【保存版】業務委託契約書はフリーランスに必要?記載内容や注意点も解説
働き方の多様化が進む現代において、フリーランスとして仕事をすることを選ぶ人も増加しています。令和4年の総務省調べによると200万人以上がフリーランスを本業としているという数値が出ています(※)。
実際にフリーランスや個人事業主として働き始める際、依頼主側と「業務委託契約書」を結んで仕事をすることになるケースがあります。
本記事では、業務委託契約書に関して、フリーランスが気を付けるべきことを詳しく解説します。
フリーランスの業務委託契約書とは
業務委託契約書とは、仕事を依頼する側(会社/企業側)と仕事を請ける側(フリーランス事業者)が結ぶ契約書のことを指します。この契約書には、詳しい業務内容や報酬について、仕事をする上での条件などが記されるのが一般的です。
しかし、業務委託契約書に記載する内容というのは、法律で義務付けられているものではありません。記載内容は、契約書発行者と受託者、双方の合意があれば自由に決める事ができます。
また、業務委託契約書を作成しなくても、業務委託契約は成立します。口頭やメールなどでのやり取りだけでも契約を行うことは可能です。
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業務委託契約とは
業務委託契約とは、依頼主である企業や会社側が、業務内容の一部を外部に委託する際に結ぶ契約を指します。一般的な雇用契約(正社員契約や契約社員、パート/アルバイトなど)とは異なり、業務委託の場合は、依頼をする側の企業と、依頼を受ける側の受託者が対等な立場で契約を結びます。
業務委託契約では雇用主側に指揮命令権がないため、受託側は依頼主側からの時間的制約や、業務進行方法の縛りを受けません。
自分自身のペースややり方で業務を行い、契約で定められた成果を提供すれば、業務委託契約は成立します。依頼主側は、成果の提供を受け、受託者に対価を支払い、そこで契約関係は終了します。
フリーランスが業務委託契約書を作成すべき理由
フリーランスとして仕事をするにあたって、業務委託契約書は場合によっては、とても重要な書類となります。業務委託契約書を作成した方が良い主な理由としては、下記の3点が挙げられます。
- 依頼者側と信頼関係を構築するため
- トラブルを回避するため
- 裁判に発展した場合、証拠となるため
それぞれについて、詳しく解説します。
依頼者側と信頼関係を構築するため
理由の一つ目は、依頼者側との信頼関係を構築するのに役立つためです。
口頭やメールでのやり取りだけで契約をした場合、依頼者側と受託側で業務内容や成果物の精度に認識のズレが生じてしまうことがあります。
また、契約中に何か問題が起こった場合、文面での記載がないと責任の押し付け合いになってしまうケースも考えられます。
双方が安心して、気持ちよく仕事をするためには、細かい条件などをきちんと文面にまとめておくことが重要です。スムーズに業務が進行することで、信頼関係も深まり、長期的な契約に繋がることもあります。
トラブルを回避するため
理由の二つ目は、無用なトラブルを回避するのに役立つためです。
例えば、報酬についてや著作権、損害賠償についてはトラブルに発展しやすいため、具体的かつ細かい取り決めをしておくことが望ましいと言えます。
双方がきちんと納得する内容で契約書を結ぶことで、
- 報酬の未払い
- 契約内容以外の業務を任される
- 成果品を流用される
などのトラブルを未然に防ぐことができます。
裁判に発展した場合、証拠となるため
理由の三つ目は、裁判に発展した場合、証拠として役立つためです。
細心の注意を払って契約をしても、互いの言い分が食い違ってしまうことがあります。そうしたケースでは、稀に裁判まで発展してしまうことも考えられます。
裁判になってしまった場合、業務委託契約書を作成しておけば、それを証拠として提出することができます。
業務委託契約書は、依頼者側と受託者側が双方同意をして結んだ契約であるため、どちらに非があるのかを明らかにする一助となります。
フリーランスの契約形態
フリーランスの契約形態には、大まかに分けて下記の3種類があります。
- 請負契約
- 委任・準委任契約
- 多段階契約
それぞれについて、詳しく解説します。
請負契約
請負契約とは、受託者が依頼主に「成果物」を納め、それに対して依頼主が報酬を支払うという契約形態を指します。業務を任されて行うのではなく、成果物の納品が求められます。
請負契約を結ぶ例としては、下記のような仕事があります。
- Webライター
- デザイナー
- プログラマー
- 建築関連
- 製造業関連
- アプリ開発者
これらの仕事には、何かしらの成果物が発生します。それらの成果物を納品することで、初めて報酬を受け取ることができるのが請負契約です。
委任・準委任契約
委任・準委任契約は、依頼主が受託者に何かしらの「業務」を行ってもらうという契約形態です。受託者が依頼主に対し、業務やサービスを提供するものであり、その点が請負契約との最大の違いです。
委任契約の場合、依頼主は受託者に法律行為を委託します。例えば、売買契約や賃貸契約、遺言書の作成や訴訟提起、社団法人の設立などが該当します。
準委任契約の場合は、法律行為以外の部分を委託する契約です。例えば、PCによる入力業務、書類作成、システムの保守管理、コンサルティング業務やセミナー講師などが該当します。それ以外にも、医療行為や工事現場の警備、広告、宣伝業務などを外部に委託する場合にも準委任契約となります。
これらの契約は、成果品の納品ではなく、業務自体を行うことが目的のため、成果が出なかった場合にも報酬を受け取ることができます。
多段階契約
多段階契約とは、請負契約と業務委託契約を組み合わせた契約形態を指します。請負契約では「成果物」を納め、業務委託契約では成果物に限らず、契約書に記載された成果を提供します。
多段階契約は、主にシステム開発などの現場で取り交わされることが多い契約です。システム開発では、契約締結後に仕様変更や追加の業務が発生することが珍しくありません。そのため、外部委託をする際には柔軟な契約形態を取らなければ、トラブルに繋がりやすくなります。
多段階契約では、システム開発プロジェクトがスタートする段階で、全体的な基本契約を結び、その後、各工程において個別で準委任契約や請負契約を結ぶというやり方です。
明確な成果物が発生する業務(設計や開発)では請負契約を、それ以外の業務(企画や要件定義)では準委任契約を結びます。
工程ごとに順次個別契約を結んでいくことで、柔軟な契約形態を取ることができ、トラブル回避にもつながります。
多段階契約の詳しい手法については、独立行政法人情報処理推進機構が「情報システム・モデル取引・契約書(第二版)P12」(※)で紹介しています。
※情報システム・モデル取引・契約書(第二版)|独立行政法人情報処理推進機構
https://www.ipa.go.jp/digital/model/model20201222.html
業務委託契約の契約締結までの流れ
業務委託契約の流れは以下の通りです。
- 契約内容の取り決め・確認
- 契約書の作成
- 契約書の内容を再度確認
- 必要に応じて契約書の内容を微調整
- 業務委託契約書の製本
それぞれについて、詳しく解説します。
契約内容の取り決め・確認
はじめに、契約内容の取り決めと確認を行います。契約締結前に内容の確認と詳細な話し合いを行うことは重要です。特に注視すべきポイントは下記の通りです。
- 業務内容
- 業務範囲
- 契約期間
- 報酬
- 報酬の支払い方法、支払日
- 納期
- 経費負担
- 成果物の著作権
- 秘密保持条項
- 損害賠償
話し合いの中で疑問に思った点があれば、必ずその場で確認を行い、双方が納得した状態で契約を結ぶことが大切です。
この場面でしっかりとした意見のすり合わせが行われれば、それ以降での契約変更はほとんどなくなります。スムーズに契約まで持っていくためにも、事前に確認すべき事項を把握しておくことが重要です。
契約書の作成
契約内容が具体的に定まった時点で、契約書の作成を行います。
この際、業務委託契約書の作成は、依頼主が行っても、受託者が行っても問題ありません。事前に話し合いで、どちらが契約書を作成するかを決めておきます。
依頼主側がフォーマットを用意している場合もありますが、フォーマットの用意がない場合には、インターネット上で無料の契約フォーマットを公開しているサイトを利用すると便利です。
契約書の内容を再度確認
契約書が完成したら、再度その内容を確認します。必ず、双方で内容を確認する場を設ける事が大切です。
署名、捺印をするまでは、業務委託契約書の効力はありません。最終確認を行い、依頼主側、受託者側、どちらも納得した状態で契約を結びます。
万が一トラブルが起こり、裁判で争うことになった時など、契約書は自らを守るための重要な書類となります。また、相手方にとってもそれは同じです。不明瞭な点や疑問点など、すべてを解消した上で、契約を締結するようにします。
必要に応じて契約書の内容を微調整
必要があれば、必ず契約書の内容を調整します。たとえ微調整であったとしても、納得のいく形で契約締結をすることが大切です。
修正をする際には、双方が納得しているかを確認します。事前に取り決めた内容と齟齬はないか、自分にとって不利な修正になっていないかなど、注意深く確認するようにします。
業務委託契約書の製本
業務委託契約書が完成したら、製本作業を行います。契約書は双方が保管できるように必ず2部作成します。契約の種類や契約金額によっては、収入印紙の貼り付けが必要な場合もあります。国税庁のホームページ(※)に詳細が記載されているので、必要な場合には、確認をするようにします。
また、近年では、電子契約も主流になってきています。電子契約の場合には、収入印紙は不要です。スマホアプリから契約書を作成できるサービスなどもあるので、電子契約を活用するのもひとつの手段です。
※No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで|国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7140.htm
業務委託契約書に記載すべき項目
業務委託契約書に記載するべき項目と内容は以下の通りです。
- 業務委託内容の記載
- 業務期間・契約更新に関して
- 料金や報酬の支払い
- 知的財産権の所在
- 秘密保持義務
- 契約解除
業務委託内容の記載
まず、業務内容とその範囲を明確に定めておきます。これはお互いの仕事内容に齟齬が生じないようにするための防御策とも言えます。併せて、契約形態に関しても確認します。
業務期間・契約更新に関して
契約開始から終了までの期間を記載します。契約更新がある場合は、その期間と条件についても記載しておきます。
料金や報酬の支払い
仕事内容に対しての報酬を受け取る際の条件や納期、報酬額、支払い方法などを具体的に明記します。税金や振込手数料についても記載しておきます。
知的財産権の所在
フリーランスが納品した成果物の知的財産権が、依頼主側と受託者側のどちらに帰属するのかを確認します。特にイラストや写真などに関しては、二次利用や編集の可否なども明確にする必要があります。
秘密保持義務
仕事内容によっては、フリーランス側が企業側の内部情報を得る可能性があります。それを第三者に対して漏らさないよう義務付ける必要があります。逆の場合も同様に、企業側が受託者側の個人情報を漏らさないことを義務付ける必要もあります。
契約解除
以上の点に関して契約違反があった場合、契約解除が可能であることを記載します。また、その方法についても併せて明記をしておく必要があります。
フリーランスが業務委託契約書を結ぶ際の注意点
フリーランスが業務委託契約書を結ぶ際に注意すべきポイントは、大まかに以下の通りです。
- 契約書に必要事項は盛り込まれているか?
- 契約書の形式は?
- 経費についても明確か?
- 偽装請負の可能性はないか?
- トラブルを想定した契約書になっているか?
契約書に必要事項は盛り込まれているか?
先述した通り、契約書の内容確認は重要です。業務内容や契約期間、報酬金額、支払いの期日など、必要事項の記載に漏れがないかを必ず確認するようにします。
契約書の形式は?
契約を締結する際、その形式に注意します。契約形式には、「単発契約(都度契約)」や「基本契約と個別契約の抱き合わせ」などがあります。
単発契約の場合、都度都度契約を結び直す手間はありますが、案件ごとに契約内容や条件を変更することができるため安心です。
基本契約と個別契約の抱き合わせの場合、受注する際の基本的な契約と、業務の発注を行う個別契約を結びます。同じ作業を何度も請け負う場合には、こちらの契約形式の方が適していると言えます。
経費についても明確か?
報酬についてだけでなく、経費についても明確にしておくことが大切です。作業にかかった費用、交通費、作業に必要なツールを導入するのにかかった費用など、どちらが負担するかを契約書に明記しておきます。
また、消費税についても、税抜で考えるのか、税込で考えるのかなど、細かい擦り合わせをしておくことが重要です。
偽装請負の可能性はないか?
偽装請負とは、書類上は請負契約や準委任契約、委任契約といった「業務委託契約」としているものの、実態は「労働者派遣」となっている状態を指します。
東京労働局では偽装請負と判断されるポイントとして、依頼者が受託者に対し業務内容のこと細かな指示や勤務時間の管理を行っていることなどが挙げられるとしています。
実際に業務を受注し案件に携わるなかで、このような事例に該当するようであれば管轄の労働局の相談窓口へ連絡してみると良いでしょう。
トラブルを想定した契約書になっているか?
報酬の未払いや、著作権の侵害など、想定できるトラブルに対応できる契約書を作成します。
どのようなトラブルが起こるか想定できない場合には、事前に同業者に事例を聞いてみるなどして、対策を行うことが重要です。
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まとめ
フリーランスにとって、業務委託契約というものは非常に面倒な存在に思えてしまいます。しかしながら、ポイントを押さえておけば、時間に縛られることはありません。もっと言えば、自身のスキルを認めてもらうことによって収入がアップする可能性もあります。契約上でのトラブルを避けるためにも、しっかりと情報収集はしておきましょう。
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