しやすくなるため、キャリアアップの先駆けとしても有効です。
ただし、免除が適用される期間は資格取得から2年間という点に注意しましょう。ダブルライセンスを狙うなら計画的な学習が必要です。
まとめ: データベーススペシャリスト試験に向けて計画的な学習を!
以上、データベーススペシャリスト資格について詳しく解説しました。
データベーススペシャリスト試験は実務経験に基づいた問題が出題され、高難易度であるとわかりました。一方で試験別(午前Ⅰ・Ⅱ、午後Ⅰ・Ⅱ)の傾向を知り、計画的に学習を進めることで、独学でも合格できます。
高度情報化社会が進み、IT業界以外でも需要の高まっているデータベースエンジニアとしてキャリアアップするなら、データベーススペシャリスト資格を取得しておいても損はありません。
この記事を参考に、データベーススペシャリスト試験に挑戦していただけると幸いです。