イベントレポート

フリーランスが知るべきAI活用法と未来予測 |INTLOOP High Performers Meetup (2025年10月)

更新日 2025/12/04

生成AIの社会実装が進む今、フリーランスの市場価値はどう変化していくのか。AI活用のリアルと、選ばれ続けるプロフェッショナルになるためのヒントを探る。
AI活用の最前線で実績を積み重ねてきたプロフェッショナル2名が、日本のAI活用の実態を起点に、AIでは替えのきかない“人の価値”や、AI時代に求められる働き方を紹介。学びと交流が生まれたイベントの様子をレポートします。

📺トークセッション本編はこちらから
https://youtu.be/qUrs-wkjNkM

INTLOOP High Performers Meetup フリーランスが知るべきAI活用法と未来予測

こんにちは!INTLOOPハイパフォーマーズコミュニティ運営事務局です。

 1030日に開催した交流イベント「INTLOOP High Performers Meetup フリーランスが知るべきAI活用法と未来予測」のレポートをお届けします。

パネルディスカッションには、生成AIを活用した新規事業/ソリューション協創や経営コンサルティング事業を手がける針生亮汰氏と、建設業界や製造業をはじめ、多様な産業でAI活用を推進してきた吉川保夫氏が登壇。
「AIに置き換わる仕事」と「代替できない領域」の境界線、フリーランスとしての立ち位置、AI時代に評価されるスキルとは何か。現場のリアルを知るお二人が、キャリアの未来に直結するヒントを共有しました。
また、トークセッション後には交流会を実施。軽食とドリンクを楽しみながら、セッションで得た学びや気づきを登壇者や参加者同士で気軽に語り合う時間となりました。

参加された方の振り返りとしてはもちろん、今後のキャリアを考えるヒントとしてもぜひご覧ください。  

イベント概要

【実施日時】
2025年1030日(木)19:00〜21:00  

 【タイムテーブル】
19:00〜19:10 オープニング+アイスブレイク 
19:10〜19:55 トークセッション「AIで実現するフリーランスのキャリア変革」
20:00〜21:00 交流会(立食形式)  

【実施場所】
INTLOOP本社内 Cafe INTLOOP
〒107-0052
東京都港区赤坂2丁目4−6 赤坂グリーンクロス27F  

オープニング

冒頭では、INTLOOP株式会社の榎本より、INTLOOPについて簡単な紹介を行いました。
INTLOOPは2005年に創業し、コンサルタント・エンジニア・PMOといった高度専門人材によるソリューション事業と、約52,000名のフリーランスデータベースを活用した人材サービス事業の“二軸”を強みとする企業です。

INTLOOPの特徴は、プロパー社員とフリーランスを組み合わせた柔軟なチーミングに加え、プロパー社員が先行してプロジェクトに参画することで、商流の浅い案件も多く取り扱えている点にあります。
これまで累計1,000社以上と取引し、PMO・IT領域の上流案件を中心に、コンサルティングファーム、大手SIer、事業会社など幅広いクライアントへサービスを提供。エンジニア案件もアプリはサーバーサイド系、フロント系、インフラはクラウド系など多岐にわたり、上流工程・マネジメントロールの案件が多数を占めています。

また、日本最大級の案件数に加え、最短15日支払い、転職支援、福利厚生などフリーランス向けのサポートも充実。創業20年で培った信頼と実績をもとに、多様な働き方を支える体制を整えています。 

パネルディスカッション「AIで実現するフリーランスのキャリア変革」

登壇者 
針生亮汰(はりう りょうた)氏 
Lighthouse株式会社 代表取締役
 
新卒でNTTドコモに入社後、新規事業開発やマーケティング業務に携わる。  
その後NTTデータ経営研究所にて、人材サービス業、通信業、中央官庁等業界/業種問わず幅広いクライアントに対する戦略/業務/IT領域のコンサルティングや伴走支援等を経て、Lighthouse株式会社を設立。  
学生時代は、Patagonia(アウトドア衣料品メーカ)の歴代最年少スタッフ⇒木の家の工務店で環境事業部長としてBDF事業の立ち上げ/運営を経験。  
 
吉川 保夫(よしかわ やすお)氏 
AI戦略コンサルタント/リサーチャー(フリーランス)
 
富士ソフト株式会社にて長年にわたり、SIerとして組み込み領域を中心に幅広いシステム開発をリードし、PM/PdMとして多数の案件を成功に導く。  
同社初のAI研究室立ち上げに参画し、自然言語処理・機械学習プロジェクトに加え、最新AI論文の知見共有や社内DX推進を担う。  
その後、Arithmer株式会社にて自然言語処理領域のマネージャー、生成AI推進室 室長を歴任。  
経営幹部としてCOO職務を担い、AI技術とマネジメントの両面から企業成長を牽引。  
現在はフリーランスとして独立し、AIコンサルタントとして戦略支援をはじめ、リサーチやプロジェクトマネジメントを中心に活動。  
建設業界や製造業をはじめ多様な産業においてAI活用を推進し、フリーランスの立場から技術と経営をつなぐ架け橋役として高い評価を得ている。

AIの進化による日本のリアル

まず議論となったのは、日本における生成AI活用の「リアルな浸透状況」について。

針生氏は、企業におけるAI利用は大きく「レベル1:作業効率化」「レベル2:業務の自動化」「レベル3:AI起点の新規事業創出」という三段階に分けられると説明。メール文章の生成やリサーチの自動化など、レベル1の活用は広がっているものの、業務プロセス全体を変えるレベル2はまだ部分的、レベル3に至っては「ごく一部の企業のみ」という現状が共有されました。特に顧客向けのBtoC領域では慎重姿勢が強く、AI活用の多くは社内業務に閉じているといいます。

吉川氏は、DXの遅れを象徴する「平均1.67」という国内DX成熟度の数値を示し、危機感を強める企業が急増していると解説。2018年に経産省が指摘した「2025年の崖」はいまだに解消されておらず、老朽化した基幹システムや属人化した運用が企業の足かせとなっている状況は変わっていません。こうした背景から、AI活用は今や“やらざるを得ない取り組み”として多くの企業で認識されつつあると述べました。

さらに、AIが代替し始めている領域についても言及。事務作業をはじめライティング、翻訳、下流工程の開発業務など、AIに置き換えられやすい領域は急速に縮小している一方で、最終決定など対話が求められる上流領域は依然として人の価値が高いままという構造が明確になりつつあると語りました。 

AIが台頭する時代に、人間が発揮すべき価値

続いては、AI時代に人間だからこそ発揮できる価値と自身のキャリアや事業のアプローチについて。

針生氏は、AIにはできない領域として“コミュニケーション”“新しい価値の創造”“責任を取ること”の3点を挙げました。特に、プロジェクトにおいて“推進役として責任を負う”という行為はAIには担うことができず、人間の独自性が強く残る部分だといいます。また、キャリアの方向性は「AIが得意な領域に寄せていくのか」あるいは「AIが不得意な領域を伸ばすのか」の2つに分かれるという視点も共有されました。

針生氏は、自身の事業としても“AIが担えない領域に踏み込むこと”を重視していると紹介。生成AIを活用した新規事業や、まだ世の中に存在しないソリューション開発に挑むことに価値を感じていると語り、コミュニケーション・責任・創造性といった「人が担う価値」を中心に据えて事業を組み立てていると説明しました。

一方の吉川氏は、“意思決定の意味づけ”が人間の価値だと強調しました。AIは複数の選択肢を提示できても、それらを企業の背景や文化、経営者の想いと照らし合わせ「なぜこの選択肢が最適なのか」を説明することはできません。特に経営層との対話が多いコンサルティングにおいては、この“意味づけの力”が大きな差別化要素になっているといいます。

吉川氏は、自身のキャリアアプローチとして「生成AIの到来を前提に、世の中の変化を先読みして早期にアプローチを仕掛ける姿勢が重要だ」と強調しました。特に、日本企業のDX成熟度が平均1.67と依然低い水準にとどまり、多くの企業が必死に変革を進めようとしている今、“AIでは補えない領域”に人間側の強みが必ず生まれると指摘。そのニーズを見極め、意思決定や戦略といった人間ならではの価値を武器にすることが重要だと語りました。また、この考え方はどの業界でも共通して求められる姿勢だと述べました。

AIで実現するキャリア変革

最後のテーマは、生成AIの普及によって加速するフリーランス市場の変化と市場価値を高めるためのアプローチ、そしてこれから選ばれ続けるフリーランス像について。

針生氏は、2023年頃から「生成AI×コンサル」の案件が急増し、AIを活用したいが進め方がわからない企業が増えていると指摘。こうした状況では、専門スキルに加えてコミュニケーションや課題設定など“複数領域を横断できる人材”が選ばれやすいと語りました。また、新領域への挑戦については「まずはできると言って踏み出し、期待に応えながらスキルを高める姿勢が重要」とコメント。資料作成のような作業はAIに代替される一方、プロジェクトを責任もって推進できる人材の価値はますます高まると述べました。

吉川氏も、海外と同様に国内でも作業系の仕事がAIに置き換わりつつある一方で、企業の課題を定義し、戦略に落とし込む役割はAIには担えないと指摘。特に大企業のDX推進では、課題設定力や構造化力を備えたフリーランスが重宝されると語りました。自身も生成AIを“学習パートナー”として活用し、AIの特性を理解したうえで踏み込んだ提案を行うことが強みになっているといいます。さらに、「AIで作業ができます」という訴求はもはや差別化にならないと強調。むしろ、クライアントが提示する“やりたいこと”を鵜呑みにするのではなく、その裏にある本質的な課題を見極め、あるべき姿とのギャップを定義したうえでAIをどう活用するかを設計できるコンサルタントこそが求められていると述べました。問題と課題を丁寧に切り分け、経営層と同じ目線でビジョンを描きながら伴走できるフリーランスは、今後ますます価値が高まっていくと締めくくりました。

最後に榎本から、実際の案件状況について紹介しました。
現状、AI導入を進めたい企業の多くは「何から始めればよいか分からない」という段階にあり、技術よりも“伴走力”や“整理力”を求めるケースが多いとのこと。一方で、高度なRAG構築や音声対話システムの開発など専門エンジニア需要も増えており、コンサル・エンジニア双方でAI領域のニーズが高騰していると説明されました。単価も150〜180万円といった高単価案件が増加しており、フリーランス市場としても確実に広がりを見せているようです。

Q&Aコーナーでは、AI時代の働き方に直結する質問が多く寄せられました。

まず「エンジニアの下流工程はどこまでAIに代替されるのか?」という質問に対し、吉川氏は、単純なコーディングであれば技術的にはすでに自動化が可能で、1年ほどで実用レベルに達するだろうと回答しました。一方で、最終的な品質判断やチェックは人が担う必要があるとし、完全代替ではなく「AIが書き、人が確かめる」という役割分担がしばらく続くとの見解を示しました。
また、「横断的に動ける強みはブランディングが難しい」という悩みには、針生氏が“T字型スキル”の重要性を、吉川氏が“AIに下層の作業を任せて自分は上流に集中する”というスタンスを紹介。広さと深さをどう両立するかの具体的なヒントが示されました。

さらに「AI受託開発ではどんな成果が出ているのか?」という質問には、針生氏が契約書チェックの自動化など実際に本番運用されている事例を紹介。吉川氏も建設業での危険予知など、複数業界での成果を共有しました。

PMO領域でのAI活用については、成果が出る案件とPOC止まりになる案件の差は、“本番運用を見据えて設計できるPMがいるかどうか”にあると吉川氏が指摘しました。さまざまな分野でAIの成果はすでに出ているものの、経営課題を踏まえてプロジェクトの目的を整理し、本番環境を前提にデータや進め方を設計できるPMが不足していることが、成功と失敗の分岐点になっていると述べました。

短い時間ながら、現場のリアルを踏まえた実践的な回答が続き、参加者にとって学びの濃いQ&Aとなりました。

交流会

パネルディスカッション後の交流会では、セッションの熱気そのままに、軽食を囲みながら活発な会話が広がりました。
特に登壇者の周りには自然と人が集まり、AI活用の実例や、AI時代にフリーランスがどのようにキャリアを築いていくべきかといったテーマを軸に、輪になって意見交換する姿が印象的でした。 

立ち話から自然に小さなグループへと発展したり、同じ課題を抱える参加者同士が初対面とは思えないほど真剣に意見を交わしたりと、学びの場が生まれていました。
また、今回も友人紹介をしてくださった方には、INTLOOPオリジナルカクテルをご用意しました。 

リラックスした空気の中で、それぞれが新しい視点やヒントを持ち帰っているように見え、短い時間ながらも実りの多い交流になっていました。

ケータリングメニュ

今回のイベントでは、Cafe INTLOOPが3種類のメニューを提供しました。
・ミニサンド2種
・トルティージャピンチョス
・タッカンジョン

***** 

今回のイベントでは、AI活用の最前線で活躍するお二人を迎え、AI活用の現状から、人が担うべき役割、そしてフリーランス市場で求められるスキルまでを多角的に学ぶ貴重な機会となりました。
AIが業務をどう変え、どの領域に人の判断や推進が必要とされるのかといった視点に加え、今後の市場変化に応じたキャリアの築き方が示されました。
実務とキャリア戦略の双方で役立つ視座が共有され、フリーランスとして自身の働き方や強みの磨きどころを見直すヒントが得られるイベントとなりました。
パネルディスカッションの後にはQ&Aや交流の時間も設けられ、登壇者との対話はもちろん、参加者同士がそれぞれの状況や悩みを共有しながら、新しいつながりや視点が生まれていく様子が印象的でした。

こうした相互の学びと交流が、今後のキャリアやプロジェクトで新たな一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。
引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。  

INTLOOP High Performers Meetupは、フリーランスの皆さまが気軽に参加できる交流イベントを定期的に開催しています。
トークセッションやパネルディスカッションといった学びのあるコンテンツに加え、交流会として横のつながりも築ける、学習と交流の両方を兼ね備えたイベントです。

🔶次回のイベントご案内🔶

フリーランスとして活躍している方/これから活躍を目指す方に向けたイベントを、12月11日(木)に開催!
今回のテーマは「現場で価値を発揮し、選ばれ続けるフリーランスになるには?」。
システムコンサルティング会社を設立し、全社規模のIT改革を推進する戦略的PMO・森本優氏のトークセッションを通じて、“継続的に指名されるフリーランス” が現場でどのように立ち回り、信頼を積み重ねているのかを実践的に学べます。
トークセッションを聞きながら、参加者同士で交流できる貴重な機会です。

 

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📺トークセッション本編はこちらから
https://youtu.be/OTu8AuBjmno

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📺トークセッション本編はこちらから 
https://youtu.be/5xTJenj_kmI